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第三話『危険な狂戦士』

記録者 倉本(くらもと) 奈那美(ななみ)



「さて、そろそろ行きますか…奈那美さん」


「新堂さん、お聞きしたいことが」


 首を傾げる男性…彼の名は、新堂 真。


「?」


「このDWを創ろうと思った理由は………?」 


その問いに新堂は少し戸惑ってしまった。自分でも、何故これを創ろうとしたのか、このことを思いついたのはなぜか…謎が多い…その疑問を解決する手立てはないものか…


「…考えておきます。準備はいいですか?」


「はい」


 彼女の今の名は〈倉本 奈那美〉。今の名、と言うのは、彼女には前世が有り、しかもその記憶が有るとでも言っておこうか…

 新堂と彼女の馴れ初めを知るものは誰一人居ないのが不思議である。



   ☆   ★   ☆



 神代病院…

 駐車場に一台の車が入ってきた。


「ここか?神代病院って…」


 彼は取り敢えず、正面玄関から入っていく事にした。


 院内に入った途端、彼は徒ならぬ悪寒を感じた。彼は元来、病院が嫌いではあったが、そんなものではない、何か、途轍もない秘密を抱えていそうな、彼は恐ろしくなった。其も同様、ただの恐ろしさではない、


「こいつは…!」


 彼は少々躊躇しつつも、ナースセンター窓口に足を踏みいれた。


「あの~、すいませ~ん?」


 中から出てきたのは、ナースとは完全にかけ離れた-と言うか、出てきたのは女性ではなく、男性-人物…


「?」


「何か…」


「あ、あの、〈乙夏=モードニス〉さんの…!部屋…!」


 その男性は彼を睨むと、ナースセンター内に入っていった。すると、中から女性の呻き声が聞こえてきた。


「おい、何やってん…!」


 彼がナースセンターに入っていくと、彼はおもいっきり激怒&驚愕した!

 長身の男性がナースの首を掴んで何かを問いかけていた。ナースには無数の傷が残っていた。おそらく、この長身の男がやったものであろう…。


「乙夏=モードニスノ部屋を言え」


 ナースは何も答えなかった。と言うより、答えることが出来なかった。声帯を潰され、腹部からは臓物が幾つも出ていたのだから…まあ当然であろう…

 そんなナースを長身の男は、


「…もう死んだか…」


 彼は激昂した!


「てめー!人の命を…!」


 だが男は何か答える様でもなく、彼のほうを睨んだ。

 彼は寒気を感じ、その場から離れようとしたが、いきなり首筋を男の左手が鷲掴みにした!


「かはっ!!!!」


 彼は抵抗を試みたが、其は全く無謀と言うものだった。そのうち、男は右手を彼の喉仏に伸ばしてきた!

 喉仏に圧力がかかってきた…


「くっ!!!っの野郎!」


 彼は隠し持っていた銃を男に突きつけた。その数秒後、男が倒れ込むのと彼が倒れ込むのが同時だった…


「ぐはっ!」


 と彼が尻を摩っていると、そこに聞き覚えの有る声が…!


「あれ?陽洸(ひこう)じゃん」


 彼は咳き込みながら、


「ゲホッ!クソ!、何なんだ!こいつは!」


「ANGEL」


「?」


 彼の名は、〈房森(ふさもり) 陽洸(ひこう)〉。彼は、乙夏の元クラスメイトである。

 彼は乙夏に聞いた。


「…ANGEL?ANGELって?」


「まあ、この世界の敵ってとこかな…」


 乙夏は其だけ言うと、陽洸をじっと睨んでいた。その眼には何か違うものが有った。


「……乙夏?」


「似ている…」


「?」


「お前…咲夜に似てる…」


「咲夜って、お前の彼女のか?似てるかぁ?」


「御免…今の俺…もうろくしてんだろうな…誰でも咲夜に見える…一番人間味の感じられないお前でさえも…」


 其を聞くと…


「貴様ーーー♪」


 彼らは笑い始めた。其は十数分に及んだ。

 そして十数分後…

 陽洸は乙夏に聞いた。


「なあ、咲夜が死んだって本当か?」


 彼は無言で頷いた。


「そうか」


 陽洸は帰ろうとしていた。そのついでっぽく…


「乙夏」


「?」


「この病院から早く出てった方が良いぞ。ここはどうも人間にはあわねえや」


「そうか、そんじゃ、荷造りすっか」


 そういうと、二人は別れた。




 駐車場…

 彼は車のそばで煙草を吸っていたが、車の窓を叩く音が聞こえると、自動車のドアを開けた。車に乗っていたのは、〈QZL‐BMWL〉。陽洸は車に乗り込んだ。


「遅い」


「悪い」


 陽洸がエンジンをかけようとすると、其を脇の少女が遮った。


「?」


「こっちを向いて」


 彼が言われた通りにすると、QZLは陽洸の腕に手を回し、顎を少し上げると、彼女と陽洸の顔の間は数センチ有るか無いかまでに近づいた。其でも二人は躊躇することはなかった。かえって、とても自然な顔をしていた。


「私が何をしたいか、分かる?」


「大体は」


「だったら、其に答えてよ」


 陽洸は彼女の手を掴み、逆に彼女の顎を少しあげ、自分の唇に彼女の唇を重ねた。其は約、数十秒に及んだ…。



 そして…

 陽洸の乗った自動車はもう既に病院の敷地を出ていた。

 その十数分後、乙夏も病院を後にしていた。

 神代高の前の道路…

 ここに一人…正確に言えば、〈一体〉だろうか…の生命体が腰を下ろしていた。彼は何かを待っているようであった…其が何かは、その数秒後に分かる…

 彼は何かを呟いていた。


「ΣΩξφЮ1…」


 其が何かは誰にも分からない…分かるのは、其を呟いている本人だけであろう…

 そして…そこに一台の車が走ってきた。その車に乗っていたのは二人…

 房森 陽洸とQZL‐BMWL…

 座っていた生命体はいきなり飛び出した!


『!』


 陽洸はおもいっきりハンドルを切った!しかし、車は確実にガードレールにぶつかると言うところまで来ていた。「危ない!」と感じたとき、二人を守った生命体が…


「?」


 陽洸は車を下りた。生命体はQZL‐BMWLを睨んでいた。

 陽洸が其に気付いたときはもう生命体の槍がQZL‐BMWLの腹部を貫いていた。


「うっ!!!」


 彼女は力なくその場に倒れた。


「おい!QZL!しっかりしろ!」


 陽洸が必死に呼びかけていたが、QZLは腹部を押さえたまま何も言わなかった…と言うより、言えなかった、と言ったほうが適当であろうか…。

 必死で呼びかけている陽洸に生命体が近づいてきた…!彼は手を伸ばした。その手は陽洸の首筋を捕えた。


「くっ!!!」


 陽洸は苦しみながら銃に手を伸ばした。だがその銃は生命体によって使い物にならない鉄の塊に姿を変えられてしまった。

 彼の意識が薄れていく時、彼の脳裏に何ものかの声がした。



『しっかりしなさいよ陽洸君!』



『だっ、誰だ!』


『私は倉本奈那美、このゲームのナビゲーターなの!とにかくしっかりしなさいよ!QZLさんが危いっしょ!』


『でも、俺は…もう…』


『自惚れてんじゃ無いわよ!この意気地無し!とっととQZLさんを助けたらどうなの!』


『だ、だって…』


『だってじゃない!自分の命よりその娘の命を心配したらどうなの!あんたの命より彼女の命のほうが大事なの!!』


『そこまで言うか!畜生!殺ってやらあ!』


 二人の頭の中での会話が済むと、なぜか突然、首にかかっていた圧力が消えていった…。

 陽洸は眼を開けた!


「うらっ!!」


 気合いと共に陽洸は生命体の顔面をおもいっきり蹴り飛ばした!しかし、いかにも鉄を叩いた様な嫌な音がしたかと思うと、生命体は彼を学校の塀に向かって投げつけた!


「!!」


 彼は其から、立ち上がることが出来なかった。呼吸が思うように出来ない…


「…はっ!…くは…こ…」


 彼は動けないばかりか、呼吸すら儘ならない状態まで来ていた。喉がヒュウヒュウ鳴っているのが自分にも感じ取ることが出来た。 そんな中、生命体はQZLに近づいていった。陽洸は其を見ると、


「止め…ろ…QZL……ら……なれろ!」


 彼はよろめきながら生命体に近づき、生命体にしがみついた。


「止めろ」


 だが生命体は陽洸には眼も繰れず、QZLの首に手を伸ばした。


「…めろ……やめてく…」


 陽洸が哀願したにもかかわらず、生命体はQZLの首を絞め始めた。


「…めろ…止めろっ言ってんだろうがよ!」


 陽洸は自分の骨が唸りを上げているのを感じながら生命体の腰に腕を回した。生命体が振り払おうとしたその刹那!


「!」


 陽洸が苦し紛れに見様見真似でやったバックドロップが生命体の頭を完全に砕いた!

 そして二人は共に果てた。

 その時、陽洸は或ることに気付いた。

…QZL…

 彼女のほうを見た。彼女は寸分も動かずに大破した車の脇に倒れていた。


「QZL…!」


 彼はQZLに近寄り、必死に呼びかけた。しかし、QZLは眼を開けなかった。仕方なく陽洸は最寄りの医大へ行くことにした。車を破壊されていたので、QZLを背負ってだが…    



 要石…ここに乙夏の姿が有った。


『咲夜…』


 彼は暫しその場に立ち尽くしていた。咲夜の笑顔が彼の脳裏を過った。

 十数分その場に立っていた乙夏は、その場をそそくさと後にした。その場を名残惜しそうに何度も振り返りながら…


『…乙夏君…』


『誰?』


『倉本奈那美です。このゲームの…ナビゲーターなんです…』


『ふ~ん…。で、用件は?』


『あの、陽洸君とQZLさんを助けてあげて。彼ら、今とても危険な状態なの、早くして、多分彼らは今、神代医科大学にいると思うから、急いで!』


『神代医科大学だな?よし、分かった、直ぐ行くことにしよう。』


 乙夏は一路、神代医科大学に行くことにした。後ろに、いてはならないものがいることも知らずに…

 その後ろにいた人物は乙夏に近づいた。そして業と彼にぶつかった。


「あ、すいません」


「いえ」


 後ろにいた人物はそこから立ち去った。彼の右手には数本の髪の毛が有った。

 彼は路地裏に入り込み、今〈採取〉した乙夏の〈DNA〉を体内に取り込んだ。

 彼の頬の筋肉がだんだんと痙攣していったかと思うと、顔の形、背丈などがすべて乙夏に瓜二つになった。

 その時、其を見ていた人物がいた。その人物があとず去ると、彼は下に落ちていた〈鳥の羽〉を体内に取り込んだ。たちまち鳥の姿へ……、あっと言う間の〈変身〉の瞬間を見ていた少年の前に来た。彼‐鳥に変身した‐の懐中から出てきた銀色のきっさきが彼の左胸を貫いた。

 その後、彼はもう一度乙夏の姿になり、用意していたオートバイクに乗り込み、神代医科大学へ行くことにした。


 乙夏は神代高前まで来ていた。ちょっと一服しようかと塀に寄りかかったとき、彼の後ろにいた人物が乙夏の頭を鈍器で殴打した。


「くっ!!」


 彼は失神した。


 神代医科大学…

 ここの病室に陽洸とQZLの姿が有った。二人は隣り合ったベッドで寝ていた。彼がQZLを病院に運んだとき、陽洸の傷も凄いので、共に入院する羽目になってしまったのである。

 二人は静かな寝息を立てながら寝ていた。

 何処かの倉庫…

 ここに、乙夏の姿が…


「うっ!…しっかし痛ってーなー!あのヤロ、しこたま殴りやがって!」


 彼は両手両足の自由を奪われていた。

 彼がふと前を見た時、そこには黒い影が…!



(第三話『危険な狂戦士』了)

この回は李咲蘭りさくらん氏によってつむがれました。

かなり荒削りな文章ですが、面白い物語にしてくれました。


雨宮は、実は倉本奈那美さんが結構お気に入りです。


この時点ではどのキャラもあまり性格が固定していないんですけどね。

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