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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
二章
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新たな一歩

今日も朝から、クロスたち4人はラグスティアの冒険者ギルドに顔を出していた。依頼掲示板の前には、同じように仕事を探す冒険者たちが集まっている。


「これ、どうでしょうか?」


セラが手にした紙を掲げる。


「コルニ村からの依頼か……ゴブリンとホーンボアの討伐ね」


クロスが内容を読み上げた。


「ホーンボアか。あれって確か、ボアホッグよりちょっとやばいんだよな。ツノがある分、突進されたら骨ごと砕かれるって聞いたぞ」


ジークが気にしたように眉をひそめる。


「コルニ村って、ラグスティアの北だったな。確か……一日かかる距離だったか」


ジークが言うと、クロスは頷いた。


「でも、この距離だと……50リーグぐらいか。道も整備されてるから、頑張れば今日中に着くかな……」


「いえ、途中での戦闘もあるかもしれませんし、日が落ちる前に野営するのが無難だと思います」


セラが落ち着いた口調で答える。


依頼表を受付に持っていくとユニスから、セラさんたちなら、この依頼は大丈夫ですねと承認を貰いコルニ村への出発準備に取り掛かった。


討伐依頼は2種の魔物に対するもの。ゴブリンは数が揃えば脅威になるし、ホーンボアは危険な突進がある魔物だ。しっかりと装備を整え、野営の準備も済ませた4人は、昼前にラグスティアを出発した。



ラグスティアとコルニ村を結ぶ街道は、定期的に領主の私兵によって巡回されており、道幅も整っている。所々には、簡易な小屋や屋根付きの野営地も設けられており、水場やかまども備えられていた。


午後、道中の森沿いを歩いていたところ、茂みが不意に揺れ――飛び出してきたのは、フォレストストーカーと呼ばれる魔物だった。


中型犬ほどの大きさに、猫のようにしなやかな身体。鋭い爪と跳躍力が脅威となる、魔物である。


「来ます! 1体、正面です!」


セラが叫ぶと、ジークが反射的に火球を放つが、すばやい身のこなしで回避される。


クロスが素早く前に出て剣を構え、跳びかかってきた個体の腹を狙って一閃。辛うじて体勢を崩すも、後ろ足でバランスを立て直し逆襲してくる。


「ちょこまかと動くな……!」


テオが盾で弾き、クロスがすかさず追撃。最後はジークの火魔法が直撃して討伐に成功した。


「なかなかのコンビネーションだったな」


とジークが笑顔で話すと3人も笑顔で頷いた。



夕刻に差し掛かった頃、クロスは野営地を見つけ3人に声をかけた。


「こんなにしっかりした野営地があるとはね」


セラが感心したように周囲を見渡す。


「コルニ村って農作物の集積地でもあるしな。荷馬車の往来も多いから、治安を保つ必要があるんだろ」


テオが補足する。


しかし、それでも油断はできないので、4人は屋根付きの野営地に泊まり、交代で見張りに立つことにした。


最初の番はセラとジーク。


「……あのさ、セラ。クロスってさ、やっぱ強いよな」


「ええ。けれど、それは彼が積み重ねてきた時間があるからこそ、です。あなたも焦らず、一歩ずつ進めばいいのよ」


「……わかってる。けどさ、剣も魔法も同期たちより上だし、7級の先輩達からも注目されたりしてるし、正直焦ってるんだよ」


「そうだったとしても、ジークさんもしっかり力をつけてると思います。そのスピードが速いか遅いかは人それぞれなんですから、周りの事より自分のことに集中した方がいいですよ」


「セラは大人だなぁ。でも、ありがとう」


交代の時間になり、クロスとテオが見張りに立つ。


「なあ、クロス。お前、強くなって何を目指してんだ?」


クロスはしばらく沈黙し、夜空を仰いだ。


「……“守れるようになりたい”って思ってる。理不尽な力から大切な人を守れるように」


「……そっか。俺は……まだはっきり決まってねぇな。でも、一つ言えるのは、誰にも負けたくないってことだな」


お互いの想いを胸に、夜は静かに更けていった。




翌朝、コルニ村に到着した4人は村長宅を訪ね、依頼の詳細を聞いた。


「ここ数日、村の外れの畑が荒らされていてな。目撃証言によると、ゴブリン数体と、ホーンボアが確認されている。特にあのツノ付きの猪は手に負えん」


話を終えた直後、村の方から叫び声が響いた。


「村の北、ホーンボアだァーッ! 畑が荒らされてるぞ!」


すぐさま現場に向かった4人の前には、すでに暴れ回るホーンボアの姿があった。


「誘導するしかないな。森の方へ引っ張ろう」


クロスが素早く判断する。


「テオ、正面はダメよ。ジーク、横から援護をお願いします」


セラの指示が飛ぶ。


だが、足場の悪い畑では思うように動けない。ジークは位置を変えながら火球を撃とうとするが、距離が取れない。テオはつい正面に立ってしまい、危うく突進を盾で受けそうになる。


「……やっぱ強いな、こいつ!」


ジークが息を切らせた。


「セラさん、試したい魔法がある。うまくいけば動きを鈍らせられる」


「……わかったりました。お任せします、クロスさん」


クロスは魔力を練り、呪文を紡ぐ。


「氷壁よ、我が身を守る盾と成れ――《アイスシールド》!」


現れた氷の壁は、まだ完成度形ではない為、ホーンボアの突進を完全に止めることはできなかった。しかし、角が氷を貫通するまでの一瞬――その動きが鈍った隙を、クロス達は見逃さなかった。


「今だ!」


ジークがショートスピアにイグナイトウェポンを発動させ、燃える穂先をホーンボアの脇腹に突き立てる。テオが後脚を狙って斬撃を入れ、最後はクロスが頭上から剣を突き立て、ようやく討伐に成功した。




村に戻った4人は、村人たちと協力してホーンボアを解体し、その一部を夕食として振る舞った。


「うん、臭みはあるけど……煮込むと意外といけるな」


「この風味、どこか懐かしいような……」


「勝利の味だな」


焚き火を囲みながら、クロスは村人たちにさりげなく話を聞いていた。


「最近、変な旅人とか、見慣れない人たちが来たりしてませんか?」


「いやぁ……特には。いつも通りって感じだなあ」


ジークが小声で尋ねる。


「なあ、それって“黒装束”のこと?」


「うん。アミナ村も、エルネ村も、ラグスティアの近郊で起きてる。この村だってその対象になっている可能性も……と思って」


テオは少し呆れたように笑った。


「考えすぎだって、クロス。さすがにここは平和そうだぞ」


「……でも、備えあれば憂いなしだよ。目立った話がないのが、逆に気になるんだ」


「確かに、慎重に見ておくべきかもしれませんね」


セラが同意する。


今回はそれらしい話は出なかったが、クロスは心に小さな警戒を残したまま、村での依頼に再び集中していくのだった。


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