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一色  作者: 相原ミヤ
異国と火の国
135/785

色図と流の国の色読(4)

 アンナは色の中にいた。音は何も無く、ただ色だけが世界を巡っていた。右に赤が、左に青が、上に黄が、様々な色が虹を作りアンナの周りを舞っていた。


――アンナ。

呼ばれてアンナは振り返った。すると、そこにはグレイス女王が立っていた。何度も見たブロンズ像と姿が同じだからだ。

「グレイス女王?」

アンナは驚いた。色の世界で佇むグレイス女王は、何とも表現しがたい空気を纏っていた。

――私はずっとあなたを見ていたわ。あなたが生まれてからずっと……。あなたの優れた力は本物よ。生まれ持っての力は、無色が選んでも問題ないほどの力。

アンナは分からなかった。何が無色なのか。無色とは何なのか。

「無色って何なのですか?グレイス女王は無色の色神なのでしょう?」

するとグレイス女王は微笑んだ。

――私はグレイスを選んだわ。あの子の才能に惹かれ、そしてひたむきに国を思う姿を見て、力を貸すことを決めたの。

アンナは不思議な感覚を覚えた。そこにグレイス女王はいるのに、グレイス女王はいない。そのような感覚。グレイス女王には色が無いのだ。これほどまでに色に満ちた世界で、色を持っていない。そんなこと、あり得ない。

「グレイス女王、あなたは一体?」

アンナは分からなかった。六百年前に自ら命を絶ったグレイス女王が生きているはずがない。ならば、アンナの目の前にいる人物は一体誰なのか。想像も出来ない。

――流の国で最も優れた術士はあなたね。アンナ。本来なら、人が私の姿を見ることは出来ないのだけれども、グレイスが残した色図が媒体となり、アンナの才能が力となることで私の姿を引き出したのね。

グレイス女王はゆっくりと足を進め、アンナの頬に触れた。しかし、指がアンナの頬に触れる事は無い。グレイス女王の身体も、彼女が着ているローブも、彼女が持っている杖も、何も実在していないのだ。

――アンナには教えましょう。どうせ、色たちには知られてしまったことなのだから。私は今、火の国にいるわ。六百年前にグレイスを選んだように、私は火の国の子を選んだわ。そして、六百年前にグレイスのために力を貸したように、私は火の国の民に力を貸したわ。これから世界は乱れるでしょう。真っ先に黒が、そして白が行動を始めたから。アンナは見ていたのでしょう?

アンナは見ていた。色図の乱れを、乱れは火の国を中心に広がっている。色が共鳴し、反発し、警戒しあっている。グレイス女王に力を貸したと話す者。今でこそ、グレイス女王の姿をしているのに、本質は異なる。

「あなた、無色ね。グレイス女王は無色の色神だった。なら、あなたは無色。今、火の国が無色を持っている」

アンナはグレイス女王の姿をした無色の言葉考えた。火の国に無色がいるということ。それが火の国を中心とした色の乱れにつながっている。

――流の国は外交に優れた国よ。だからこそ、流の国の力が必要なの。そして、流の国で最も優れたあなたの力がね。無色を手にした色は、色の世界の覇権を握る。すべての色は己の色が最も美しく優れた色だと証明したくて、無色を求めるの。私は、自らが選んだ者を救うために、六百年前のように姿を見せたわ。だから、流の国の力が必要なの。

グレイス女王の姿をした無色がゆっくりと続けた。

――助けてちょうだい。アンナ。私が選んだ者を助けてちょうだい。

本当に、助けを求めているのだとアンナは思った。

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