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罪の告白〜アゲート、オニキス〜

~伯爵令嬢アゲート・ハシャス~


「アゲート・ハシャス、カルセドニーをどう思っていました?全て話して下さい。」


「カルセドニーは子供の頃から愚かで私の物は何でも欲しがったわ。

私はあの子の癇癪に付き合うのが面倒だったので欲しがるものを何でもあげておりました。」


そう、欲しがるものは全部あげた。


「貴女は態とどうでもいい物をカルセドニーに大事だと思わせあげていた。またカルセドニーに渡す時には誰かが見ている前でですね。」


何故?!マーサは全て知っていて司祭に告げたの?!


「はいかいいえで結構ですよ」


「···」


「答えないのは肯定と取ります。いいのですね。」


答えられない。私は妹からの我儘に耐えている姉だったのよ!


「神使様、無言は肯定と受け取ってもよろしいですか。」


神使様を盗み見ると皺や染みでかなり高齢に見えるが目は射抜くように私を見ていた。


神使様が頷かれ枢機卿が返事をした。


「アゲート、これからも返事をしなければ罪状が重くなる事を覚悟せよ。」


枢機卿の警告に背筋が寒くなる。


「アゲート、カルセドニーが我儘や癇癪をおこすと知っていて幼い頃から両親や他の人との会話に入って妹を気遣う優しい姉を演じてきたのですか?」


マーサ!!

あの女、司祭に何を言ったの!


「答えなければ罪状が重くなるだけです。」


「いつもそんな気持ちではありませんでした。」


聖玉が点滅しだした。

点滅は嘘をついた時になっていた!


「そうです!あの子を庇えば、あの子の為に謝れば、皆が私を我儘な妹に振り回される可哀想な姉と同情と尊敬で見てくれるから!」


私は泣きながら心の奥底にある真実をさらけ出した。


「それがカルセドニーを歪ませていっているとは思わなかったんですか?」


「知りません。カルセドニーの気持ちなんて!」


どうでも良かったもの。


「ジャスパーとカルセドニーが親密になるように誘導しましたか?」


「少しっ!いえ、少しじゃない!

ジャスパーは派手なのが好みと知ってたから地味な衣装と関心のない態度をしてカルセドニーに目を向けるようにしました!」


聖玉から手を離したい。

でもできない。手を離したら縛ってでも聖玉に触れさせられるだけよ。


「何故カルセドニーに目を向けさせたのですか?」


そんなの関係ないじゃない!


「アゲート、黙秘はーー」


「オニキスが好きだったからよ!

カルセドニーとジャスパーが不貞すればオニキスと一緒になれる。

周りも祝福してくれるから!!」


私だけじゃない。貴族はそうやって幸せを掴んでる。

食い物にされる方が馬鹿なのよ。


「カルセドニー殺害に関わっていましたか?」


「計画は薄々知っていました。あの日ジャスパーが来たと聞いて大きな声がしたので今日だったと思っただけです。」


「マーサ殺害は?」


「知りませんでした。」


あの女をカルセドニーと一緒に殺しておくべきだったわ。

そうすればこんな事にはならなかった!


「終了します。」


何もかもが終わった······




~侯爵令息オニキス・タリグ~




「オニキス、カルセドニーとアゲートとの関係を出会った頃からマーサ殺害まで全て話して下さい。」


今までの神義者、神判者の供述で些細な虚偽も聖玉が反応するとわかった。


舌を噛み死にたかったが、罪状が重くなり教会が調べた詳細な事実から、僕がどんな人間だったか白日のもとに晒される。


もうどうでもいい。


「出会った時からアゲートの方に惹かれていました。

我儘で自分勝手なカルセドニーの面倒を見ていていつも助ける優しい姉だと思い続けていたんです。

だからカルセドニーにアゲートのほうが優秀で素晴らしいと態度で示しました。

カルセドニーは愚かでなかなか気づいてくれなかったけど私を倦厭していました。

ジャスパーにカルセドニーが目に入るよう立ち位置やカルセドニーの噂が入るように気を配り他所の婚約破棄の話も耳に入れました。

ジャスパーは単純だから何度も聞けば自分もするだろうと確信していました。

婚約破棄しアゲートが婚約者になったのでジャスパーとカルセドニーが邪魔になり、伯爵家から追い出されるジャスパーにカルセドニーを殺すよう、何度も会いに行って不幸になったのはカルセドニーのせいだと告げました。

マーサはカルセドニーが計画的に殺害されたと知って法務部に訴えたのでハシャス伯爵と相談し私の部下に殺すよう命じました。」


全て話した。だから聖玉から手を離してもいいだろう。


「ジャスパーの精神状態がおかしくなったのは知っていましたか。」


まだ続くのか?!


「知っていました。ジャスパーが伯爵家から追い出される理由、平民になったらどうなるか吹き込む度に狂っていくのを見ていましたから。」


もういいだろう。自分が極悪非道な人間だってわかっているんだ。わかったんだ!


僕は涙を流しながら聖玉を見た。


先程まで藍色と茶と黄色が入り混じっていたが、今は青と藍、銀が少し混じっている。


深い青と藍を見ているとどうしようもなく悲しくなった。


この感情は自分に向けているのか。


人の心や命を玩具のように弄んだのに、まだ自分を哀れんでいるのか。


「終了します。」


その言葉を待っていたのに、喜びはなかった。


アゲート達を見て自分と同じ虫けらとしか感じられなかった。





「神ノーダムに許され開かれた神聖なる裁判はこれで終了する。

刑は明日午後より裁判内容の公表とともに執行となる。

閉廷!」




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