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松浦達の鑑識知識で及川の相棒の手掛かりが掴めた…四郎がヒューマンの割りにしては中々やるじゃないかと言った。

「しかしここから千葉の船橋は距離がありますよね。

 もっと近くに張り込み場所など作らないととても監視が難しいんじゃないですか?」


インターコムから杉下の声が聞こえた。


「うん、その辺りは俺達も手は打っているんだ。

 一応24時間の監視はつけてあるけどね。

 ただ、奴らが急に犯行に及ぶという時は死霊屋敷から急行しないといけないんだけど…。」

「監視…誰かほかのメンバーが張り付いているんですか?」

「そうだけど、着いてから話すよ。」


俺達はアナザーの居場所である西船橋駅から少しの距離にある奴のアパートに着いた。

用心に少し離れた場所に車を止めた。

今回のアナザーの人間名は及川祐おいかわ たすく見た目は40代に差し掛かったところだろうか、普段は派遣で働いている。

優秀な奴らしく、パン工場の材料の搬入在庫管理などをしている。

今奴は工場に働きに行っているだろう。


スケベヲタクファンタースマの1人がやって来て俺達のレガシィの窓を叩いた。

後ろに停まっているカムリでも見えたのだろう。

インターコムから杉下のヒッ!という声が漏れた。


俺は窓を開けてファンタースマに声をかけた。


「ご苦労、やつの相方の手掛かりはどうだ?」

「彩斗将軍、及川は働きに行っています。

 張り込みに付いてから何日も経ちますが、やつの仲間はまだ姿を見かけません。

 今、B班の奴らが奴の働いている工場に行って監視していますが、職場でもそれらしい接触は今のところありませんね。」

「うん、判った、交代までもう少しだな。

 頑張ってくれ。」

「イェッサ―!彩斗将軍!」


ファンタースマが敬礼をして持ち場に戻った。

インターコムから杉下の声が聞こえた。


「吉岡警視正…吉岡さん。

 今のあれは…。」

「うん、杉下君も『ひだまり』で見ただろう?

 あそこに巣くうスケベヲタクファンタースマ軍団から選抜したメンバーを4人常に交代で張り付かせているんだ。」


そう、俺達はスケベヲタクファンタースマ軍団から選抜した者達で及川の監視をしているA,Bの班に分けてそれぞれ2名ずつ及川の家と及川が出かける先に張り付いて探っているが、今の所及川の相棒のアナザーが誰なのか判明していない。

監視に付いたスケベヲタクファンタースマ達は『ひだまり』に帰ると好きなウェイトレスのスカートを優先席で拝めるという特典が有るので希望者には事欠かない。


「彩斗、今日は人数もいるから及川の部屋を漁って見るか?」

「そうだね四郎。」


3人のASSTF隊員のうち、松浦は刑事1課での捜査経験が長く、岬と共に一時期鑑識課にもいたと言う事だし、杉下も所轄で刑事をしていたという事もある。

ここは捜査のプロの目で及川の部屋を見てもらおう。

何か及川の相棒のアナザーの手掛かりが掴めるかもしれない。


俺達は及川の部屋に侵入して相棒の手掛かりを探す事にした。

スケベヲタクファンタースマが部屋に入る時は侵入者が入ると切れる糸が張ってあるので

注意するように言われた。

なるほど、用心深い奴なんだろうな。


俺達は少し周りを観察し、アパートを出入りしたり付近を歩く人などが少なくなった頃を見計らってはなちゃんを抱いて及川のアパートに向かった。

余り固まって行動すると目立つので2人ずつに分かれて行動した。


「及川は用心深い奴で、まず入り口に糸を張って侵入者が入ると判るようにしてある。

 部屋の中にもトラップが仕掛けられているかも知れないから捜索は慎重にするように。」


俺が3人に伝え2階の及川の部屋に向かった。

はなちゃんが手をかざして念動でドアの鍵を開けた。

やはり、明石の部屋に忍び込んだ時の様に床から15センチの所に糸が張ってあった。

用心してまたぐように3人に伝えた。

一応スケベヲタクファンタースマに誰かが階段を上がってきたらすぐに伝えるように指示をして、俺達は靴の裏を拭き白い手袋をはめて部屋に侵入した。


最期に入った岬が慎重にドアを閉めて鍵を掛けた。

さて、3人のお手並み拝見だな。

俺達は6畳が2つ、6畳のキッチンがあり、古いがそこそこに広いアパートの部屋を手分けして捜索する事にした。

及川の部屋は物が少なかった。

余り音を立てない様に部屋を捜索してゆく。


「ふぅ~中々これと言ったものは…せめて指紋を採取できれば…。」

「岬、痕跡が残ってしまうからなかなかそうもいかないな。」

「松浦警部、せめて数か所、手が良く擦れる所にテープで採取できるかどうかやって見ますか?」

「それは良いですね!

 及川以外の指紋が、複数の指紋が取れれば相棒の事を絞り込めるかもしれないですよ。」


3人は何やら話し込んで、杉下がカムリから簡単な鑑識キットを持って来て、岬と松浦がビニールテープで指紋が付きそうな所に張り付け、指紋が確認できるものをメモを書いた紙と共に袋に入れて行く。


「うきゃきゃ!

 まるで刑事ドラマみたいじゃの!」


はなちゃんがはしゃいだ声を上げた。

そう、この3人はともかく刑事なのだから、俺達とは毛色が違う捜査方法を俺と四郎は感心して見ながら奴の部屋を漁った。


しかし、カレンダーに行動計画が書かれても無く、パソコンの類も無い、押し入れにはあまり荷物は無く天井裏も探ったがこれと言った及川の相棒の情報も犯行スケジュールなどを記した物も無かった。


「ふぅ~かなり用心深い奴なんだろうな。

 手掛かりが掴めんぞ。」


四郎がぼやいた

 

「そうだね四郎、何か見つからないかな~?」


俺と四郎をしり目に3人が次々と捜査を進めていた。


「吉岡警視正…吉岡さん、ちょっと来てください。」


風呂場にいた岬が俺達を呼んだ。

岬はピンセットで排水溝から引き出したと思われるゴミを摘まみ上げている。


「及川の見た目を髪の長さとか判ります?」

「ああ、このまえ、スマホで遠くからだけど撮影したよ。

 確か髪は黒髪で短かったな。」


俺はスマホに撮った及川の画像を岬に見せた。


「なるほど…じゃあ、この髪の毛は及川の物じゃないですね。

 共犯者…及川の相棒の物かも知れませんよ。」


岬がピンセットでつまみ上げたゴミに交じり、長い髪の毛が数本あった。

松浦がルーペを出して髪の毛の毛根部分を見つめた。


「毛根の具合を見ると…私の経験で言うと…ここ数か月以内に抜けたものだな。」

「松浦警部、私もそう思います。

 詳しく調べないと判りませんが、恐らく女性の物かと…少し染めてありますがこれは若い女性の物と思われます。」

「それは本当に?

 じゃあ、及川の相棒は若い女性と言うことかな?」


俺が尋ねると岬がピンセットで摘まんだ髪の毛を見つめながら答えた。


「しっかり調べないと断定できませんが…その可能性は高いですね。」


そう言うと岬は髪の毛をビニール袋に入れた。

とにかく一歩前進なのかも知れない。


その後俺達は及川の部屋の中を捜索したが、怪しいものは特に及川の相棒の手掛かりは見当たらなかった。

注意して現状回復して俺達は部屋を出た。


「部屋の中はそんなものでしょうね。

 後は及川が乗っている車…そこに何かあると考えるのが妥当だと…。」


松浦の言葉に俺達は頷いた。

及川は工場までは自転車通勤だ。

アパートに面した駐車場に及川の青のハイエースが停まっていた。

ガラスにはスモークが張ってあり中が良く見えないようにしてある。

喜朗おじのハイエースと同じ事をしている。

あやしい。


松浦達はカムリに着替えを用意していた。

作業服。

これなら何かの作業、車の整備などの作業と言っても通るだろう。


俺達は周りに注意を払いながら及川のハイエースに近づいた。

はなちゃんがハイエースを調べ、警報装置などが無い事を確かめると車のスライドドアの鍵を開けた。


近くの他の車を見ていた松浦達が検査用のバッグを抱えて素早くハイエースに乗り込んだ。


「ここじゃの!

 ここで及川は殺しをしているじゃの!」

「うむ、間違い無いな。

 死臭を感じるぞ。

 それも一人や二人で無く何十人も殺しているな…。」


松浦達はスプレーを取り出してルミノール反応試薬を車内のあちこちに振りかけ、ブラックライトで照らした。


「しかし、血痕が見当たらないな…。」


杉下がビニールテープの筒を見て、それにルミノール試薬を吹き付けた。


「あ、これを見てください!」


俺達は杉下に近寄るとビニールの筒の端に血痕の反応が現れた。


「成る程、事前に車の中にこのビニールを貼り付けて犯行を犯すという事か…。

 血を隠すためにな…だがどこかに消し忘れや汚れが残っているものさ。」


松浦がそう言って折りたたみいすの足の部分などを詳しく調べろと岬に命じた。


やはり所々にほんの少しだがルミノール反応が現れた。


「ビニールだけじゃなく漂白剤などできれいに掃除までしています。

 しかしこういう隅っこの所まで奇麗に出来なかったみたいですね。」


成る程椅子のねじの部分の隙間などに血痕がこびりついていた。

松浦達はナイフで血痕の部分をこそぎ落として袋に入れた。

後で人血かどうか調べると言う事だ。


「ヒューマンの奴らもなかなかやるじゃないか。」


四郎が俺の耳に口を近づけて小声で言った。

そして、助手席の下に押し込まれたバッグを見つけ、それを引き出して中を見ると女性の物と思われる服が一式、そして犬用に首輪とリードが入っていた。


「犬の首輪とリード?」

「なんでしょうね?」


俺が言い、岬が答えながらバッグの中を写メで取り、そして服を丁寧に取り出した。

写メを取ったのは服の入り具合が違っていたりすると捜査を感づかれる恐れがあるから事前に入っていた通りに服を戻すという事だ。


そして、岬と松浦が服に付いていた長い髪の毛を見つけた。


「これはもしかして、及川の排水溝にあった髪の毛と同一人物の物かも知れないな。」


そう言って岬がピンセットでつまんだ髪の毛を袋に入れた。


俺達は捜査を終わらせて撤収した。


松浦達は科捜研に髪の毛や血痕を持ち込み、採取した指紋に該当する者がいるかどうか調べると言って別行動をとった。


「四郎、確かにあいつらなかなかやるかもね。」


俺も四郎の言葉通り、本格的な捜査をする3人を見直した。


「刑事ドラマを生で見た気分じゃの!

 得した感じじゃの!」


はなちゃんが無邪気な声を上げた。

感覚と実力でアナザー討伐をしてきた俺達。

脳筋ガチガチの仕事と違う捜査と言う奴を見て、少し考え方を変えるべきかな?とも思った。

ともかくあの3人が居なければ排水溝の髪の毛や血痕についての客観的な証拠を見つける事は出来ないだろうし。

ハイエースの中の髪の毛が排水口のものと一致すればかなり及川の相棒に近づく事が出来るだろう。

あとはどうやって及川と相棒が連絡を取っているかを調べないと。

一応及川のスマホの番号などはスケベヲタクファンタースマが調べて岩井テレサの組織で通話記録を調べたが、仕事場との連絡以外は使われていなかった事が判った。

ファンタースマ達が及川の工場に入り込んで及川を監視したが、何匹かのアナザーはいるが及川とは全然接触していないとの報告がある。

…ではどうやって及川は相棒と連絡を取っているのか…。








続く



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