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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
二章
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反省と覚悟

休養日の翌朝、クロスたちは再びギルドへと足を運んだ。


先日受けた緊急依頼の報酬と、その後の対応についての話があるとのことだった。


ギルドに着くと、見知った顔があった。ボルド、ナシュ、リリィの三人だ。彼らもまた、依頼の帰還報告に来ていたらしい。


「戻ったんだな、ボルド」


「テオもマシな顔色になったな」


笑顔で声を掛け合う中、受付にいたユニスが歩み寄ってきた。


「セラさんたちと、ボルドさんたち。サブマスターが話があるそうです。執務室へどうぞ」


通されたのは、サブマスター・ミレーナの部屋だった。


「まずはお疲れ。ボルドたちも当事者だと言えなくはないので、情報を共有しておこう。ただし、この事は4級の連中以外にはまだ話していないからそのつもりで」


そう前置きをして、ボルド達にミレーナは魔法を使う個体と黒装束の話をした。


「……今回はギルドとしても完全に予測外だった。異常の原因が魔法を使う個体、そして黒装束の存在……。本当に想定外だった」


彼女は一度言葉を切って、テオとボルドに視線を移す。


「ボルド、村の様子は?」


「クロスたちが村に戻った日の午後、村人を連れて湿地に入った。数は多かったが、動きは通常通り。襲ってくる個体もいなかった。ほぼ鎮静化したと判断していいと思う」


ミレーナはゆっくりとうなずき、表情を少しだけ緩めた。


「それなら今回の件は一区切りだ。通常の間引き依頼として対応する様に指示しておこう。……ただ、異常な事態だったことには違いない。だから今回は、2組とも報酬を予定より増額することにした」


「「「おおっ!」」」


一気に空気が和らぎ、リリィとナシュが小さくガッツポーズを取り、ジークも思わず笑顔を浮かべた。


「今後については、いつも通り活動を続けてくれ。……それと、黒装束の件はくれぐれもまだ他言無用だ」


そう言って、ミレーナは一同を解散させた。


◆ ◆ ◆


ボルドたちとギルドの入り口で別れた後、セラがクロスたちに言った。


「今後の方針を話し合っておきたいわね。……訓練所に行かない?」


「いいですね」とクロスも頷き、全員でギルド訓練所へ向かった。


ギルドの裏手にある訓練所――。

簡素な木柵に囲まれたその場で、セラが4人に向き直る。


「……これからの活動方針について話そうも思うの。今後の予定も立てておきたいですし」


「おお、まじめだなセラ」


ジークが軽く冗談を飛ばすが、空気はどこか引き締まっている。


「俺……正直、今回の戦いで痛感したよ」


と、テオが静かに切り出す。


「盾を構えても、敵の力に押されて簡単に吹き飛ばされた。受け止めるだけじゃダメだって言われてたのにさ。だから、ちゃんと攻撃を逸らして受け流す技術と、何より……防御から攻撃への繋がりが足りてなかった」


「うん……俺も」


ジークが俯きながら話し出す。


「魔法を撃った後、動けるようにしなきゃいけないって教官から散々言われてたのに……実戦になったら、それがまだできなかった。それに、魔法を放つ時、俺は完全に止まってしまう。それが隙になって、敵に狙われる。だからこれからは走りながら魔法を詠唱する訓練と、持久力をつけるための走り込みをやりたい」


セラが小さくうなずき、静かに言った。


「私も……あのとき、ただの治療魔法だけでは足りなかった。障壁を出しても、すぐ壊されて……。これからは障壁魔法と治療魔法の精度と強度を高める。そして……盾と武器を使って、自分自身を守る術も覚えたい。後衛であっても、倒れたら終わりだから」


三人の真剣な言葉に、クロスもゆっくりと口を開く。


「……俺だって、フロレアさんが来なければ死んでた。実力も経験も、全然足りない。だから、もっと強くなりたい。今度こそ、絶対に負けないために」


その言葉に、3人は一瞬黙った後――同時に苦笑した。


「おいおい、黒装束と一番やり合えたお前が、それ以上向上心出されたら、俺たちもっと頑張らないとヤバいって」


「ほんとだよ……すぐ差をつけられそうで怖いんだけど」


「でも、頼もしいよ。クロス」


冗談交じりの言葉の中に、確かな信頼があった。


「……それでは、スケジュールも改めて確認しましょう」


セラが紙に書き出しながら言う。



【今後のスケジュール】

•1日目:1日仕事(依頼)

•2日目:半日仕事+武器メンテナンス+訓練

•3日目:1日仕事

•4日目:防具・道具の整備提出日+訓練日



「無理しすぎず、でも少しずつ前に進む。……そんな日々にしましょう」


クロス、ジーク、テオは目を合わせてから、口を揃えた。


「賛成」


「文句ないよ」


「しっかり鍛え直さないとな」


新たな覚悟を胸に、4人は静かに立ち上がった。

これからの日々が、さらなる成長の礎になることを、それぞれが信じて。

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