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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
一章
51/206

見えない足跡

森の北東、谷を越えた先。

ゴブリンたちが野営していた痕跡は、確かにそこにあった。焚き火の跡、粗末な寝具、食べ残された獣の骨。斥候のミールとミーナは手際よく現場を記録していく。


「滞在してたのは間違いないな……問題は、ここで何が起きていたかだ」


グレイスが腰を落とし、焼け焦げた石を拾い上げる。


「けど、ここでブラッドゴブリンやシャーマンが“生まれた”痕跡はない。進化したってことも考えづらい」


ナタリーが頷きながら補足する。


「上位種が現れるには、強い刺激――大量の魔力を含んだ場所や、凶悪な個体同士の共食い、あるいは特別な術式の痕跡が必要。でも、この野営地にはそれが一切ない」


「魔力の濃度もごく普通です」


ミールが簡易測定用の魔石を見せる。反応は、村の周囲と変わらない平凡な値。


「じゃあ、どこからか送り込まれたってこと?」


斥候のミーナが言ったその言葉に、バリスが唸るように付け加える。


「だとしたら、その目的はなんだ? わざわざ上位種を含むゴブリンの集団を、辺鄙な村に向かわせる理由があるのか?」


「それを私たちが考えても仕方ないけど……一つ可能性があるとすれば」


ナタリーはふと目を伏せた。


「“反応”を見るため、かもしれない」


「反応?」


グレイスが眉をひそめると、リオンが補足する。


「つまり、どれくらい人間側が抵抗できるか。誰がどんな動きをするか。それを調べるための、試験的な襲撃だった可能性があるってことですか?」


一同が重い沈黙に包まれる。もしそれが事実なら、次は――もっと大規模な襲撃が来るかもしれない。


「……嫌な予感しかしない」


バリスが呟いたその時、斥候のミールが森の中からみんなを呼んだ。


「少し離れた場所に、馬車の轍があった」


全員でその場所に行き、轍を確認する。


「幅からして小型の馬車ね。けど……ブラッドゴブリンとゴブリンシャーマンを運び込める大きさじゃ無い」


ミーナが続ける。ミールとミーナの兄妹は森に詳しく、魔物や人間の痕跡の違いを見分ける力に長けていた。


「でも、誰かが何かを運びに来てたってことだな」


「そう。でも、その何かが分からないし、それが今回の件に関係しているかも分からない」


グレイスは険しい顔で言った。


「でも、誰かがこの場所を“意図的に使った”って線が濃厚だと思う」


「けど、それが誰で、何が目的なのかがわからない」


ナタリーは静かに首を振る。


「当面は、ラグスティアの冒険者に警戒するよう、ギルドから依頼を出しておきましょう」


バリスが状況をまとめるように言った。



3日間の調査。周辺の地形や魔力反応、痕跡の有無。すべてを洗い出しても、核心には辿り着けなかった。


見えない何かが、動いている――。


その不穏な空気を背中に感じながら、彼らは翌朝、アミナ村へと戻っていった。

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