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一色  作者: 相原ミヤ
異国と火の国
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色図と流の国の色読(3)

 グレイス女王には謎が多い。なぜ、色図を作り出せたのか。なぜ、強大な力を持っていたのか。なぜ、グレイス女王への面会を異国の色神が求めたのか……。六百年前に流の国を救った一人の女性の生涯は、疑問に包まれている。

 グレイス女王は、自ら命を絶って死んだ。最期の言葉は色図に刻まれている。


――全ての色は等しく美しきもの。

 全ての色は等しく尊きもの。

 全ての色は等しく儚きもの。

 私は何にも染まらず、己の足で立ち続ける。

 契約通り、逃げ切れぬ今、私は己の命を絶つ。

 流の国は、全ての色を等しく尊ぶ。

 流の国は全ての色が等しく輝くように色図を持つ。

 色を巡る争いが起きぬように……。


グレイス女王は何かを知っていた。六百年前、色図を作り流の国を救ったグレイス女王は何を思っていたのだろうか。なぜ、命を絶ったのだろうか。グレイス女王は「無色」の色神だった。グレイス女王の力と死の秘密は、彼女が無色の色神であったことに関係しているのかもしれない。

「全ての色は等しく美しい。ねえ、メディラ様。グレイス女王は何か逃げていたのかしら?」

アンナは色図を覗き込み、メディラに尋ねた。メディラは色図を覗き、そして笑った。

「アンナ。何せグレイス女王が生きたのは六百年前。今とは時代が違うわ。けれども、変わらないこともあるはずよ。グレイス女王は色を尊んでいた。全ての色が等しく美しいと。流の国の基本理念はグレイス女王が残してくれたものよ。色は等しく美しいとね。……アンナ、よくお聞きなさい」

メディラはゆっくりと続けた。

「アンナが色の変化を色図から読みとった。今、世界で何かが起こっているのは事実よ。火の国がその中心ね」

メディラが色図を指差すと、色が舞うように輝き、火の国を中心に広がった。アンナは心臓を掴まれたような気持ちだった。

「アンナ、色図を見ていなさい。私は報告に向かうわ。忘れてはいけないわ。あなたは流の国で最も優れた術士よ。私たち中央政府の人間はね、皆、思っていたの。アンナがグレイス女王のように未来を導くのだと。まるで、グレイス女王の生き写しだと……」

メディラはそっとアンナの頬に触れた。

「あなたは、私たちの上に立つ存在。今までは、あなたが幼いから何も言わなかったのよ。色読を育てるのと同じように、あなたに関わっていた。さあ、色図を御覧なさい。アンナには見えるはずよ」

メディラに背を押され、アンナは色図を覗き込んだ。色が舞い上がりアンナを包んだ。色の世界にアンナは引き込まれ、メディラの気配は遠のいた。ここにはアンナと色しかいない。そのように見えた。


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