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神前裁判開廷

カルセドニーが亡くなって半月後の朝、ハシャス伯爵家に司祭と教会騎士がやってきて当主夫妻とアゲートが神前裁判の神判者(被疑者)となったので大教会から召喚命令が出されたと告げられる。


そして侍女長、執事長も神義者(証人)として召喚命令が出て大教会に連行された。


皆カルセドニーの件だと察していたが誰も口を開かなかった。


神前裁判の関係者となった殆どの者に未来はない。


神前裁判は神ノーダムから授けられた真偽の聖玉に犯罪者や証人が触れ尋問される。虚偽の発言をすれば聖玉により暴かれる為真実をいうしかない。

そして罪に見合った罰が下されるが一番軽い罪で破門。

このフィーラ大陸全ての国が神ノーダムを信仰し、教会から破門されれば破戒者と呼ばれ奴隷よりも蔑まれる。

貴族や大富豪だった者は国から理由をつけて地位や財産を取り上げられ別大陸に行けず奴隷がする仕事にしか就けない。


それ程教会には権威と厚い信仰心を集めている。


神から授けられた聖玉があるからだ。


目に見える神の奇跡があり、聖職者は欲に溺れる者などおらず、それにより人々から崇められる。


神判者はほぼ有罪が確定している。

そうでなければ神前裁判は開かれないからだ。


3日かけて大教会に着き、大聖堂の神判者席にはオニキスが座っていた。


ハシャス伯爵家の者もオニキスもカルセドニーの件だと確信したが、そのせいで一縷の希望が消えた事を悟り絶望に伯爵夫人とアゲートは泣き出した。


オニキスも伯爵も泣き出したいのを堪えたが体の震えは止まらなかった。


神告者と神判者の間には直径20cmの円形の玉が置かれていた。


それが聖玉だとフィーラ大陸の者は皆知っているが実物を見る機会など滅多にない神具なのだ。



神前裁判などそうそう開かれるものでは無い。


そこに至るまでの過程が厳しいからだ。



まず俗世では裁けず内容が神に委ねるに値するか、神告者(被害者)が命をかけたか、神告者の命の灯が終える時に枢機卿と司祭が立ち会って本人の意志を確認できたか、神判者の有罪が確定しているか、全てが明確になって初めて開かれる。


だからこそ神前裁判が行われ召喚されたら終わりを意味する。


その前に自殺すれば死体は大陸中の晒し者になり、最後は獣に食われ教会の罪人名簿に最も重い大逆罪の次に記される。


幼い頃から信仰心を植え付けられているから、神前裁判が恐ろしくても自死できず震えながら神使(裁判長)を務める首座主教を待つしかできなかった。



正午の鐘がなり、神使(裁判長)である首座主教が副神使(裁判官)を連れ大聖堂の最奥、神ノーダムの石像の真下に座り、副神使の枢機卿から神告状が読みあげられた。


「神告者は10の月28日にハシャス伯爵家の墓所にて左胸部を刺され司祭に神前裁判を申請、翌日教会にて私ケリンと司祭1人が立ち会い天の(きざはし)を登らんとする神告者マーサを見届けた。


申請状には

10の月、24日に心身の不安定なジャスパーをハシャス伯爵家に通し護衛騎士や侍女を1人も置かずカルセドニーに会わせジャスパーがカルセドニーを殺すのを予想していたにも関わらず見殺しにし、カルセドニーが邸に引き入れ痴情のもつれとして国の法務部に提出、その後マーサの訴えで法務事務官がカルセドニー殺害の疑いで邸に来た時には買収した。

カルセドニーを絞殺したジャスパーはハシャス伯爵、オニキスに誘導された末の暴挙である。

その後のマーサ殺害もハシャス伯爵家、オニキス・タリグの共謀との疑いがある。」


ハシャス伯爵家の三人は神告状を読み上げている内容に震えが酷くなっていく。


信義者席(傍聴席)の貴族はよくある、貴族間では珍しくない話、確かに少々(・・)やり過ぎたかもしれないが神前裁判を開く程でもない内容だと思っていた。


ーーそれを口に出す馬鹿はさすがにいないが。


「オニキス・タリグはジャスパーと友人として振る舞いながらカルセドニーとの仲が深まるよう誘導し、婚約破棄後ジャスパーがカルセドニーに危害を加えるように噂を流していき、ジャスパーがカルセドニーを殺害するように唆した。

マーサ殺害をタリグ侯爵家の騎士に命じた疑いもある。」


オニキスもまたハシャス伯爵家と同じように震えが酷くなっていった。


「神告者であるマーサは天の階を登り神の御許に誘われた。

代理人としてマーサがカルセドニーの事を以前から相談し今回の殺害内容を記した手紙を託したハシャス領地の司祭フルークが代理人を務める。」


ケリン枢機卿の言葉にフルーク司祭が頭を下げる。


「今の説明に相違ないか。」


「ございません。」


フルークは力強く肯定した。

神判者側からは肯定も否定もなかったが神告者が同意すれば問題なかった。


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