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ASSTFの3人のスキルはまぁ…そう言えば俺達は昔話を良くするようになったな、たった1年の間の事なのに…。

準備体操が終わり、今日はユキも参加している。

ASSTFの実力を見てみたいと圭子さんも参加していた。


3人は初め快調に走っていたが、障害物が顔を出すコースに入るとみるみる息を切らせ汗をかいて遅れて行く。

俺達は先に行く訳にも行かず、少し速度を落として3人と並走した。


「彩斗…あの人達ASSTFの人達でしょ?」


軽く汗ばんだ程度のユキが俺の隣を走りながら小声で聞いて来た。


「うん、そうだよ。」


俺が小声で答えるとユキは不思議そうな顔をした。


「変ね、私でも軽く感じるコースなのに…。」


ユキが小声で答えた。

ユキは息も切らせていない。


そう、ワイバーンのメンバーでなく、ただ訓練に参加しているだけで俺達の中で一番戦闘スキルが低いユキよりも3人は遅かった。


「彩斗、あれじゃあね~。

 あの人達大丈夫?」


圭子さんが俺の横で渋い顔をし、3人を横目で見ながら呟いた。


「ま、まあね、どうなんだろう…。」


俺はそう答えるしか無かった。


その後、3人はひーひー言いながらもやっと完走した。

しかし時間は大幅に遅く、付き合った俺達も死霊屋敷に戻ってからかなりの数のスクワットをやる羽目になった。

一番年長の松浦がスクワットの途中で足が痙攣して動けなくなった。

杉下も岬もしばらくは何かに掴まらないと歩けないという体たらくだった。


俺達は、ユキも含めてやれやれと思った。

ダイニングにテーブルを追加して皆で朝食をとった。

3人は食欲を無くしたらしく、ゆっくりもそもそと食べている。


「あの…吉岡さん達はこんなトレーニング毎日やっているんですか…?」


岬が口に入れたサンドウィッチをコーヒーで流し込んでから尋ねた。


「ええ、討伐や何かの催しがある意外は毎日…なぁ皆。」


真鈴がサンドイッチをむしゃむしゃ頬張りながら言った。


「夜もトレーニングするし、2日に1回くらいで射撃練習もするわよ。

 コンビネーションプレイもね。」

「あ、栞菜は今日『ひだまり』のシフト無いから射撃練習を皆とやりたいですぅ~!」

「そうだな、栞菜は一人か少人数の練習が多かったからな。」


そう言う訳で休憩後に俺達は射撃訓練とコンビネーションプレイ、そしてピストルとナイフを使った訓練をやる事になった。

この3人を討伐に同行させるならぜひ射撃の腕前を見ておかねば。


3時間ほど時間が経ったのに、ガレージ地下の射撃ブースに立った3人は疲労が抜けていないようだ。

だが、草臥れたからと言って、質の悪いアナザーが見逃してくれるはずなど無い。


SIGの射撃訓練を始めた。

どうやら3人は笑ってしまうような程実戦的でない警察の射撃訓練と違ってきちんとコンバットシューティングは知っているようで少し安心したが、40口径の強烈な反動をまだ制御しきれていない岬のターゲットはあちこちに弾着が散っていた。

松浦と杉下はASSTFの基準では合格点らしいが俺達の基準からは程遠かった。


ユキでさえ、40口径の反動を見事に受け流しながら連射でほぼワンホールに打ち込めるというのに。


俺達の射撃スキルに驚く3人を野外の射撃場に連れ出した。

今度はSIGとナイフを使い、ヒューマンよりもはるかにタフで回復力が高いアナザー相手を想定した訓練を行う。


前にリリーが連れて来た小次郎、小三郎のスコルピオ、ヒューマンメンバーが俺達の前で披露して、俺達の度肝を抜いた射撃とナイフのコンビネーションプレイだ。


両手を上げて標的に背を向け、合図とともに振り返りマガジン全弾を標的に撃ち込む、その後銃口と視線を標的に向けたまま素早くマガジンを交換し、射撃を続けながら標的に突進してナイフを抜き、新たなマガジンの全弾を撃ち込んだ標的にナイフで致命部に深く切りつけるという内容だ。


スコルピオの基準では20メートル先の標的相手に2マガジン撃ち込みナイフで切りつけるまで6・5秒未満が合格でそれ以上のタイムだと再訓練コースに入れられる。


俺達は全員6・5秒未満をクリアしていて、それどころか6秒以内にほとんどのメンバーがクリアしている。

今まで一番遅い圭子さんでも5・7秒をクリア、ユキもこの前初めて6・5秒未満をクリアした。


俺達の射撃とナイフ攻撃のコンビネーションを見た3人は目を見開いて口をあんぐりと開けた。


「あの…吉岡さん…全員悪鬼…アナザーじゃないんですよね…?」


松浦がおずおずと尋ねた。


「そうだよ松浦警部。

 この中では俺とクラ、ユキはヒューマンだよ。

 他のヒューマンメンバーも全員基準をクリアしているけど。」


ともかくやってみようと言う事になった3人が俺達から色々注意を聞かされて大振りなボウイナイフを渡され射撃を始めた。


ユキを含めた俺達の様にフルオート射撃の様な連続音で無く。バン!バン!と間延びした射撃音、そして俺達には銃口も視線も的から外したおぼつかなく見えるマガジンチェンジの後での走りながらの射撃では何発かがマンターゲットから外れ、止めのナイフ攻撃も浅かったり場所がずれていて、とても致命傷とか言えない物だった。


そして、本来は3人とも失格なのだが一応タイムを計ったが、一番タイムが良かった杉下で11・1秒、松浦が14秒ジャスト、一番遅い岬は15・75秒だった。


次に、俺達は新型ヘルメットと防弾チョッキを付けてUMPサブマシンガンの更新で新たに更新されたIWRCサブマシンガンを手にして密集体形での、相互をカバーしながら反応射撃をする訓練を見せた。

密集して進む俺達の先を行く仲間の頭のすぐ横で的を撃つ、極めて危険な射撃方だが、誰も的を外さなかった。


一応最高のエリートと警察内部で自他ともに認められていた3人の捜査官の自信は粉々に吹き飛んだようだ。


「これでは…全然駄目ですね…俺達、もっともっと練習しないと…。」


杉下が茫然としながらも言った言葉に松浦も岬も深く頷いた事が収穫と言えば収穫なのだろうか。


そして、紙の棒を使った夜のナイフトレーニングでも、3人はコテンパンにやられ、今日は『みーちゃん』が休みで参加したユキにも一度も紙の棒を当てる事が出来ずに無様なダンスを踊らされた。

…それにしてもユキは短期間で強くなった物だ…。


しかし、流石に厳しい選抜を潜り抜いてASSTFの捜査官になっただけの事はあるのか、3人とも目の色を変えてふらふらになりながらも何度もナイフトレーニングを続けた。

3人ともゲロを吐いて床に這いつくばったが。

まぁ、並み以上の根性はあるのかも知れないな。


床を掃除した後で3人は紙の棒を持って隣のプレハブの宿舎に帰って行った。


「われはあの3人の根性は認めるが…どうだろうか?」


シャワーと夕食を済ませて暖炉の間に集まった俺達。

四郎がコーヒーを飲みながら呟いた。


「う~ん…まぁ、今回の討伐は恐らく2匹だからな…俺達が探りを入れる事に協力してもらって少し様子を見るか。」


明石が四郎に答えて皆が頷いた。


「まぁ、彩斗と真鈴の最初の頃よりもましかも知れんな。」


俺と真鈴を一から鍛えた四郎が苦笑を浮かべた。


「何よ四郎、私達あの時はずぶの素人だったからしょうがないじゃないのよ~。」


真鈴がふくれっ面になった。

確かに、死霊屋敷での初めてのトレーニングの時、俺と真鈴が軽いハイキングだと思っていた時から実は訓練が始まっていたあの頃が懐かしくもある。


「ふふ、まあ、そうだな…初めてここで訓練を始めた頃が懐かしいぞ。」


四郎が頷いた。

俺達は最近結構昔話をするようになったな…たった1年前の事なのに。

何か不吉な予感が走ったが、俺は慌てて頭を振り、不吉な想いを振り払ってコーヒーを飲んだ。


翌日も感心な事に3人は遅刻する事も無く朝のクロスカントリーに参加し、昨日よりは多少ましな時間で走り抜き、そして俺と四郎とはなちゃんと共に新たに見つけた質の悪いアナザーの情報収集に出かけた。






続く

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