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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
一章
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初めての村外活動(後半)

風が止まり、森の空気が緊張に張り詰める。


「来るぞ――!」


カイルの掛け声と同時に、一体のスライムが跳ねるように突進してきた。

素早く矢が放たれ、正確にその身体の核を貫く。スライムは一撃で崩れ落ちた。


「核を狙え! 剣でやるならしっかり見極めろ!」


「は、はいっ!」


次に現れた二体目、三体目――クロスは剣を抜き、震える手で構える。


(怖い……でもやるしかない!)


目の前に迫ったスライムに向かい、クロスは剣を振る。

だが、タイミングが僅かに遅れ、刃はスライムの身体を弾いただけだった。


「動きが止まった瞬間を狙え! 焦るな、呼吸を整えて!」


後ろからカイルの声が飛ぶ。

それに背中を押されるように、クロスはもう一度構え直す。


エルは後方で短剣を抜き、補助に回っている。

彼の動きは素早く、スライムの後ろに回り込んで攻撃の隙を作ってくれる。


三人は声をかけ合いながら、少しずつ数を減らしていった。


(怖い……でも、俺は逃げない!)


何体目かのスライムが跳ねかかってきた瞬間、クロスの剣がそれを捉えた。

振り下ろした刃が、中央の核を真っ二つに断つ。ぐにゃりと崩れるスライムの身体。


「やった……!」


だが、息をつく間もなく、また別のスライムが迫る。

それは終わりなき連戦のようだった。体力も、気力も削られていく。


それでも、カイルの矢、エルの支援、クロスの奮闘が噛み合い、最後の一体が崩れ落ちたときには、太陽が大きく傾き始めていた。


「……終わったか……」


クロスはその場にへたり込みそうになる足を踏ん張り、剣を鞘に収めた。

手は汗と血と疲労で震えていた。


「よくやったな。久しぶりの実践だろうに大したもんだ」


カイルが笑って肩を叩いてくる。

エルも小さくうなずいて言った。


「君がいて助かった。ありがとう、クロス」


三人は無事に村へ戻り、ギルドへ直行する。

カイルが代表して任務報告を行い、魔物の排除と薬草の収集が完了した旨を伝えた。


その間、クロスはギルドの壁にもたれて一息つく。


(……怖かった。体も動かなかった。でも、最後には……戦えた)


戦いを終えた安堵と、自分の未熟さを痛感する悔しさが交錯していた。

魔法も剣もまだ未熟。けれど――。


(だからこそ、強くならなきゃいけない)


クロスはその場で、静かに決意を固めた。


剣の訓練をもっと。魔法の理解をもっと。

この世界で生きていくために。


「……負けるわけにはいかないんだ」


誰にともなく、そう呟いた。


その言葉は、自らの胸に深く刻み込まれていた。

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