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雨家族。〜Rain Family〜  作者: I嬢
The First of spring【前章】
2/4

── 雨と仮初の朝 ──

= unknown レポート  =

= 雨という概念について =


前提。


雨はただの自然現象ではない。


世界がまだ神話で覆われていた時代だろうか。


大抵は雨は神(仮)が司る物とされ、人間は雨に意味を与えた。


そして、その意味を祈りに変えた。


「どうか降ってほしい。」


そう願うたび、目に見えぬ何かへと想いが積み重なっていった。


そうして生まれたのが、私である。


世界には様々な雨の神(仮)が居るが、私はその中の一人に過ぎない。


神(仮)とは元々、信仰の結晶だ。


誰かが願い、恐れ、畏れ敬うことで形を得る。


だからこそ、神々(仮)の力は一定ではない。


信仰されればされるほど強くなり、忘れ去られれば、ただの風のように消えていく。


だが、その中にあって.....私を筆頭とする「雨の神(仮)」だけは特別だった。


なぜなら、雨という概念は私が見て来た何処の世界にも殆どある。


雨は国境を越え、宗教を越え、時代を越えて存在する。


つまり......雨という現象そのものが、世界共通の祈りの象徴だったりするのだ。


雨が降るたびに、世界中のどこかで、「神よ、どうか止ませてくれ」と祈る者がいる。


また別の場所では、「どうか雨を与えてくれ」と手を合わせる者がいる。


この力が、他の神々(仮)と決定的に違うのはそこだ。


雨の神(仮)は、世界のあらゆる場所でほぼ同時に矛盾に満ちたまま祈られている。


しかもそれは、個人の信仰や宗派を越えた信仰だ。


つまり、意識されずとも崇められている。


だからこそ、私は無限に近い信仰量を持つ。


太陽神(仮)が国によって違う名前を持ち、戦神(仮)が時代によって姿を変えるように、雨の神(仮)もまた世界中に無数にいる。


私の力は今も増え続けている。


何故なら、今も世界のどこかで誰かが「雨」を願っているから。


雨。


それは、空が地上に語りかける、最も優しくて、最も残酷な言葉だ。

▷▶︎▷20XX年 雨戸宅 7:55

   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

   世界線記号 09-03²⁺

   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄◀◁◀


目覚ましが、鳴っていなかった。


いや、正確には鳴っていたのかもしれない。


薄い灰色の朝である今、カーテンの隙間から差し込む光はなく、代わりに窓ガラスを叩く雨粒の音は小さくとも気持ち悪いくらいに規則正しい。


「......ちっ、なんでよりによって今日に限って寝坊なんだよ........」


雨守葵は、布団の中でそんなことを呟きながら、重いまぶたを強引に開けた。


時計の針は午前7時55分を指している。


入学式の開始は9時であり、指定された新入生登校時間(8時30分)までに残された時間はわずか。


窓の外を眺めれば、空は鉛のように厚く、高層雲は乱層雲と共に塊になって早すぎた時間の流れから逆らうようにゆっくりと流れ、濡れた空気が窓辺の植物の葉先を震わせ、路面はすでに光を反射している。


「まーた降ってんのかよ......」


誰か向ける為に呟いてはいないその声は、外の衣撫にすぐに吞み込まれる。



             半透明な孤独。



それでも、彼にとっては呆れる程に平和な日常のリズムなのだから。


クローゼットを強く開いては、ハンガーに乱雑にかかった真っ白なシャツを引っ張り出して袖を通す。


鏡に映った自分の寝癖を見て、ため息を一つ。


眉はやや下がり気味で、目つきに針のような鋭さが差してはいるが、これが"素の顔"だ。


全く、時間に余裕はないのに鏡の向こうの自分を半ばからかってしまう。


「母さーん、アイロンどこー?」


彼は部屋の扉を開けて外に出ると相当急いでいるのか、部屋の扉を閉めずに廊下で声を投げる。


サイズは申し分ないのだが、シャツをハンガーに乱雑にかけたせいですっかりシャツは乱れていたから少しでも整えたいという気持ちから母にアイロンの場所を尋ねる。


リビングから返ってきたのは低く落ち着いた女性の声だった。


「テレビ台の横にあるケースの中。でも時間ないわよね?そんな事より早く朝御飯食べなさい。」


(.......言われてみればそうだな......諦めるか......)


現れたのは雨守家の母、衣撫いぶ


東京の街中にある花屋の店員であり、葵の母だ。


彼女の目は冷静で、言葉は少なくとも確かな温度を持っていた。


絶対零度でも、絶対高温でもないくらいに丁度いい。


「聞いたけどさ、俺が忘れていた訳で......」


「それを人は"聞いてない"と言うの。」


「......っす。」


そのやり取りは柔らかい刃物のようと一球のボールの様に交わされる。周囲からはよく「オカン系男子」と呼ばれる葵だが、実の母だけには弱く、逆らえないのだ。反抗期や思春期の真っ只中でも、父親に反抗した事はあるが、母親には反抗した事があまり記憶に残っていないくらいに。


"母親として"の一言は怒鳴りつけるでもなく、ただ事実を指摘するだけだ。


「父さんは?」


そう聞いてから葵は食卓の上に置いてある、半透明のラップがかかった御結びを片手に持ち、もう片方の手でラップを器用に開いては中にある"表面上は白飯の御結び"に彼は齧り付く。


中身は葵が好きな牛肉しぐれ煮入りだ。


(こんな時でもメシは美味い.....)


「あの人?もう出たわ。早朝ニュースの解説。」


父、松二しょうには気象を職業にする父親であり、空も空気も読むことが得意な父親でもある。


衣撫だけが部屋を満たし、静けさはこの家の"優しさそのもの"だと葵は思う。


派手な朝食もないし、笑い声が飛び交うことも少ない。


あるのは、傘立てに差された濡れた傘と、テーブルの上に置かれた母の手作りの御結びと味噌汁に前菜のサラダ。


橋は箸置きの上に置いてあり、椅子の目の前に置いてはあるが、葵にはとにかく時間がなく、まともな朝食を取る時間など寝坊した時からないのだ。


それから食卓の上に置いてある見慣れたゴシック体に近い文字で書かれた短いメモ。



       『 今日はずっと雨が降る。傘を忘れるな。 』



「はーいはいっと。どーせ......外見りゃ分かるっての。」


葵はそのメモに書かれた文字を嘲笑うように小さく笑い、水筒と昔から使い続けた青の弁当を学校指定の鞄に投げ込む。


小学生の頃になった時、給食が始まってから殆ど使わなくなったお弁当箱ともう既におさらばした為、昔に使っていたお弁当箱よりも一回りか二回りくらいに大きいお弁当箱を先日買ったのだ。


外は冷たく、空気は重いが、なぜか母の匂いは温かく骨の奥に残るようだった。


廊下を歩くと、妹・桜良おうらの部屋の前を通った。


少しだけ開いた扉の隙間からは真っ暗な部屋であるはずなのに、小さなライトの明かりが漏れている。


パソコンかスマホでも見ているのだろうか。


そこに差す光は鉛色の朝と対比して、まるで桜良だけの別世界の入口のようだ。


でも、誰かが言葉を投げかけることはない。


それが、雨守家の暗黙のルールの一つだ。


「......行ってきます。」


「ちょっと。朝御飯食べないの?」


「さっき御結び食った。」


葵は外へと歩を進め、新品のローファーを履いてはどうしても踵を踏んでしまう。


初めて履く為、どうしても慣れていないのだろう。


そんな些細な事に葵は少しだけ憤りを感じた。


こっちは余裕が無いのに。


玄関のドアを開けると、冷たい空気が一気に葵の肺胞を隅々まで満たした。


雨の匂いはいつもより濃く、土とアスファルト、それから遠くで水を被った葉の青い匂いが混ざり、雫が傘の端を伝い、屋根から落ちる水柱が床に直撃する。


「雨ん中の入学式とか、本当マジで俺んちのせいじゃねえよな......」


 ー ー ー ー ー ☂


一方その頃、リビングでは衣撫が鏡の前で花柄のスカーフをそっと整える。


(うん、良い感じ。)


彼女の指先は花屋で鍛えられた優しさを覚えており、動きは無駄がない。


衣撫はふと階段の方を見上げた。


階段の上の二階には一つ、閉ざされた扉.....通称・開かずの扉(命名・葵)がある。


「桜良。......そろそろ、出るわね。」


一階から階段を挟んで二階を見上げてから衣撫は声を出すが、返事はない。


......ただの屍では無い事を信じたい。


暫くの静寂の後、扉の奥からかすかな軋み音が聞こえ、そして小さな声が薄く返ってきた。


「......いい。どうせ、濡れるし。」


その一言には距離を置く為の理由がぎゅっと詰まっている。


もう一度説明しよう。


この家族は無理に扉を開けたりはしないし、押し付けることはしない。


雨守家のやり方は、静かに待つことだ。


それは例え第三者に「無責任」と言われたって気にしない。


そもそも当事者ではない者にそのような事を言われる資格などないから。


「昔は、あんなに外が好きだったのにね。絵を描くときなんて、いつも庭に出て......いつから描かなくなったんだっけ。」


衣撫の声はどうしても少しだけ震えが混じる。


「ねぇ、松二さん。私たちが"そう"だから、あの子まで......」


衣撫はふと一人で声量を抑えてからこの場に居ない松二を思って呟くが、途中で言葉は急に強くなった外の雨音にかき消された。


そして......



     「 それ以上は言うな。 」



きっと松二はそう言う。


だからこそ、衣撫は言い直す事はせず、誰にも聞かれる事が無いままその言葉の続きが発せられることはなくなってしまった。



 ー ー 視点O ー ー ☂

 

咄嗟に零れた言葉の雫。


「また、描けるかな。」


自分でも驚くくらい小さな声だった。


窓の外では、相変わらず雨が降っている。


私はベッドの上で膝を抱えながら、それをぼんやり眺めていた。


メッセージアプリは、通知が999⁺でカンストしたままであり、もう何日も確認していない。


私の為に作ってくれた家族用のショートメッセージアプリでメッセージを確認する事しか私宛のメールはもう読んでいない。



              雨女。



あの言葉を聞いた日のことを、私はまだ忘れられない。


笑いながら、軽く言われたはずなのに。


ずっと、ずっと空気になりたいと思って振舞っていたのに、雨女というたった二文字の漢字のせいで私はもう空気になれなくなってしまった。絵も描きたくなくなった。


将棋で歩兵が"と金"に成ったら二度と元に戻らないように、一度起きた事象を覆すには難しく、出来るとしても忘れられることを祈るしかない。


つまり、時間が必要だ。


でも、全て時間で解決することは出来ない。


......だから、私は描くのをやめた。


それでも、雨だけは止んでくれなかった。


 ー ー ー ー ー ☂


葵は黒い自転車を一台取り出しては嫌々ながらもヘルメットをつけてからサドルに体重を預け、ペダルを踏み込むと、前輪がはじく水溜まりで制服の裾に跳ねた雨水が黒い斑点を作る。


「チッ、朝からこれかよ......」


坂を滑るように下りながら、雨月は空を見上げる。


雲の裾が街灯を吸い込み、空は鉛筆で磨いたように鈍い。


だがその重さの中には、薄い硝子細工のような透明な裂け目がある。


そこから差す日矢は弱いけれど確かに存在し、濡れた路面の上に細い光の線を走らせていた。


「ほんっっと、どいつもこいつも雨ばっか降らせやがって......。」


怒りを運動エネルギーに変えてペダルに力を込めてペダルを漕いでいると近くの自転車に乗る人物がレインコートを着ている事に葵は気づいた。


「レインコート?あんなもん着たら負けだっつの。第一、今日くらい晴れてもよくねぇか?高校の入学式だぞ。」


レインコートを"着る"ことは、彼にとっての敗北宣言のように感じられるのだ。


都市という名のの灰色のパレットに差される日矢は、ほんの一瞬、都市の輪郭を際立たせる。


葵の胸にも同じような光が差す。


期待でも、気まぐれでもなく、ただ目の端で瞬く希望だ。


「......お。ちょっとマシになってきた?」


頬に当たる雨粒がいくつか減る。


彼の唇の端が無意識に上がり、短い笑いが漏れた。


「へっ、やっぱ俺の時代が来てんじゃね?」


自転車のスピードを少し上げると、冷たさの中に冬の名残の湿りを感じながら通り抜けた。


だが、空はそんな若者の挑発を嗤うかのように、遠くで鈍い雷の音を響かせると同時に更に雨が強くなった。


「......あーもう!!雨は強くなるし、更には雷も参戦(?)してくるのかよ!俺が雨止むフラグ建てて回収しちまったみてぇになってんじゃねぇかよ!!」


悲痛過ぎた叫びは空に吸い込まれ、すぐに返ってくるのは雨の強まりだけだった。


怒りと滑稽が混じったその声には、彼の家系に対する半ば愛情にも似た諦観が滲む。


そして、彼は皮肉気味に笑った。


「......ったく。もう慣れたけどな。」


雨が人生の前提なら、それを嘆くよりも受け止めた方が最早楽だと、どこかで学んでしまったのだろう。


痛みがいつか得も言われぬ快楽ドーパミンに変わるように。


葵が腕時計をチラリと見る癖は、いつの間にか身についていた。


左手首をくいっと返し、文字盤の青い針を確認する。


デジタルの数字は8時20分を示している。


指定された登校時刻まではもう少し時間がある。


とはいえ、余裕があるわけじゃない。


東京の朝は通勤ラッシュで込みやすく、ちょっとした寄り道が命取りになるのだ。


かといって電車を使うなど満員電車確定演出が見えている。


そう考えると意外と自転車は考え方によれば一番効率的な物なのかもしれない。


どちらにせよ、"事故らなければ"が前提の話だが。


サドルに体重を預け、ペダルを踏み込む。


濡れたアスファルトの水溜まりに映るビル街のネオンは、まだ寝惚けたままだ。


路肩をすり抜けると、小学生の集団とすれ違った。


黄色い帽子に、背負ったランドセル特有の四角い輪郭、彼らの足取りは軽く、雨の中でも楽しげに笑っている。


(新一年生か?)


しかし、余所見運転は危ないと考えた葵は真っ直ぐ向くが、一人の小学生の気づきから小学生達からの視線が彼の方へ向く。


「おい、見ろよ、自転車の先輩だぜ!」


「なにあの髪、ぴょんってしてる!」


葵の耳には、そのはしゃぎ声が遠く届く。


笑い声が刺さるところもあるが、彼の反応は早い。肩をすくめ、少しだけ舌を出して見せる。


(ちっくしょう......!これだから遅刻は.....!)


現在、8時20分。


リミットまで残り10分と追い詰められてきた中、学校まで残り数百メートルとなった今、珍しく人が居ない青信号の横断歩道の白線の上で自転車を下りてから早歩きで渡っていた。


時間はゆっくり流れているようだが、実際の所、容赦なんて物はない。


それは、雨にも言える事だ。


勿論、数秒先に起きる運命すらも。


ドオオオオンッッ!!


轟音が東京の一角の路地を裂く。


車両用信号の赤信号を突っ切って、トラックが一台、信じられない速度で突っ込んでくる。


トラックのライトが雨粒と前方に居る葵と自転車を白く照らした。


横断歩道のもう一つの青信号がある反対側はまだ遠い。


走っても自転車を持ちながらではそう簡単に間に合わない。


「......はっ!?」


一瞬、葵の脳は予想外の出来事に停止しかけたが、反射的に全身が勝手に動く。


脳からの命令ではなく、脊髄からの命令が運動神経に伝わって来た。


彼は急いで自転車に乗る。


ここは横断歩道で立ち乗りだが、そんな事を気にしている暇はない。


誰も渡っていない事だけが救いだ。


葵は右足を叩き込み、ギアを二段落し、チェーンが壊れる事を覚悟した上で回転数ケイデンスを極限まで上げて横断歩道を渡るという強硬手段に出た。


心臓が爆発しそうなほど跳ねる。


(間に合え....!)


後輪が地面を滑り、そのすぐ横を、トラックが風圧を残して通過した。


コンマ数秒でも遅れていたら、間違いなく、身体ごと弾き飛ばされていた。


「......っ、危ねぇ......!」


肺が焼けるように痛く、心臓がまだ、ドラムみたいに鳴ってる。


それでも彼は止まらない。


止まったら、遅刻するからだ。


そして、葵は正直言って信号無視のトラックを今すぐ110番通報したいが、遅刻してしまうので目撃した他の人達に任せる事にした。


「異世界転生は......まだ御免だっつの。」


そして、再びペダルを踏み込んだ。


東京の朝は多層的であり、通勤のスーツを着た社会人たちが、傘をたたんだり広げたりしながらスマートフォンを睨む。


コンビニの前では朝の弁当を袋に入れる店員。


小さな路地からは香辛料の香り、パン屋の窯の匂い。


雨に濡れた自販機の光が、犬の散歩をする老婦人の傘に反射している。


学校まではあと少しだが、ここで安全運転を怠ったら元も子もない。


「8時25分......あと5分じゃねぇか......」


余裕......は、ない。


息をつく暇もなく、胸の奥で小さな鼓動が高鳴る。


自転車を止め、泥にまみれたペダルを蹴り上げる。


タイヤはぬかるみを切り裂き、弾ける水しぶきが視界に入り込む。


足元の靴は水でぐしょぐしょになっている。


靴下の中まで染みてくる冷たさに葵は唇を噛みしめる。


けれど、葵はそんなことには構わず、視線をまっすぐ前に向けた。


「本当に......間に合うか、これ。」


胸の奥では確かに焦りが震えていた。


だが、ようやく前方に高校の校舎が見えた。


門柱に張られた校名の文字が濡れた光に反射して、銀色に輝いている。


雨粒が視界に入り込み、校庭の桜の枝に残った滴が小さなプリズムを作る。


校門までの距離は、あと少し。


ペダルを全力で踏み込み、体重をサドルに預ける。


ここまで全力疾走してきた葵の体には、すでに軽い疲労が溜まっている。


呼吸が荒く、心臓が胸を突き破りそうだ。


「......頼む、間に合え。」


雨は止まらないが、彼はラストスパートをかけて自転車を蹴り出すように前へ進める。


タイヤが跳ね上げる水しぶきが制服の裾を濡らし、濡れた靴が地面に張り付いてからペダルの感触が微妙に変わる。


それでも止まらない。


止まるわけにはいかないのだ。


前方に見えるのは校門特有の鉄製の校門ゲート


濡れた石畳に映る門の影は長く、朝の光と雨の影が混ざり合い、学校と言う光景を作り出す。


そして。


「よっしゃ、間に合った......か?」


校門をくぐり、制服の前はびしょ濡れのまま、自転車を押して自転車小屋に自転車を止めてから、東京の街を駆け抜け、無事に校門をくぐった自分を密かに誇りに思った。


雨はまだ降り止まぬ。

<雨家族逸話(これは不定期)>


彼がちゃんと自転車下りて横断歩道を渡っていたり、ヘルメットつけていたりする理由は母親に強制されたからです。母親にはとことん弱いなこのヤンキー。


いつもご愛読ありがとうございます。

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