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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
一章
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救援と安堵

 翌朝、村の東門の柵の向こうから人の声がした。


 「門を開けてくれー! カイルが来たぞー!」


 それは、見張りをしていたラグナの叫びだった。


 村人や冒険者たちが駆け寄ると、そこには見慣れた一人の若者の姿があった。

 カイル――ベルダ村の狩人であり、クロスの先輩冒険者だ。


 疲労の色は濃いが、その顔には確かな達成感があった。


 「町のギルドが動いてくれた……応援、連れてきたぞ!」


 その声と共に、後ろから列を成して現れたのは、ギルド職員らしい風貌の男1人と、数十名の冒険者たち。


 最前列を歩くのは4級の女性。その後ろには、6級と7級の冒険者が合わせて二十名。皆、整った装備を身につけ、油断のない目で村の様子を見渡していた。


 ナタリー教官が駆け寄り、カイルの肩を掴む。


 「……無事で、よかった……本当に、よくやったわ」


 「……俺、何もできなかったけど……道案内くらいは……」


 カイルは照れくさそうに笑いながらも、安堵に肩を落とした。


 ギルド職員がナタリーの前に進み出て、落ち着いた声で名乗った。


 「私はラグスティア町ギルドより派遣された、職員のバリスです。報告を受け、ギルドと領主代行の指示のもと、救援部隊を編成し、急行しました」


 ナタリーが深く頷く。


 「助かります。村も冒険者も限界でした。……ただ、一つ、先にお伝えしなければならないことがあります」


 バリスが目を細める。ナタリーは周囲の冒険者たちと職員に向けて言った。


 「今回、アミナ村を襲った魔物の中には、ブラッドゴブリンと、ゴブリンシャーマンが確認されています」


 一瞬、空気が凍りついた。


 最前線に立っていた4級冒険者の女が眉をひそめ、声を潜めて呟いた。


 「……ブラッドゴブリン? ここで……?」


他の冒険者達からも驚きの声が上がった。


 「シャーマンまで? 嘘だろ……」


 「上位種が同時に、こんな小さな村に……」


 ギルド職員のバリスですら、顔を強張らせた。


 「本当ですか……? その情報に、間違いは?」


 「ええ。目撃、戦闘、討伐まで、すべて我々が確認しています」


 ナタリーの真剣な口調に、場の緊張がさらに高まる。


 「……被害は?」


 「戦死者は二名。ベルダ村のベルク教官と、ベルダ村所属の魔法使いのゼルス。それと、重症者が三名。ですが……村は守りました」


 そう言ったナタリーの顔には疲労が色濃く残っていたが、確かな誇りがあった。


 ギルド職員バリスは、しばし沈黙したのち、静かに頷いた。


 「……それほどの規模の魔物群、しかも上位種相手に……よく、守り抜きましたね」


 その言葉には、疑いも驚きも、そして何よりも深い敬意が込められていた。


 「今回の件は重大な事例として、ギルドと領主代行双方が即座に対応を決めました。なので、復興支援金は領主家から支出されるでしょう。柵の再建、資材の補給、必要な援助は、すべて。」


 村の人々がざわめき、やがてその視線は自然と村長に向けられた。


 村長は、震える声で呟いた。


 「……ほんに……ありがてぇ……」


 そのままその場に膝をつき、顔を両手で覆い、嗚咽した。


 村人たちも、目頭を押さえる者がいた。


バリスはその様子を見て一礼し、続けた。


 「周囲の警戒については、只今より我々が交代して対応します。村の防衛線の補強、柵の修理なども段階的に進めていきます。どうか、それまで……休んでください」


 その言葉に、ナタリーは深く頷いた。


 「ありがとうございます……心から感謝します」


 数歩後ろで聞いていたラグナ、ハンス、フリーダたちも、疲労の色を浮かべながらも、ようやく肩の荷を下ろしたように見えた。


 「やっと……寝られるな」


 「……マジで助かった……」


 乾いた笑いと安堵の声が漏れた。

 ミトが村の子供を抱きかかえて戻ってきたところで、ナタリーは振り返った。


 「ベルクとゼルスの墓は……村の北の丘に作るわ。立派な墓を。彼らが守ったこの村の中で」


 その後、町から来た冒険者たちは警戒の引継ぎに入り、ベルダ村の冒険者たちはようやく、戦いの終わりと休息の時を得ることができた。


犠牲はあった。痛みも残る。だが、守れたものが確かにここにあった。

 この静かな朝の風の中、戦いの終わりを、村人たちはようやく実感し始めていた。


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