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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
二章
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森の足跡

朝の光が村の東から差し込む頃、クロスたち4人は再び森へと足を踏み入れていた。今日の目的も、昨日に引き続きゴブリンとホーンボアの討伐である。


セラの言葉に従い、前日にゴブリンが目撃された場所を中心に行動を開始する。


「今日も出てきてくれるといいんだけどな」


ジークがぼやくように言うと、セラが前を見たまま答えた。


「昨日と同じ場所に現れるとは限りませんが、付近の活動は活発です。注意しましょう」


森を進むこと約半刻、クロスが地面に残る足跡と引き摺ったような痕跡を見つけ、慎重に周囲を警戒する。そして茂みを抜けた先で、4体のゴブリンの集団を発見した。


「数は4体……セラ、どうする?」


クロスが小声で問いかけると、セラはすぐに判断を下す。


「クロスさん、お願いします。魔法は使わず、連携で倒しましょう」


セラの指示に、クロスが剣を構え前に出る。


一体目に斬り込むと、ゴブリンの肩口から腰までを斬り下ろす。テオはその隙に、もう一体のゴブリンへ盾で体勢を崩してからハンドアックスで討伐。セラは素早い動きで残る2体の視線を引き、クロスとテオが交互に飛び込む。連携の力で、魔法を使わず全てのゴブリンを仕留めた。


「いい動きだったね」


セラが満足げに言うと、テオが息を整えながら答える。


「まだまだ、無駄が多いけど……少しは連携できた気がする」


その後も森の奥を探すが、ホーンボアの姿はない。時間だけが過ぎてゆき、日が傾き始めたころ、村に戻ったクロスたちは、村長の報告を受けた。


「また別の畑でホーンボアが出ましてな……」


その報告に、セラは顔を曇らせ、深く頭を下げた。


「ご迷惑をおかけしました。明日こそ、必ず仕留めてみせます」


村長はその言葉に頷き、「よろしく頼みます」と声をかけて去っていった。


夕暮れ、4人は村の宿で小さな会議を開いていた。


「セラ、何か手はあるか?」


クロスの問いに、セラは畳の上に手書きの地図を広げながら答える。


「はい。昨日と今日、ホーンボアが現れた場所から足跡を追えば、巣か休息地が見つかるはずです」


「ツノのあるアイツの足跡なら、そう簡単には消えねぇだろ」


テオが腕を組みながら答える。



翌朝、クロスたちは村の北にある畑跡へと向かう。確かに、大きな足跡が泥の中に点々と続いていた。それを追っていくと、昼過ぎには新しい畑でホーンボアの姿を発見する。


「いた!」


ジークの小声に、全員が腰を低くする。


「まだ畑の中か……誘導しよう。森までおびき寄せれば、被害を抑えられる」


セラの指示で、4人は石を投げホーンボアの注意を引く。怒ったホーンボアが鼻を鳴らしながら突進してきた。


「来るぞっ!」


クロスが叫び、テオが盾を構える。だが、正面ではなく、ほんの少しだけ軸をずらして構えると、突進したホーンボアのツノが森の大木に深々と突き刺さる。


「今だっ!」


クロスが駆け出し、その首元に剣を振り下ろす。鋼が肉を裂き、ホーンボアは動かなくなった。


「やった……」


ジークが安堵の息を漏らす。


ツノと皮は戦利品として、肉は村に寄贈し、夜は村で料理として振る舞われた。


食後、焚き火の近くで湯気の立つ茶を飲みながら、クロスがつぶやく。


「ホーンボアが見つからなかった時、正直、またあの黒装束の仕業かと思ったんだ」


「なんでも黒装束に繋げすぎじゃね?」


ジークが苦笑する。


「でも、可能性としては十分ありえたのですよ」


セラが真面目な表情で続ける。


「昨日の足跡が見つからなければ、移動手段や痕跡の消した者がいたと考える必要がありました。そうなれば……人為的なものも疑わざるを得ません」


「そっか……そこまで考えてなかった。すごいな」


テオが感心したように言うと、ジークも小さく頷いた。


「けれど、疑いすぎても視野が狭まります。何事も“あり得る”と“あり得ない”の両方を抱えておくべきです」


セラの言葉に、クロスは思わず笑って言った。


「やっぱりリーダーがセラでよかったよ」


その言葉に、セラは顔を赤くしながら視線を逸らした。


「からかわないでください……もう」


焚き火の炎が、4人の頬を優しく照らしていた。


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