表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
二章
96/168

8級としての第一歩

8級冒険者となった翌朝。クロスたちはいつも通りギルドを訪れ、依頼掲示板を確認したあと、セラが代表して受注の手続きに向かった。


だが、受付のセリアからは予想外の言葉が返ってきた。


「ちょっとお時間をいただけますか? 8級昇格後、最初の依頼ですから、全員にお話しさせてください」


セラが振り返ると、クロスたちも頷いてカウンターに向かった。


全員が揃うと、セリアは書類をめくりながら、丁寧に説明を始めた。


「今回が八級昇格後、最初の依頼となりますので、ギルドから注意点をお伝えします」


「まずは皆さん、昇格おめでとうございます。8級以上になると、町中の雑用仕事は受注できなくなります。これは10級と9級向けの訓練と評価のための仕事です」


「それって、例えば掲示板でよく見る荷運びとか、掃除とか……?」とジークが言う。


「はい、そういったものです。そして次に、町の近郊での間引きなども原則として8級以上では対象外になりますので注意してください。8級の主な仕事は、町や村から離れた地域での討伐依頼になります」


「えっ? でも俺たち、九級のときにアミナ村やコルニ村に討伐行ってましたよ?」ジークが疑問を口にする。


セリアはにこやかに頷きながら答える。


「ええ、それは皆さんの実力が昇格間近だったため、危険度を見た上で特例的に回したものです。本来、あのレベルの依頼は八級向けです」


「なるほど……」とクロスが納得したように頷いた。


セリアは説明を続ける。


「八級になると、町や村から離れた地域での討伐依頼がメインになります。対象となる魔物は、九級では危険すぎる、しかし七級を出すほどでもない……そういった力も連携も必要な任務です」


緊張した面持ちの四人に、セリアはやわらかく微笑んだ。


「ですが、皆さんなら十分にやっていけると思いますよ。ご武運を」


その言葉に、4人は揃って小さく頭を下げた。



依頼が決まると、それぞれ準備に取り掛かることになった。


クロスはいつも世話になっている武器屋を訪れ、鍛冶台で金槌を振るう職人に声をかける。


「よお、クロス。どうするか決めたのか?」


「うん。ただ、今のより、もう少し細身で扱いやすいものにしたくて」


「細身……つまり軽量化だな。構えやすく、剣を振るう速度も速くなる。だが、脆くなるぞ。特に刃こぼれが早くなるし、耐久力も落ちる」


「それは……素材で補えたりしないかな?」


職人は腕組みをして唸る。


「できるにはできるが……お前の稼ぎじゃあ、質の良い魔鋼やミスリルなんかは手が届かんだろう。それだけで破産しちまうが……」


言葉を濁した職人だったが、ふと思い出したように口を開いた。


「……ただな。魔物の素材を使って補強する方法もある。これはな、七級以上の冒険者の間じゃ当たり前だ。例えば――」


職人は棚から一振りのナイフを取り出す。


「これは、アイアンリザードの鱗を金属と混ぜて鍛造した短剣だ。見た目は普通だが、打撃耐性と耐久性が格段に違う」


「……すごい」


「つまり、お前がもしそういう素材を持ってきてくれれば、今の稼ぎでも希望に近い武器を作れるかもしれん。まぁ、使えるほどの魔物素材が取れる魔物を討伐できる腕が無いと無理だがな。すぐには用意できるもんじゃ無いだろうが、覚えておけ」


「ありがとうございます。じゃあ、帰ってからまた相談に来ます」



今回の依頼は、木こりたちからの要請による討伐任務だった。

場所はラグスティアから北東へ半日(約20リーグ)の場所にある森の入り口。森の入り口付近に居座って木材の切り出し作業ができなくて困っていると言う内容。


討伐対象は、


《ランページベア》

巨大な四足獣。体高は2.5メルほどもあり、筋肉質で更に固い毛で覆われており、凶暴。

地を揺るがすような突進を持ち、打たれ強く、強力な牙や爪で冒険者の武器や防具も破壊される事があり、油断すれば返り討ちにあうとされる、まさに八級向けの魔物だった。


目的地に到着した四人は、森の入り口周辺を調査。

木の幹に刻まれた爪や牙の跡。明らかに、獣のものとは違う魔物の痕跡がある。


それを見て、4人は森の近くにある木こりたちが使っている簡易的な野営地で作戦を考えるとにした。


「突進がやばいって話だったよな」


テオが不安そうに話す。


「突進をどうやって避けるかがカギですね。テオさんも私も正面からは絶対に受けちゃダメですね」


「森の木々を利用して、突進を流すルートを作るのは?」

とテオが提案する。


「いい案ですね。あえて通らせて、大木にぶつけさせるのも有効ですね」


セラもそこに勝機があると考えているようだった。


クロスもどう対応するかを提案してみる。


「脚を斬る事で、動きを鈍らせることができれば、ジークの《イグナイトウェポン》で、弱った隙に一気にトドメを刺せると思うけど……」


「俺の魔法で動きを止めるのはちょっと難しいけど、ヘイトを分散させる事はできると思う」

と、ジークも自分にできることを提案する。


「じゃあ、明日の朝一で戦闘開始。今夜はしっかり休もう」

とクロスがまとめると、皆が頷いた。


新たなランク、新たな挑戦。

明日――彼らの力が試される。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ