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罪の告白〜ハシャス伯爵夫妻〜

~司祭から見たハシャス夫妻~



私から見たターリアは普通に見えた。


しかしこの普通がくせ者なんだ。


「ターリア・ハシャス、カルセドニーをどう思っていました?」


「カルセドニーは我儘な扱いづらい娘でした。」


「だから愛せなかった、放置したと?」


「愛していました。」


聖玉が点滅している。色も憎しみの黒と嘲りの茶色。


実の娘にこんな感情を持つ者を母とは呼べまい。


「虚偽の発言がありました。」


枢機卿の言葉に聖玉から手が離れる。


「聖玉から手を離さないで下さい。ターリア、貴女はカルセドニーを憎み嘲っていましたね。」


ターリアは私を睨みながら両手を聖玉にのせた。


「貴方にはわからないでしょうね。カルセドニーは赤子の頃から馬鹿だったのよ!アゲートは一歳になる前から話し始めたのにあの子は一歳を過ぎてからしか喋らなかった!何をするにも遅くてわたくしはどれだけイライラしたか!

あんな子にわたくしの貴重な時間を取られたくないのにマーサはもっと優しくしろだのアゲートと比べるなだの、乳母だからって口出しし過ぎて首にしたかったわ!!」


「でも辞めさせなかったのは何故です?」


「マーサを一度首にしたらカルセドニーが手を付けられなくなって引きつけをおこしたのよ。医者を呼ばないといけなかったし、医者は子供に精神的緊張を与えるなって言われて恥ずかしかったわ。

マーサがいればマシだったから呼び戻したのよ。

それにわたくしだってあの子に色々与えてあげたのよ。」


子供を育てるべきじゃないな。

物しか与えていないくせに。


「アゲートとカルセドニーの関係をおかしいと感じた事は?」


「別に何もおかしくなどなかったわ。」


本当にそう思っているんだろう。使用人(他人)が気づいていても本人は案外わからないものだから。


「ジャスパーが来た夜の事を話して下さい。」


「···」


「黙秘は出来ません。話して下さい。」


「あの夜の事はあまり覚えていないわ。」


「虚偽がありました。真実を話しなさい。」


頭が痛くなる。

カルセドニー様の方が賢いのではないか?


「···あれはカルセドニーのためよ。生きてたって平民になるしかなかったんだから。伯爵令嬢のまま死んだ方が幸せよ。」


殺されて幸せってどんな思考回路なんだ?


「誰があんな惨い計画を立てたんです。」


「オニキスよ。それに夫が乗ったのよ。

そうすればコーネル伯爵家から慰謝料が貰えるから。

マーサだって大人しくしてれば殺さずに済んだのに。」


駄目だ、この女はまともじゃない。


「終了します。」


ターリアとバロスが替わり聖玉に両手をのせた。


「バロス・ハシャス、カルセドニーをどう思い、対応してきたのですか?」


「カルセドニーは手の付けられない子だった。私なりにあの子の事をどうしたものかと考えていた。」


聖玉が点滅しだした。しかも怒りの紫に茶色が混ざってる。


「虚偽の発言は止めなさい。」


枢機卿も神の恩恵を前に虚偽が続いてお怒りだな。


「取り繕っても聖玉の前では意味がありませんよ。」


「っカルセドニーなどどうでも良かった。男ならまだしも女であれほどの馬鹿な娘はいない方がいい。」


「カルセドニーは馬鹿ではありせんよ。子供時代は普通の貴族の水準を満たしていました。」


「アゲートに比べたら昔から劣る所だらけだ!そんな役立たずはいらん!」


自分の都合のいい娘しか必要ないのか。


「ではカルセドニーが殺された夜の事を全て話して下さい。」


「ジャスパーが追い詰められていたのはオニキスから聞いていたからやっと来たかと思った。応接間に通してカルセドニーを始末してくれるのを待ちカルセドニーを殺して呆然としているジャスパーに短剣を持たせてもう後がないぞと言ったら自分で首を切った。私は死ねとは言ってない。痴情のもつれも間違っていない。」


こんな人間を大勢見てきた。

自分を正当化して悪いのは周囲の者のせいにする。

特に貴族は子供を駒のように扱う者が多い。


だからといって許せるものではない。


「オニキスがジャスパーを誘導したのですか?

カルセドニーを憎むように。」


「誘導も何もカルセドニーのせいでジャスパーは破滅したんだ。嘘をついたんじゃない。」


「マーサを殺したのは誰です?動機は?」


「マーサが私達がカルセドニーを殺すよう仕向けたのに気づいて法務部に行って訴えた。

そのせいで法務部事務官がハシャス伯爵家に来たんだ。

まあ事務官も本気にせず形式的に話を聞かれて馬車代を渡して帰ってくれた。」


都合のいい言い方だな。


「お金を渡したんですね。」


「···ああ」


「マーサの件は?」


「法務部に再調査を訴えたのがマーサだと知ってオニキスに相談したのだ。

オニキスは自分が始末すると言ったので任せた。」


マーサが命をかけて神前裁判を申請しなかったら、闇に葬られただろう。


「終了します。」


「貴族ならどの家でもある事だ!

何故私たちだけがこんな目にあわなきゃいけないんだっ!」


わからないのか?

そうだな、この男もそう育ったから実娘を手にかけても平気なんだろう。


「マーサがカルセドニーを愛していたからですよ。

彼女を見放すことなく歪み続けるカルセドニーを救おうとしていた。

それなのにカルセドニーを殺し彼女の過ちとした貴方がたをマーサは許せなかったんです。

自らの命と引き換えにする程に。

あなた方には一生わからない愛の形なんでしょうね。」


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