表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
二章
97/206

激戦、ランページ・ベア

朝の光が差し込む野営地にて、クロスたちは昨夜立てた作戦を胸に、静かに森の奥へと足を進めていった。


討伐対象――《ランページ・ベア》。筋骨隆々とした巨大な四足獣は、既に木々の間で唸り声をあげ、こちらを睨みつけていた。


前夜、クロスたちはその特徴を整理し、作戦を立てていた。


馬ほどの体高に、筋骨隆々の肉体と固い毛に覆われた体。重さと速度を兼ね備え、牙と爪、そして突進――どれもが命取りとなる獣。


その相手に、いよいよ対峙する時が来た。


「行くぞ……!」


先制はジーク。


「熱よ、弾けろ――ファイアショット!」


ジークの手から火球が放たれ、ランページ・ベアの左肩を焼いた。だが、その分厚い毛と皮膚にはほとんど通じず、焦げ臭い煙が立ち上るのみ。


効果の薄さにランページ・ベアは怒りの咆哮を上げ、真っ直ぐジークへ突進してきた。


「効いてねぇ……!」


ジークが呟くより早く、ランページ・ベアが怒声のような咆哮を上げ、突進してきた。


「ジーク、下がれ!」


テオが盾を構えて前に出る。狙いは軸をずらし、大木に誘導しての転倒するはずだった。だが――


「ぐっ……ああああっ!」


巨体の勢いは想像以上だった。テオを盾ごと弾き飛ばし、数メル後方に吹っ飛ばす。


ジークは辛くも横へ飛び避けて無事だったが、地を割るようなその突進に体を強張らせる。


「テオッ!」


クロスは思わず叫びながら、ランページ・ベアの前に立つ。


その巨体が放つ殺気に喉が渇く。足が一瞬すくみそうになる……


だが、それを押し殺すように剣を構えた。


(落ち着け……自分は、ここまで訓練してきた。思考を速く。動作を正確に。何度も何度も、繰り返したじゃないか……)


息を吸い、吐く。


(ここで逃げたら、何のためにあの戦いを生き延びた――)


ランページ・ベアが牙を剥き、噛みついてくる。クロスは剣で受け、次いで爪の一閃を半身で交わす。


その動きは確かに、以前の自分より研ぎ澄まされていた。けれど――


(まだ完成形じゃない……だからこそ、今は試す時だ)


剣の間合いで攻め込みつつ、クロスは一手一手に集中する。だが、徐々に押され、距離を詰められていく。


その時、背後から叫び声。


「我が前に、揺るがぬ壁を――《シールド》!」


セラが障壁魔法を纏い、後方からメイスを持って突撃。だがランページ・ベアは咄嗟に振り向き、爪を振り上げる。


「セラ、下がっ――!」


クロスの声も間に合わず、セラは盾ごと吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。

魔法障壁があったにも関わらず、その威力は桁違いだった。


「……っ、左肩が……外れた……!」


セラは歯を食いしばりながら、即座に詠唱する。


「癒えよ、痛みの源よ――《ライトヒール》!」


一方、ジークも再度火球を放ち、ランページ・ベアの注意を引こうとするが、相手はその威力なら気にしないのか無視される。


ランページ・ベアは再び、クロスたちに向けて牙を向け続ける。


「凍てつく雫よ、我が敵を撃て――《フロストショット》!」


クロスの氷弾が命中するも、凍結は表面止まり。怒りのままにランページ・ベアは再び突進する。


だが、そこに立ち塞がるテオ。


「今度こそ、俺が!」


再び構えた盾。その横で、セラが再度魔法を唱える。


「我が前に、揺るがぬ壁を――《シールド》!」


シールドによって勢いを殺し、軸をずらした盾でランページ・ベアを横に誘導――

次の瞬間、大木に頭から突撃して、巨体がよろめく!


「……今だっ!」


クロスが駆け寄ろうとしたその時、再び両腕を振り回して迎撃するランページ・ベア。あれだけの勢いで大木に頭を打ったにもかかわらず、簡単には倒れなかった。


「セラ、テオ、後ろ足を狙ってくれ! ジーク、顔を!」


クロスたちの攻撃が一斉に放たれる中、クロスは深く息を吸い、《アイススパイク》の詠唱に入る。


「凍てつく氷よ、我が敵を穿て――《アイススパイク》」


放たれた4本の氷槍が、後ろ脚に命中。筋肉の塊に対し、貫通はしたが致命傷には至らない。それでも、動きが確実に鈍る。


(これが、今の俺の限界か……)


まだ足りない。けれど、あと一歩だとクロスは感じていた。


再びテオに振るわれるランページ・ベアの鋭い爪。テオが盾で受けるが、盾の上部が砕け、テオの身体が吹き飛ばされる。


「テオッ!」


その隙に、クロスは脇腹へ剣を突き立てた――


だが、肉が締めつけ、剣が抜けない。


(ここに立ち止まってたらまずい……)


剣を手放し素早く後退しながら、クロスは判断する。


「セラ、ジーク、攻撃して! テオは回復を!」


そして自分は――走りながら、《アイスタッチ》を詠唱。


「冷たき精よ、我が手に宿り、触れるものを凍てつかせよ――《アイスタッチ》!」


ランページ・ベアが頭部や後脚への攻撃を受けて、クロスから視線を逸らした、その一瞬。


「……今だ!」


クロスは胴に突き刺した自分の剣に飛びつき、《アイスタッチ》を発動――!


ズゥン、と低い音を立てて、ランページ・ベアの体が内部から凍りつく。


その巨体が痙攣し、やがて――崩れ落ちた。


「……やった、のか……?」


息を切らしながら、クロスが剣を引き抜き、振り返る。仲間たちも、泥と汗にまみれながら、そこに立っていた。


勝ったのだ。


今の彼らの全力を尽くして、ようやく手にした勝利だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ