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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
一章
34/167

決意

 クロスは迷っていた。

正直、それほどの魔物を相手に戦うことを考えると怖かった。

それに、自分より遥かに強い仲間がいる中、自分が足を引っ張るかもしれない。


だが、それでも。


(……俺は、何のために剣を取った?)


 地球にいた頃は強くなりたいと思って鍛錬してきた。しかし、異世界に来てからは、生きるために毎日剣と魔法を学んできた。そして今は、命を賭ける者たちの背中を見て、力とは何のためにあるのか、その答えへのヒントがあると思った。


「俺は……行きます」


 クロスの声は震えていたが、はっきりとしていた。


「助けを求めてる人がいるなら……理由としては、それで十分だと思うんです」


 その言葉を口にした瞬間、クロスは心の中でそっと誓う。


 (この戦いで、現代の知識を活かして強化した《アイスタッチ》と《フロストショット》を使う事になるだろう。その時は迷わない、誰かを守るために)


 力を振るう覚悟は、すでに出来ていた。



 翌朝、霧が立ちこめる中、偵察部隊の三人が村を出発する。


 その先頭に立つのは剣術教官・ベルク。共に行動するのは、6級冒険者のリオンとマルダだ。


「お前ら、油断するなよ。今回は情報収集が第一だ。無理に戦うな」


 ベルクが低く告げると、リオンが軽く頷き、マルダがにやりと笑った。


「わかってますって。逃げ足だけは鍛えてますから」


 村の者たちが見守る中、三人は無言で歩き出した。彼らの背中が朝霧に消えていく。



 西門では、カインとアシュレイ一行が出発の準備をしていた。


 背負い袋の紐を締めながら、カインが振り返る。


「……クロス。お前もいよいよ本格参戦だな。くれぐれも、死ぬなよ」


「はい。カインこそ、気をつけてください」


 クロスが言うと、カインはふっと笑う。


「俺は報告役だからな。どこまでも逃げる準備はしてる。安心しろ」


 隣で馬車の積み込みを見ていたアシュレイが一歩前に出る。


「しかしまあ……この村の飯は本当に驚いたよ。領都の貴族だって知らない味だ。あれだけでも、守る為に全力で知らせる価値がある」


 アシュレイの目に真剣な色が宿っていた。


「だから領都に必ず伝える。この村を守るために」


 その言葉にクロスは深く頭を下げた。



 ギルドの作戦準備は慌ただしく進んでいた。


 地図と書類を並べた机を前に、ギルドマスター・ドルトンとゴルが静かに言葉を交わしている。


「ドルトン、本当にアミナ村の防衛は――」


「ああ。可能なら守るべきだが……状況が悪ければ、ベルクにはベルダ村への撤退を指示している」


 ドルトンの目は厳しく、だがどこか悲しげでもあった。


「それが……一番の被害を抑える手段だ」


「……了解した。俺からも、ナタリーたちに通達しておこう」


 戦うための準備と、守るための覚悟。そのどちらも、このギルドは手放さなかった。



 夕刻。広場では救援部隊の出発に備え、最後の点検と配給が行われていた。


 クロスは腰に剣を下げながら、鍛錬場で一人、素振りを繰り返していた。


 (人を助けるための力……それが、本当に「強さ」なんだとしたら)


 初めて、自分の剣に宿る意味を見つけた気がした。


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