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マーサの尋問

お嬢様は蹲った状態で震え泣きながら、私に何度も謝り神に許しを乞い気を失いました。


私は動揺してしまい何度もお嬢様を呼びました。


このまま(てん)(きざはし)を登られるのではないかと恐怖したからです。


ケリン枢機卿に止められ、貴族の方がお嬢様を抱き上げて連れて行こうとされたので、本当に罰を与えるつもりなのかと私は半狂乱になり叫びました。


「お願いします!

お嬢様をお許しください!

私がちゃんと諌めなかったのが悪いのです!!

神が罰を求めているのは私です。お嬢様ではありません!」


不敬など考えられずに貴族の方からお嬢様を取り返して抱きしめました。


お嬢様が死ぬ前に行った所業は確かに愚かでしたが、愚かだったのはお嬢様だけではありません。


私はケリン枢機卿と貴族の方を睨みつけ、血の気がなくなり冷たくなっているお嬢様をきつく抱きしめました。


「大丈夫だ、何もしない。

カルセドニー嬢をベッドで休ませたいだけだ。」


貴族の方はそう仰いますが教会は神が絡めばこちらの事情など一顧だにしません。

お嬢様を渡したら何をされるかーーー


私の考えを読んだように貴族の方はケリン枢機卿にお嬢様の処遇について聞かれました。


「ケリン枢機卿、カルセドニー嬢を休ませても宜しいですか?

この状態では何も答えられませんよ。」


ケリン枢機卿はため息をついて了承されました。


「東塔でカルセドニー様に滞在して頂く用意をしております。

そちらにお連れください。

マーサ殿は1時間後に小聖堂に来て頂きます。」


「枢機卿は言葉を(たが)えるような真似はしない。

彼女を東塔に運ぶだけだ。

安心しなさい。」


そう言って手を差し出されました。


渡したくはありませんでしたが冷静になった頭で、貴族に逆らうのは得策ではないと渋々お嬢様を預けました。


「申し訳ありません。

お嬢様がこのまま天の階を登られるかと動揺し失礼を致しました。」


鞭で打たれてもおかしくない行動でした。


「あんな風に倒れたのでは動揺するなという方が無理だろう。」


貴族、服装からして高位貴族の男性にしては珍しく鷹揚な方のようです。


東塔へ向かうと教会騎士が塔の周りに立ち、5人の巫女が出迎えて下さいました。


塔の中は整えられ貴賓室のような部屋に案内されて、お嬢様をベッドに寝かせて下さったのです。


「東塔は王侯が滞在する塔だ。

貴女たちを粗略に扱わない証拠だよ。」


教会は俗世から一線を置いてますが、それでも警備上の関係で東塔は王族や高位貴族が滞在する場所だと説明されました。


そう聞かされても警戒を緩められずお嬢様の側におりましたが、1時間後に司祭が私を呼びに来られ、後ろ髪を引かれながら小聖堂に向かいました。



小聖堂には各国の枢機卿様、首座主教様が左右のテーブルに分かれて座られ、最奥に天大主教様が座してお待ちでした。


その中央に20cm程の丸い玉があり、瞬時に聖玉だとわかり自分の心臓が大きく響きました。


入ってすぐに両指を組んで額に当て額ずきお言葉を待ちました。


「マーサ立ちなさい。」


ケリン枢機卿様のお声で立ち上がり、お顔を見ないように俯きました。


さすがに尊き方々が一堂に会し、聖玉まであるので緊張いたします。


「貴女に説明は不要ですね。

両手で聖玉に触れ、全て話して下さい。」


ええ、そうですね。

何故ここに呼ばれたか、何をお知りになりたいかわかっております。


私はお嬢様からお聞きした、お亡くなりになる前の事を覚えている限り話しました。


お嬢様にオニキスが放った神を恨んだと言った時に騷めかれましたが、それ以外は私の声だけしか聞こえませんでした。


「カルセドニー様のお話を聞いて、未来を覆すために教会に行き司祭様に伝えました。」


「神前裁判の内容を手紙に書いて教会に行ったのは何故です?」


「司祭様は神聖な裁判の内容をお聞きするのはご自身の立場では畏れ多いと思われるかと。

枢機卿様に判断を仰ぐなら時間を無駄にしないよう準備致しました。」


結論を下す時間を短縮して頂きたいですから。


「マーサ、貴女は何を求めているのですか?」


「お嬢様のお亡くなりにならない未来です。」


それだけが私の望みです。


「カルセドニーが体験した死に戻りで未来が変わったのでは?」


「それに関して私見を述べても宜しいですか?」


「許します。」


ここからの発言でお嬢様の不幸を回避出来るようにしなければならない。


「カルセドニー様は記憶があり未来に備えようと努力されるでしょう。

ですがハシャス伯爵家は誰も変わっていません。

貴族の子供は親の駒なのです。

しかもカルセドニー様は次女で賢いとは言い難く、あの邸(ハシャス家)では力も知恵も得る事が出来ないでしょう。

カルセドニー様の努力だけでは違う形で命の灯が消えてしまうやも知れません。」


聖玉が青と藍色になりました。

私の中にある悲しさと恐怖を聖玉が表しているのでしょう。


「聖玉から手を離して下さい。

明日、カルセドニー嬢の話を聞くまで他言無用に。

彼女に会っても良いですが監視を付けます。」


監視付きでも離されなくて安心しました。


お嬢様の尋問が終わるまで会えないかもしれないと思っていましたから。


最悪の場合、捕えられる覚悟もしていました。


最後にまた額ずき小聖堂を出てお嬢様の元に戻りました。


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