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4/11

④ パソナが大阪を解体している

筆者:

 さて、大阪においては「公務員の外注」というのが全国に先駆けて行われています。


 その代表的な外注請負会社がパソナです。


パソナは「多様な働き方」というお題目の下で正社員カットを断行しました。


このパソナと維新の会というのは結党当時から蜜月の関係でして、橋下氏が維新の会を立ち上げ、衆議院選挙に打って出た2012年に、当時のパソナ会長だった竹中平蔵氏は維新の会立候補者選定委員の委員長になっています。


その見返りとして大阪府や大阪市は職員を大幅に削減しましたが、その穴埋めとしてパソナに大阪における行政の窓口業務を一手に請け負って業績を拡大していきました。


保健所を含む衛生行政職員数は、全国で15万9000人から13万5000人と15・4%削減されましたが、大阪では突出しており、24・1%も削減されています。


さらに、大阪府と大阪市は、市立病院や公衆衛生研究所の統廃合、病床削減を推進してきました。


こうした過剰な医療公務従事者の削減がコロナによる医療逼迫に拍車をかけた結果、助かる命も助からなかった可能性があります。

人口100万人あたりの死亡者は、2020年の大阪は346・6人と断トツでワーストだったことから見ても分かります。



質問者:

 竹中氏とは結党当時からの関係だったんですね……。


それにしてもコロナにおいても弊害ができているということですか……。



筆者:

 保健所の人員数が医療インフラの大きな要因だというのが海外のデータでもあるようですからね。


 大阪都とパソナの癒着の象徴としては、2020年までの大阪市では見本となる失業者向け履歴書見本が「パソナ太郎」になっていたようです。


 失業したらパソナに就職しろというマインドコントロールもあったと思います。


こうして、正社員が減り非正規雇用ばかりが溢れる、


「非正規しか選択肢が無い働き方」


という状況が②で確認した通りの大阪府の世帯当たりの所得の減少に繋がりました。



質問者:

 あの数字は衝撃的でしたね。むしろ大阪府の経済は良いほうだと思っていましたから……。



筆者:

 まぁ、人口が多い分GDPで見たら上位ですが、世帯あたりの所得が下がっているのは致命的ですね。


 新型コロナウイルスの給付金でも酷いパソナの仕事ぶりが分かっています


 中山郁美市議は、2019年度決算特別委員会の総会質疑で、パソナなど特定企業と市との癒着を指摘。コロナ対策の10万円給付では、パソナに業務委託したものの、その「手伝い」に市職員が7局からのべ1095人も動員されていたことがわかりました。


中山市議は、公務員の営利企業への従事禁止などを定めた地方公務員法に違反すると追及し、


「パソナに7億円もの大金を渡したものの、まともに仕事ができず、その尻拭いを市職員にさせたということだ。市長とパソナの許しがたい癒着であり、市長は非を認め、同社に委託費返還を求めるべきだ」


と迫りました。


それに対し、市長は、「契約は適正なものであり返還は求めない」と開き直りました。



質問者:

 外注したのに結局、市役所職員がやるだなんて意味不明ですね……。



筆者:

 基本的には公務員も正社員が責任をもって情報を管理する必要がありますが、責任感も無いのでしょう。


 自治体が窓口業務をアウトソーシングすればするほど、本来理解しておかないといけない自治体職員の理解が不十分となり、その隙をついて、横領、個人情報の流出の危険性があるということを忘れてはいけません。


 実際にマイナンバー情報を管理していた「SAY企画」(現在は廃業)が、禁止されている再委託を中国業者に行っており、

500万件が中国の会社に流出したことが2018年には発覚しています。

 このように住民の情報管理をアウトソーシングや外部委託することは大きなリスクになるのです。

 関与する団体や人間が増える可能性が出てきますからね。



質問者:

 責任を持てるような人間はやはり日本人の正社員ですよね……。



筆者:

 勿論、日本人の正規公務員と言えど悪いことをする方は一定数いると思うのですが、管理している人間が増えれば増えるほど流出リスクは上がっていきますからね。


 こうした待遇の悪さや様々な問題を受けて2020年4月からこうした非正規の公務員に対して救済のために会計年度任用職員制度がスタートしました。


会計年度任用職員制度に変わったことで、年次有給休暇制度の利便性が向上し、利用できる特別休暇も増えました。



質問者:

 それは良い事ではありませんか?



筆者:

大阪府でも会計年度任用職員はかなり増えたようです。


しかし、感染症による病気休暇や短期の介護休暇の場合は、給料は出ますが、休暇期間中の1時間単価が減額されてしまいます。


産前産後、授乳時間の特別休暇を取得することはできますが、残念ながら会計年度任用職員は無給です。

正規職員であれば、有給休暇として休むことができます。


自治労連によりますと


『マスメディアが当初、正規・非正規の格差を埋めるのが有期パート法「非正規公務員にボーナス支給」と報道したことにより、大幅な収入増への期待が私たちのなかで高まったものの、実際には月額報酬を引き下げ、その減らした分を期末手当や地域手当に充ててしまい、ほとんどの場合一時金に見合った2・6か月分(2020年人事院勧告以前の期末手当)を年収に上乗せさせるには至りませんでした。


これが「期末手当などの手当の支給が可能な制度に見直し」としたものの中身であり、私たちが改善となっていないとする理由です。


年度をまたいで引き続き働いているにも関わらず、2020年4月からは会計年度任用職員に「任用が変わった」として、一時金の算出基準が前年12月1日から6月1日までの6カ月分ではなく、新採同様4月1日から6月1日までのわずか2カ月分に、夏の期末手当を減額したケースも発生しています。』


 と、ボーナスの上でかなり差別的な待遇がなされていることが解っています。



質問者:

 いくら、正規の試験を経ていないとはいえ流石に働いた時間分ぐらいのボーナスは欲しいですよね……。



筆者:

 フルタイム会計年度任用職員の方が勤務時間が多く、給料も多いんですが、それでも年収は200万円程度しかもらえません。


 「同一労働同一賃金」はどこへ行ってしまったのか? という感じです。

 

また、契約の更新回数は2回までと上限が決まっているため、1度会計年度任用職員と雇用されると最初の1年間+更新2回で合計3年間までとなっています。


 民間企業においては、労働契約法により、パート、アルバイト、派遣、契約社員などの有期労働契約で働いている人が同じ職場で雇用契約を更新されて契約期間が5年を超えた場合に無期雇用になれる、「5年ルール」「無期転換ルール」というものがあります。


しかし、会計年度任用職員は残念ながら非正規であったとしても「公務員」のため、労働契約法が適用されません。


 部署によっては、給料も待遇も全く違いますが、会計年度任用職員であっても業務量と責任は正規職員と全く同じ場合があります。


 こういうモチベーションも上がらない上に過酷な労働環境の人たちにそんなに「責任を持て」というのが難しいと思います。


 会計年度任用職員というのは公務員と民間の「悪い所取り」という惨事なのです。



質問者:

 えー、ボーナスとかは正規の公務員より下なのにもかかわらず、正社員になる制度も無いわけなんですか……。



筆者:

 結局のところ、効率化ではなくただの“減額”と言えます。


 本来であれば、正社員公務員で経るはずの試験などを受けさせて正社員公務員とするのが妥当いうというところでしょうか?


 いずれにせよ、これでは正社員の可能性もゼロのために非正規の公務員のモチベーションが上がらないのでミスが増えていき責任感の無い仕事になってしまうのはやむを得ない事だと思います。


そして、

「こんなに大変な仕事だと思っていなかった」

「こんな低賃金では仕事に見合っていない」


 ということで日本人のなり手が無くなります。

 基本的には 公務員=地域住民 ですから、「公務員削減」はそのまま地域経済の衰退に直結します。


 更に人が集まらなくなると、


「足りないなら外国人を入れよう」


というふざけた発想になって日本から情報は流出して国民生活も悪化していくのです。



質問者:

 実際に今も窓口業務だけなら役所でも数は少ないですが、外国人の方がいるそうですよね……。



筆者:

 日本の公務員はそもそも少ないんです。

 2015年のデータでは、OECD加盟国平均が18.06%なのに対し、日本は5.94%と3分の1以下です。


 もっと公務員の数を増やして待遇を改善し、それを国債で担保する。

それが、日本国民全体を豊かにする方法なのです。



質問者:

 なんだか全体的にセコイ感じがしますよね……。



筆者:

 日本人がサボっているから給与が少ないのでは無く、純粋に


「給与体系とその評価方法が終わっている」


 から、日本人が貧困化しているのです。


 このパソナなどの人材派遣会社や公務員の非正規化・アウトソーシング化が、

日本人の富を吸い取っていると言っても過言ではないでしょう。


 次にこのことと関連する「身を切る改革」の欺瞞についてみていこうと思います。

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