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一色  作者: 相原ミヤ
火の国と紅の石
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赤と黒の攻防(9)

 赤と黒の攻防は続く。その中で悠真は力を望んだ。今の悠真は黒よりも赤を応援していた。赤に勝って欲しいと願っていた。それは悠真が火の国の民だから。そして、色神紅に心を惹かれているから。赤が黒に勝利し、火の国の平和が続くことを願った。赤が消えてしまわないように、赤が強く輝くように願った。


――一つの色に心を惹かれては駄目よ。何色にも染まらないこと。それが、悠真の義務なのだから。


無色な声が悠真に語りかけた。


――今、ここで力を望めば、あなたを窮地に追い込むのよ。


無色な声が悠真に言った。

「何が俺を追い込むって言うんだ?なんで、赤を願ったら駄目なんだよ」

無色な声に悠真は問い返した。


――何度も言っているでしょ。赤は悪い色ではないわ。でも、あなたが赤を選ぶと、色の情勢が大きく動くのよ。それを良しと思わない色も多い。だから、私は何色も選ばない。あなたも、何色も選んではならないの。だから力を望んでは駄目よ。私はあなたを守り切れないかもしれない。色が悠真を狙うのよ。


悠真は思った。今こそ窮地なのだ。今、ここで赤の仲間が敗れれば、悠真の生きる火の国は滅びてしまう。新たな紅が立っても、今の紅が命を落としては意味が無い。紅を護る赤の仲間が欠けては意味がない。誰も命を落としてはならない。


「今が窮地なんだ。今、以上の窮地は無いんだ」


悠真は無色な声に言った。あの時、紅と初めて対峙したときから、悠真の心は色神紅に奪われていたのだ。紅の強さに、紅の美しさに、紅の色に、紅の人柄に、悠真は心を奪われていたのだ。だから悠真は、故郷を滅ぼされてた悲しさを乗り越えることが出来たのだ。紅と赤の仲間がいなければ、今の悠真は存在しない。彼らの存在が悠真を大人にしたのだ。


――容易い判断はおよしなさい。私は、悠真の正体が知られてしまうわ。赤はともかく、他の色がどのような行動に出るのか、私には分からない。色同士の戦争は、国を動かすわ。それこそ、多くの国が火の国に攻め入るのよ。それこそ、火の国の滅亡よ。私はいいわ。違う国の者に自らの色を託せば良いだけだから。でも、あなたは違うわ。この火の国と命を落とすことになるのよ。


悠真には、無色な声が何を言いたいのか分からなかった。ただ、頑なに無色な声が色を拒むのは、悠真を狙って色が、国が来るから。


「俺を見捨てればいい。だから今、力を貸してくれ」

悠真は言った。悠真が今生きているのは、紅がいるからだ。赤の仲間がいるからだ。彼らがいなければ、悠真の世界は滅びてしまう。


――あの紅に、何の力があると言うの?ただ、赤の色を司っているだけ。普通の子よ。私には分からないわ。

「知らないから。紅の素晴らしさを知らないから、そんなこと言えるんだ。もちろん、俺だって知らない。だって、会ったばっかりだもん。でも、俺は願うんだ。もっと紅のことを知りたい。紅と一緒にいたい。赤の仲間の一員になりたい。そのために、俺は今を戦う。今、力を願う。ここで、赤の仲間と一緒に生きるんだ」

悠真は無色の声に強く言った。

「力を貸してくれ」

揺ぎ無い願いがここにあった。

 悠真の願いに折れたのか、無色な声は短く言った。


――赤、力を貸してちょうだい。


無職な声が言うと、悠真の横に赤が立っていた。赤い髪も、赤い瞳も、赤い唇も、鮮烈な赤を放っている。


――今更、何を言う。主はわらわを願いを邪険にし、義藤を見殺しにしようとした。なぜ、今更わらわが、主の願いを聞かねばならぬのじゃ?


赤が強く煌く。無色な声の主はいない。しかし、赤は悠真の後方を見ていた。


――あなただって、私の力が必要なはずよ。あなたは何も変わっていない。あなたは、自らの色の繁栄よりも、愛する人の命を願う。あなたは、自らの誇りよりも、愛する人の命を願う。私に利用されても、愛する人のために誇りなんて容易く捨ててしまう。赤、あなたに選択肢はないのよ。私があなたの力を借りるんじゃないの。あなたが私の力を借りるの。あなたの愛しい紅を守るには、あなたの愛しい赤の仲間を守るには私に力を借りるしかない。私の力を願うしかない。そうでしょ。


赤の表情が強張った。赤の強い目がかげり、口惜しそうに目を細めた。



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