④―2 下の人“だけ”「身を切る改革」をする維新の構造
筆者:
④では公務員についてみていきましたが、
今度は維新の会のメインのフレーズの一つである「身を切る改革」の実情を見ていきたいと思います。
「身を切る改革」と言う言葉のイメージからどういうことを連想されますか?
質問者:
私の中では「自らの給料を下げてでも国民に奉仕をする」と言った感じのことだと思っていましたが……。
筆者:
僕もそういうイメージを持っていた時代がありました。
しかし残念ながら実情は全く異なるんです。身を切っているのは末端の公務員と議員だけで「最高幹部はウハウハ」と言うのが分かっています。
質問者:
何なんですかそれは……。
筆者:
まず、現代表の馬場伸幸氏には社会福祉法人の乗っ取り疑惑があります。
馬場代表は23年6月に「ドレミ福祉会」の理事長に就任しているのですが、
馬場氏が同法人の設立者である高齢女性の認知機能の低下を把握しながら成年後見制度を利用することもなく、自筆証書遺言を書かせたり任意の財産管理契約をさせていたとなどを「週刊文春」(文藝春秋)が報道しています。
しかもこの件について明確な弁明は無く、特に追及もされないので平然と今日まで問題なくやれているわけです。
質問者:
その場しのぎをすれば逃げ切れちゃうのは問題ですね……。
筆者:
これは馬場氏のみがお金に対して執着しているのではなく、「組織的な伝統」として聞こえだけよくお金を取っている傾向にあるようです。
前代表である松井一郎氏は「自身の退職金カット」と高らかに宣言されていましたが、
『退職金をなくす代わりに、無くした分の1200万円を48カ月(1期4年)で割って、現行の130万円に上乗せ。給料は、逆に約20万円アップし、150万円になる。その上、給料をもとに算出されるボーナスも年間100万円程増えることになる。』
とデイリー新潮15年11月27日の記事では報道されています。
質問者:
退職金はカットしたけど給料が増えたら何の意味も無いですね……。
筆者:
23年7月に話題になった「松井橋下アソシエイツ」というものがあります。
「ともに大阪府知事・大阪市長・国政政党代表を歴任してきた松井一郎・橋下徹と一線で実務を行ってきたプロフェッショナルを中心とするチームが、その経験・知識・人脈を活かして、貴社が必要とする行政組織、関係企業とのアクセス・調整をスムーズにし、貴社の事業を円滑に進めるサポートをいたします」
と当時のサイトには書いてありました。
これは良く言えばコンサルタント、悪く言えば、斡旋・口利きのために斡旋利得罪にあたる可能性もあったようです。
このように代表、元代表は身を切る改革どころではなく、他の政治家と同様に「お金が欲しい」と言えるのです。
質問者:
それで公務員が身を切らなくちゃいけないだなんて本当に笑えませんね……。
筆者:
しかも先述の通り身分の低い公務員に対しては非正規労働化して給与を安く抑えています。
11月に行われた阪神オリックスの優勝パレードにおいては兵庫県は休日出勤待遇だったのに対して、同じ業務を行っているにもかかわらず大阪府と大阪市に関してはボランティアでした。
そして大阪府知事と市長は「公務」だったらしいので本当に笑えません。
このように“身を切る改革”と言うのは下層の公務員を無給労働させ、自身は陰でお金を取っているというのが実情なのです。
質問者:
本当に酷い話でしたね……。
筆者:
僕は無用な公務員はデジタル社会で減らしていくべきだと思いますが、
結局のところ人員をアウトソーシングして人件費を削減するだけなら意味がありません。
隠れ孫請けなどで住民の個人情報が中国に情報が流出したりするリスクもありますからね。
質問者:
確かに安かろう悪かろうと言いますからね……。
筆者:
また、議員報酬をカットする! と声高に叫んでいますが予算の分母からしたら些細な金額です。
優秀な人材が集まらなくなるリスクもありますし、それより報酬に見合った責任を問うシステムが大事だと思いますね。
実際にここまで見てきた「我田引水」の様相も末端の議員に関しては「違う」ということを見逃してはいけません。
質問者:
それを主張して当選したにしろ、全体の報酬を下げていったらなり手がいなくなりますよね……。
筆者:
実際に23年の統一地方選挙では348選挙区で定数を超える候補者がなく、4人に1人にあたる565人が投票を経ずに当選、
町村長選は70の56%で無投票当選となっています。
現状ですらこの悲惨な状況なので給料が下がってしまえばもっとやりたい人がいなくなるでしょうね。
それよりも問題は責任の所在を明らかにすること、報酬を高くしても、国民が追求し給料の返還、解任させる制度があれば問題ないと思うんですよね。
それが無いから国民が不満を貯めているのだと思います。
質問者:
今は国会議員もなっちゃえば国民側から辞めさせる手立てがありませんからね……。
10月には企業・団体献金の受け取りを全面的に禁止する党規約改正案を了承したという話があったのですがそれについてはどうなんですか?
筆者:
20年10月に旧村上ファンドの活動で知られる村上世彰氏が維新の会本部に2000万円、馬場伸幸幹事長(当時)の政党支部に150万円を寄付していたことが分かっています。
社長が寄付してしまえば全く意味がありません。完全に禁止することが必要です。
党に対する寄付はなくとも維新の会が打ち出した政策に対して寄付をすることは可能になっている。阪神・オリックスパレードのクラウドファンディング5億円のうち4億円以上は企業寄付となっています。
政策における「クラウドファンディング」と言う名の寄付はと言う抜け穴があれば全く無意味なものになるのです。
週刊文春12月7日の記事ではこれら献金企業が続々と万博案件を受注させていっているということも分かっています。
こうしたクラウドファンディングを規制しろとは思いませんが、匿名性を持たせて返礼品なども無くさなければ政治が歪んでいってしまいます。
質問者:
確かにこれでは全く意味がありませんね……。
しかし世間一般的には「身を切る改革」の評判はとてもいいように思えるのですが……。
筆者:
もしかすると「大阪のおばちゃん」の節約精神の琴線に触れた可能性がありますね(笑)。
ただ、「身を切る改革」と言うフレーズで選挙に勝ちやすくなる手段であって大阪府民は豊かになっていないという事実から目を背けてはいけないでしょう。
地方政府は中央政府と違って通貨発行権が無いので事情は異なるのですが、それにしても公的支出の黒字は住民を苦しめて搾取していることに他なりません。
質問者:
②や④などの話を見てもその弊害は明らかですからね……。
筆者:
しかも党トップに関しては全く身を切っていないのですから本当に笑えません。
これが「身を切る改革がさも良い事」のように広まっているのは維新の会のメディア戦略が大成功していると言って良いでしょうね。
質問者:
事実をもっと広げていく必要がありますね……。
筆者:
現地メディアも”維新礼賛一色”のようなので、マスコミは本当に罪深いと思います。
ここまでが維新の「実績」です。
では次に、維新が「狙っている政策」の問題点についてみていきましょう。