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俺達は松浦達と討伐対象のアナザーの情報収集に出かけた…今一松浦達はアナザー討伐の危険について判っていないようで少し不安だった。

アナザーの情報収集前に松浦達が支給された車、やはり覆面パトカー仕様にされている、トヨタ・カムリでやって来た。


暖炉の間で打ち合わせを行った。

まず俺が今回討伐対象のアナザーの概略を3人に説明した。


「今回のターゲットは狩場を特に決めていないようで、関東の雑木林と住宅街が混在するような所で犯行を行っている。

 目撃者や殺された遺体、現場に多量の血痕などを残さない。

 警察では事件をまだ把握していないし、恐らく犠牲者の何人かが失踪者として届け出は出ていると思うけど…。」


岬が手を上げた。


「あの、吉岡警視正。」


呼ばれ慣れていない警視正などと言われると尻がこそばゆい。


「あの、岬さん、吉岡と呼んでもらえば良いです。」

「はい、判りました。

 それでは吉岡さん、どうしてその…アナザーが殺人を犯していると判ったのですか?」


はなちゃんが手を上げて説明した。

明石から聞いてはいたが、クマのぬいぐるみを着たビクスドールが話すのを初めて聞いた3人の顔が引きつった。


「わらわが見つけたじゃの!

 殺人を犯して満足げな2匹のアナザーをな。

 ある駅で片割れを降ろしたんだと思うが、そいつが自宅まで帰る所を丁度すれ違い、後を追って居場所を突き止めたじゃの!」

「え、そのはな…ちゃんが感じただけですか?」


はなちゃんが手を上げた。


「はなちゃんなどと気安く呼ぶな。

 わらわは一応警察庁警視じゃの!」


はなちゃんがぬいぐるみの中から警察庁特別捜査官、藤原はな警視の身分証を引っ張りだした。

初めて身分証を提示するチャンスが来たのではなちゃんは鼻高々に言い放った。

3人は立ち上がりはなちゃんに敬礼をした。


「これは失礼いたしました!

 藤原警視殿!」

「うきゃきゃきゃ!判れば宜しい。」


はなちゃんが答礼すると3人はまた座った。

俺も四郎もこのやり取りに笑いをこらえていた。


「まぁ、はなちゃんだけでなくわれも確認したぞ、われ達アナザーは数日以内に殺人を犯しているアナザーは近くに寄ればハッキリと判るからな。」


松浦がメモを片手に四郎に尋ねた。


「それでは、四郎さん、確実にそいつは殺人を犯していると…。」

「松浦君、われも一応警察庁警視なんだが、おっと敬礼は要らんぞ。」


四郎が身分証を掲示した。


「われは正式には北斗拳四郎警視だ。

 北斗と呼んでくれ。」

「は!北斗警視殿!」


やはり、はなちゃんも四郎も俺と同じでこの3人と名前で呼び合う仲にはなっていないと思っているようだった。


3人はしばらく顔を見合わせていた。

3人とも『北斗の拳』は知っているだろう、まさか北斗拳四郎などと言う本名を持つ者が居ようとは思わなかったようだ。


「奴は不定期にだが狩りをしているのは確実だ。

 だが、その手口がいまいち判らん。

 問答無用で奴の家に急襲を掛けて討伐も出来るのだが、そうすればいまだに詳細が判らない奴の相棒を取り逃がしてしまうしな。

 犯行現場を押さえるかでもしないと今の所まだ討伐に踏み切れんのだ。」


俺は四郎の後を継いで説明した。


「俺達はあくまでも客観的な証拠を必要として初めて討伐に踏み切るんだ。

 ワイバーンメンバーの中には法律を勉強している者もいるんだ。

 だから、冤罪だけは絶対に許せない。

 君たちが過去にやった失敗の様に無実の人を投獄して真犯人を取り逃がすなんて2重の重い罪を犯す訳にはいかないんだよ。

 俺達はある意味で君たちよりも厳格な基準で討伐をしている事は判って欲しいんだけど。

 決して血に狂った仕事人集団じゃないって事だ。」


3人は俺の言葉を聞いて居心地悪そうに身じろぎした。

それはそうだろうな、警察は今までかなりの冤罪事件を引き起こして無実の人相手に裁判を長引かせて、証拠なども劣化させ、その間に真犯人を何人も取り逃がしているのだから。

岬が手を上げた。


「あの…吉岡警視正…吉岡さん。

 その討伐の対象は確実に2匹なんですか?」

「岬巡査部長、その通りじゃの!

 車で家路につく奴とすれ違った時に確実に奴と同じ思念を持ったアナザーが1匹電車で移動して遠ざかるのをわらわが感知したからの。

 奴らは2匹ペアで狩りをしているじゃの。」


俺ははなちゃんの能力の追加説明をした。


「あのね、はなちゃんは…。」

「彩斗、今は藤原警視と呼べじゃの!」


あ~面倒くさい。

はなちゃんは藤原警視と呼ばれてビシッ!と敬礼されて少し舞い上がってるようだ。

1026歳の割にはこの辺りは7~8歳の子供だ。


「藤原警視、失礼したね。」

「判れば宜しい。」

「ゴホン…はなち…藤原警視はアナザーをある程度離れたところでも感知できるんだよ。

 アナザーがどれほど気配を消せるかにもよるけど、よほどの奴じゃ無ければ大体半径4キロ以内ならその存在が判る。」


3人が感心した表情ではなちゃんを見、はなちゃんは得意げに顎を上げた。


「そう言う訳で今日はその主犯と思われる奴の家を監視して可能なら奴の家に侵入して証拠を収集するつもりだ。

 奴の車も調べて次の犯行をいつするつもりか、相棒の奴の連絡先なんかが判ればなお良いと思う。」

「あの、吉岡警視正。」

「なんだい杉下巡査部長。

 普通に吉岡さんで良いってば。」

「あの…悪鬼、アナザーの凶悪さは判っていますがその…殺さずに逮捕などは無理なんですか?」


杉下の言葉に松浦と岬も小さく頷いた。


「一応最初は降伏を呼び掛けるよ。

 俺達も全く問答無用に討伐する訳じゃない。

 しかし、今まで完全に行動不能にした奴以外、降伏の呼びかけに応じたアナザーは1匹もいなかったし、事態が急を要していて降伏を呼び掛ける時間が無かった場合もある。」


四郎が後を継いだ。


「うむ、アナザーを生け捕りにする事はヒューマンなどよりもずっと難しいのだ。

 アナザーの回復力はとても高いからな、腕を斬り落とされても傷口に斬り落とされた腕を付ければそう時間をかけることなくまたくっつくぞ。

 それに人間以外の生き物に変化もするしな…最近やっと岩井テレサの組織で変化するのを阻止する微弱電流を流しつつ、アナザーの腕力でもちょっとやそっとで壊せない手錠を作る事が出来たが…アナザーが自分でどちらかの腕を切り離す覚悟が有れば、また指を何本か引き千切れる覚悟があればその手錠でも難なく外せるんだ。

 奴らは直ぐ再生するからな。」


3人は黙り込んでしまった。


「それにだ、仮にうまく捕まえる事が、ああ、逮捕と言うのか、それが出来てもお前達ヒューマンの法律でアナザーを裁けるのか?

 普通の刑務所では…いやいや、ごく厳重な刑務所でも奴らを閉じ込める事は難しいし、アナザーは不老不死だからな。

 死刑にすると言っても首をくくった程度では死なんぞ。

 ギロチンを復活させるか?」


四郎の言葉に俺が続けて言った。

ヒューマンがアナザー討伐をする事がどれほど危険な事か知って欲しかった。


「そう言う訳で俺達は討伐を前提で動くんだ、アナザー相手に下手に油断すると…死ぬより酷い事を体験する羽目になるかも知れないからね。

 君達も絶対に油断しない様に。

 昨日見せた俺達のSIGとナイフのコンビネーションを思い出して欲しいけど、あれでもアナザーを完全に始末できたとか言えないんだよ。

 もう動かなくなったからと油断すると回復したアナザーが後ろから君達を引き裂くかも知れない。

 心臓を完全に再生不可能に破壊するか、頭部を切り離して胴体が完全に動かなくするか…そして古い奴は灰になり新しい奴は大抵腐乱死体になるまで安心できないんだ。」


松浦が頷いて俺に尋ねた。


「成る程、アナザー討伐が尋常で無く危険な事は判りました。

 肝に銘じます…ところで吉岡警視正はその…吉岡警視正はヒューマンですよね?

 今までどのくらいのその、アナザーを殺害したんですか?」


松浦の言葉に俺は考え込んだ。

正直に言って俺は始末した30匹を超えたところからスコアは数えていない。


「まぁ、40匹くらいは始末したと思うよ。」

「違うぞ彩斗、おぬしはもう、58匹のアナザーを始末しているじゃの!」

「はなちゃん、そんなに俺は始末している?」

「彩斗、最近はお前の忘れている記憶も遡って読めるようになったじゃの!

 間違いなくお前は58匹のアナザーを始末しているじゃの!」


はなちゃんの言葉に3人が感心した声を上げ、畏怖の目で俺を見た。


俺は3人に感心された事より、俺自身が58人、いや、58匹のアナザーを始末していた事に少し戸惑っていた。 

務めとは言え…なんだか。


そして俺達は松浦達が携行する武器の他にコンバットナイフ、SIGの予備の弾倉をもう2本持つようにさせた。

これで松浦達はSIGに装填されているのと他に予備弾倉合計4本、大振りなコンバットナイフを携帯する事になったが、まぁ、これでも気休めと言ったところだろう。


その後あまり目立たない様にと明石のレガシィを借りて俺と四郎とはなちゃん、トヨタカムリに松浦、杉下、岬が乗り込み。千葉の船橋にあるアナザーの家に向かった。







続く


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