⑤ 大阪都構想は「大阪市の財産没収と貧困化政策」
筆者:
この項目ではいわゆる「大阪都構想」の問題点についてみていこうと思います。
2015年と2020年の2度住民投票で否決はされましたが、いずれもかなりの僅差だったためにか、
『維新、ちらつく「大阪都構想」再浮上 衆院選の看板政策として復活か』
と毎日新聞の23年11月10日の記事でもありましたから全く諦めていないことが伺えます。
質問者:
そもそも、「大阪都構想」ってどんなものなのかよくわからないんですが……。
「大阪都」になって「東京23区」みたいな特別区になるという感じですかね?
筆者:
それはかなり誤解されているところなんですね。
2度の住民投票で否決された「大阪都構想」という前提でここからはお話をさせていただくのですが、
ネーミングこそ、「大阪都」となっているんですが実際は住民投票で賛成票が反対票を上回ったとしても、「大阪府」が「大阪都」にはなりません。
質問者:
え? じゃぁ、いったい何なんですか……。
筆者:
「大阪都構想」というものについて、
「維新の会」の言い分では『大阪都にすることで二重行政を解消し、無駄をなくして住民サービスの向上に繋げる』としています。
しかし実際には、住民投票の結果で賛成が反対を上回っても「大阪都」になることはなく、大阪市が「4つの特別区」に解体されることになります。
特別区ということに関しては「東京23区」と同様の感覚でいいと思います。
そうなった場合、政令指定都市としての大阪市は消滅し、自治権や行政サービスの提供権、都市計画や区画整理事業に関する権限もなくなります。
住民サービスの質を向上させたり、より地域の実情に合ったまちづくりをすることもできなくなってしまうのです。
質問者:
特別区になる制度提案だったんですね……。
具体的にどうしてそういうことになってしまうんでしょうか?
筆者:
政令市である現在の大阪市には8600億円の自主財源があるのですが、4つの特別区の自主財源は合計約2500億円に激減してしまいます。
残る6000億円は大阪府に入り、そこから4000億円が特別区に振り分けられますが、残りの2000億円は大阪府の一般財源に入り、より広域な事業に使われるようです。
特別区のために国が配分する地方交付税交付金も大阪府を迂回することになり、その一部(約24%)を府が召し上げるということになっていたようです。
まぁ簡単に言うと、24%ほどの体のいい「歳出削減」なんですよ
「維新の会」の出した「特別区制度案」では、特別区本庁の職員数の31%から40%ほどが地域自治区事務所(区役所と呼称)に置かれています。
つまりは、特別区本庁内の人員の大多数が出先機関に送られるというわけであり、そうなれば特別区本庁の業務は成り立ちません。
まぁ、恐らくは「パソナ」がその業務を委託することになるんでしょうね。
質問者:
どうしてこんなことをしようとしているんでしょうか……。
筆者:
大阪市の権限と財力は非常に大きく都道府県である大阪府に匹敵するほどの力を保持しているんですね。
従って大阪府が大掛かりな都市計画事業を行う場合、大阪市の意向を無視することは出来ず両者はしばしば意見が合わずに対立を繰り返してきたという歴史的経緯があります。
そこで、円滑に大阪府の意見を通そうとする行政システムが、
「大阪都構想」なわけなんです。
大阪市の持つ広域的な事業の権限を府に移管してたうえで4つに分割し、市議会に替わりそれぞれの区に区議会が設置されるのです。
つまり、「大阪市の権限を弱め、大阪府の権限を強める構想」なわけなんです。
先ほどの教育の項目で紹介しました、「1500億円の教育資産」は既に没収されてしまっていますが、毎年の予算だけでなくそういった市の資産は全て府に没収されることになるでしょう。
そして、最悪は売却して維新の会の都合のいいところに流用されてしまうのです。
これでは、大阪市の特別区とされる地域は立ち行かなくなってしまいます。
質問者:
よくそんな案で賛成と反対が拮抗しましたね……。
筆者:
よほど維新の会の宣伝が上手だったんでしょうね。
ただ、全部の資産が他に流用されるわけでは無いと思います。
ですが、大阪市の人口は大阪府全体の3割ほどであり、「多数決の原理」からすると、
他の「穴の開いたバケツ」に入れられてしまい、大阪市に還元されない可能性が高いのです。
そして起こることは、
「大阪市のサービスが低下してしまう」
ということです。
※しかもサービス維持について規定はありますが「努力目標」のために容易に反故にされる可能性大
質問者:
ふぅむ、なるほど。しかし一体何をそんなに支持されたんですかね?
筆者:
維新の会の“お題目”として大阪府民にウケたこととしては、
「二重行政の解消」というものがあるんです。言わば職員を減らして『ムダの削減』になるということらしいです。
しかしながら、維新の会の橋本府政以降に大阪府と大阪市の事業の統合はすでにかなり進んでいるんですね。
例えば、大阪市立大学と大阪府立大学の統合、大阪府市の保証協会の統合、地方衛生研究所の統合などが行われてきたそうです。
あと残っている大きな事業といえば、府市の水道事業程度であろうと思われます。
更に介護保険やスポーツ施設の管理などの業務は「一部事務組合」という組織に移管することから、
「大阪府」「特別4区」「一部事業組合」の3重行政になってしまうことも危惧されてしまいます。
質問者:
本当に「利権」以外にやろうとする意味が解らなくなってきますね……。
筆者:
それも区議会を新しく4つ運用する場合には、市議会1つと比べて余計に予算が必要になってしまいます。
特に初期費用として数百億円規模の支出が必要なんですね。
しかも、当初は年間4000億円の無駄が「大阪都構想」で解消されるとのことでしたが、その後の大阪市の調べによると、年間1億円程度の無駄の解消でしかないことが分かっています。
費用面で回収するためにはつまり何百年もかかってしまうのです。
本当に大阪市に住んでいる人にとって何のメリットも無いこの「大阪都構想」計画は、
「維新の良いところゴリ押し」によって、
大阪市の住民投票がほとんど5分まで持ち込まれたという本当に恐ろしい事の具現化だと思います。
質問者:
「良いところ」だけを聞いては本当にいけないということが解りますね……。
筆者:
これを仮に政権を維新の会が奪取して国レベルでやられるとなると本当にゾッとしてきますね。
そうなった際には悪いところを伝えたいとは思いますけど……大多数がなびく流れを止められるのは至難の業です。
しっかりと数字ベースで見ていく必要がありますが、メディアをコントロールされると、僕のように“マニア”みたいにして調べていかないと到達できない可能性がありますね。
国民の皆さんが僕のように時間があるわけでは無いと思うので、本当にメディアの報道がどうにかならないのかな? と思ってしまいます。
質問者:
23年にあった出来事で言いますと原子力処理水の排出や辺野古移設についてが「情報を絞って世論捜査をする」出来事でしたね……。
筆者:
維新の会が政権を取ればそれが加速する可能性がありますね。
次に、今一番“ホット”な話題である「2025大阪万博」の問題点についてみていこうと思います。




