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異世界剣士の成長物語  作者: ナナシ
二章
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それぞれの道

仕事が年末進行に突入してしまいました…

少し更新が遅くなりそう…です…

 朝日が山の端から顔を出し、淡い光がフェルナ村を照らし始める。


 焦げた木材の匂いと、静まり返った村の空気を背に、二つの一団が出立の準備を整えていた。


 一つは、ラグスティアへと帰還する者たち。


クロス、バルス、そしてラグスティア組のミーナ、ミール、ヘレナ、シーファ、ロイク。


さらにセイラン組のカレンとスレインも加わり、総勢十名の一行だ。


 もう一つは、ノルヴァン連邦の町ブリザリウスへ向かう報告組。グレイス、グラハム、フロレア、セリナに、フェルナ村の代表者として初老の男、エドラスが同行していた。


 残された村の防衛は、アーヴィンたち4級パーティと、応援の5級と6級パーティが担うことになった。



 街道を進む一行の先頭を、杖を突いたバルスが歩いていた。


その足取りは重く、傍目には頼りなく見えるが、不思議と背中には落ち着きを感じさせるものがある。


 ミーナがため息混じりに言った。


「……結局、私たちのパーティは三人だけになっちゃった。正直、この先続けるのが怖い」


 隣を歩くミールが小さく頷く。


「補充するにしても、人が集まるのかな……。ラグスティアのギルドだって、同じランクはそれなりに固定されちゃっているしね……」


 ヘレナも沈んだ声で付け足す。


「やめるか続けるか、それすら決めきれないわね」


 一方、セイラン組のカレンとスレインも、後方で同じように不安を口にしていた。


「……セイランのギルドに戻っても、二人きりじゃどうにもならない」


「新しい仲間が見つかるまで、まともに仕事もできないだろうな」


 そのやり取りを聞いていたバルスが、杖で地面を軽く突きながら振り返った。


「おいおい、全員、下向きすぎだぞ」


 口元には豪快な笑みが浮かんでいるが、その姿は見るからにボロボロで、杖に体重を預ける様子は頼りない。


「俺だって昔、仲間を全員失って一人になったことがある。……あの時はさすがに、冒険者をやめて村に帰るかと思ったさ」


 ミーナが顔を上げる。


「それでも……どうして続けたんですか?」


「簡単な話だ。生き残った以上、それだけで価値がある。……その経験をしっかりアピールすれば、ギルドは人を集めてくれるし、少なくとも仕事は回してくれる」


 スレインが苦笑混じりに問う。


「でも、そう簡単に人が集まりますかね?」


「焦るな。……今は生き残ったことを噛みしめて、まずは体を治せ。傷ついてるから考え方まで後ろ向きになるんだ。すべてはそれから考えりゃいい」


 バルスの声はいつもの調子より低いが、不思議と重みがあった。


 その背を見ながら、クロスは小さく呟いた。


「……俺も、もっと強くならなきゃな」




 夕闇が迫るころ、雪を思わせる白い石造りの城壁が視界に入った。


北方らしい鋭い屋根と尖塔が立ち並ぶ町、ブリザリウス。


その城壁の見事さに、グレイスたちは足を止めて町を見上げた。


 フロレアが口を開く。


「……ギルドは、黒装束の連中について、どこまで知ってるのかしらね」


グラハムが腕を組み、渋い顔で答えた。


「おそらく、“何かよからぬことをしている連中がいる”程度だろうな。正直、自分の目で見なけりゃ俺だって半信半疑だ。しかも、魔物の暴走や村の襲撃が繋がってるなんて、普通、信じてもらえるかどうか」


 グレイスも小さく頷く。


「それなら、こっちで見たことをすべて話すしかない。……人間を魔物に変える術や、武器を持った魔物の群れのことも」


 その時、同行していたフェルナ村の代表者、エドラスが前に出た。


「わしが、村で何が起こったかを余すことなく話します。……あの連中が率いた魔物どもが、武器を持ち、魔法まで操り、村を焼き尽くしたことを、しっかり伝えますぞ」


 フロレアがその横顔を見て、口元に笑みを浮かべた。


「ええ、それでいい。納得するまで、じっくりと話しましょう。……例え、ギルドの人間が渋い顔をしても」


 その笑みはどこか危うさを帯びていて、エドラスは思わず苦笑したが、力強く頷いた。



 村の広場には、アーヴィンたち4級パーティのメンバーと、応援の二つのパーティが集まっていた。


 焦げ跡が残る広場を囲み、今後の方針を決めるための話し合いが始まる。


「まずは村人たちの生活を立て直すのが最優先だ」


 アーヴィンが口火を切る。


「夜警はどうする?」


とオリヴァーが問えば、ライオネルが答えた。


「俺たちが交代で担当する。昼は防壁の修理を手伝おう」


ナディアが手を挙げた。


「上位の魔物が集団で暴れ回ったからでしょう、この辺りにいる魔物の動きはそれほど活発ではないですね。風魔法で索敵し、危険な群れが近づいたら早めに報告します」


ロックが付け足す。


「戦闘になったら、下位の魔物ならすぐに討伐。上位の魔物なら村の外に誘導して協力して戦う方がいいな。」


 アーヴィンはみなの意見をまとめ、腕を組んで言った。


「……夜警は5級ライオネル達、索敵は6級のシリル達が中心に対応する。防壁修理は俺たち4級が村人を率いてやる。魔物が集団で現れた場合は退避を最優先に。無駄な戦闘は避ける」


ドルクが頷き、短く言った。


「了解だ。村を守ることが第一だな」


シリルも同意し、静かに付け加えた。


「戦いたいわけじゃない。村を守るために戦う――それでいいわよね」


 広場に少しずつ落ち着きが戻り、村人たちはようやく小さく息をついた。



それぞれの一団が、別の道を進み始めた。


だが胸にあるのは同じ思い。


「二度と、あの惨劇を繰り返させない」という決意だけだった。


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