昇級と決意
依頼を無事に達成し、クロスたちは村長から討伐完了のサインを受け取った。これで正式に依頼達成となる。
その後、彼らはラグスティアへ戻るためにコルニ村を発った。
帰りも道中にある野営地で一泊。運よく魔物との遭遇もなく、天候も穏やかだったため、のんびりとした移動となった。
簡単な食事を取り、交代で見張りに立ちながら静かな夜を過ごす。翌朝も問題なく出発し、昼前にはラグスティアの町に帰還した。
ギルドに到着した四人は、すぐに依頼達成の報告を行った。カウンターのセリアが記録を確認し、明るい笑みを浮かべる。
「クロスさん、ジークさん、テオさん。おめでとうございます。今回の依頼達成により、お三方は8級への昇格が決まりました」
思いもよらぬ報告に、クロスは目を丸くし、ジークとテオは一瞬きょとんとした後、思わず「よっしゃあ!」と声を上げた。
「やったな、テオ、クロス!」
「ほんとに……!? 嬉しい!」
二人の歓喜の声に、セラも微笑んで頷いた。
「おめでとうございます。これからは、皆さん同じ8級ですね」
セリアもにこやかに続けた。
「これでセラさんも、ようやくギルドへの貢献度が溜まるようになりますから、今後の昇級に繋がりますね」
「……え?」
クロスがきょとんとしてセラを見た。
「セラ、今までは……」
セラは軽く首を振った。
「ご存じなかったんですね。ランクの異なるパーティでは、上位ランクの者にはギルド貢献度が加算されません。下位メンバーの育成や支援といった扱いになるんです」
「そ、そんな仕組みが……。じゃあ、セラは俺たちと組んでからずっと……」
「ええ。最初から承知の上でご一緒させてもらってますから、気になさらないでください。私は、あなたたちと共に強くなる道を選びました」
そう言ってにっこりと微笑むセラに、クロスは胸が熱くなるのを感じた。
「セラ、ありがとうございます……」
「ふふ。お礼を言われることではありませんよ」
その場の空気を和らげるように、ジークが両手を上げて言った。
「ともかく! 今日はお祝いだろ? せっかく昇級したんだから、宴でもしようぜ!」
「うん、たまにはそういうのもいいよね!」
とテオも同意して、クロスの宿で食事をする事に決めて一時解散となった。
クロスは一度宿に戻る前に、武器と防具の点検に向かうことにした。
⸻
まずは武器屋へ。いつも世話になっている職人の男が、クロスの剣を手に取り、苦笑交じりに言った。
「そろそろ買い替え時だな、クロス。先端も根本もずいぶんすり減ってる。鋳造品だから仕方ないが、だいぶ使い込んだもんだ」
「……やっぱり、ですか。できればもう少し使いたかったんですが、考えてみます。明日また相談に来ますね」
剣を返してもらい、防具屋へ。こちらは特に大きな損傷は見られず、留め具の点検だけで引き取ることができた。
⸻
その後、月影の宿へと戻ったクロスは、女将のカリナに話しかけた。
「カリナさん、今晩、仲間たちと一緒に夕食をいただきたいんですが……」
「もちろん歓迎するわよ。クロスの仲間なんだから、いつでも大歓迎。大きなテーブルを用意しておくわね」
部屋に戻ったクロスは、簡単に身体を拭いてから一息ついた。
コルニ村での任務は一見平和だったが、自分は黒装束の影を探すあまり、少し視野が狭くなっていたかもしれない。
(何も無いのが一番……でも、気づくべき兆しを見落とさないように。もう少し、広い目で見ていこう)
そんな反省と決意を胸に、階下の食堂へ向かう。
ほどなくして、セラ、テオ、ジークの順に到着した。
「お疲れさまでした」
「腹減ったー! 早く食べようぜ!」
「ふふっ、ジークはいつも元気ですね」
カリナが料理を並べると、食堂は一気に良い香りに包まれた。
以前はグラスファングの煮込みが名物だったが、今は手に入らなくなった。それでも、宿の食事は相変わらず美味しく、4人の笑顔がこぼれる。
「こうやって皆で食べるのも、やっぱりいいな」
「うん、なんか……仲間って感じがする」
「これからも、頑張っていきましょう」
「……ああ。明日は休養日だけど、明後日から8級冒険者としての活動、頑張ろうな」
「「「うん!」」」
静かで温かな夕食の時間。冒険者として、少しだけ前に進んだ4人の、新たな物語がまた動き出そうとしていた――。




