3.「見つめるだけで胸が痛い」か、相手は頭が痛いだろうよ
「あぁぁ可愛い……見つめるだけで胸が痛いよ。恋ってつらいね」
「へぇ、そうなん」
今日も今日とてB子をじっとり見つめている気色悪い友・Aがこれまた気持ち悪いことを言っていた。
真面目に相手するのが面倒になってきた俺はスマホ画面から目を離さず適当に返した。
無視したらしたでうるさいのだ、こいつは。
「でもこんなに人を好きになれるって素晴らしいことだと思うんだ!」
「ほーん、よかったな」
恋に浮かれたAの声は教室に響き渡る。自動的にAと想い人であるB子へ注目があつまる。
最初のうちは、情熱的なAの愛の告白に悪のりした奴らが囃し立てていたけど、今ではもうそんなことはない。
何故かってこいつのB子への執着心はやばい。
Aの発言をからかったことでB子が泣きそうになれば、Aはからかった奴らを呼び出して絞める。女子相手ならどこかで引っ張ってきたツテを使って言葉で脅す。
B子を守るためなんだろうけど、もとはといえばこいつの発言のせいなんだけどなぁ……
今では触らぬ神に祟り無しって感じでAは避けられている。そして自動的にB子に近づく男子はいなくなった。
彼氏彼女に憧れるであろう時期に異性に避けられるなんて可哀相だ。
早くAと付き合ってやれよと無言の圧力に似たものを周りから向けられてB子は頭が痛いだろうよ。彼女にも選ぶ権利があると言うのに。
「お前も早く好きな子作れよ! あっ稲沢さんはダメだぞ!」
突然なにを言うのか……何か俺まで頭痛くなってきた。
「作ろうと思って作るもんじゃないだろ。しばらくはそういうのいいわ」
「なんでだよぉ」
お前見てたら恐ろしくなるからに決まってるだろ。
恋は盲目って言うけど、こいつの場合ベクトルが違うよな。
俺も好きな子ができたらこうなると考えると、マジで怖い。




