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神の審判

教会総本部の門の入口につき馬車を降りた私は驚きに口を開けたままだった。


そんな人は見慣れているのかケリン様がこの街(・・・)の説明をしてくれる。


「教会総本部はこの城郭都市サクセリア一帯の事を指します。

サクセリアは大小に教会があり中央にノーダム大聖堂があります。

街の住民は6割が教会関係者で4割が商人や鍛冶屋、宿屋等聖職者ではありませんが信仰心の厚い者たちです。

季節問わず巡礼者がサクセリアに訪れます。」


授業で習ったけど聞くのと見るのではまったく違う。


ハシャス領の教会しか見たことがない私はサクセリアの威容に圧倒された。


ここから見るだけでも教会がいくつもあり、遠くに見えるノーダム大聖堂は天を衝くようにそびえたっている。


本能が畏れを抱き立っていられずにマーサにしがみついた。


身体中が恐怖に支配される。


この中に入るのが怖い。


マーサは何も感じていないのかいきなり抱きついた私に困惑していたけど、それに気づく余裕はなかった。


ケリン様は震える私の肩に触れる。


「どうやら貴女は感受性が強いのですね。

稀にこの街の独特の雰囲気に恐怖や畏れを抱く者がいるのです。

ですがそこまで畏れる必要はありませんよ。

神ノーダムを崇める者には害を加える事はありません。」


ケリン様は無表情だったけど瞳が優しくなったように感じた。


私を馬車に乗せてくれノーダム大聖堂を目指して動き出した。


マーサは私の隣に座って手を握り心配そうに見てくる。


「お顔が真っ青ですよ。お水を飲まれますか?」


私は答えずにまたマーサに抱きついた。


サクセリアの街に入ってから自分の心が丸裸にされて暗闇で1人で立たされているような恐怖が消えない。


ノーダム大聖堂で司祭様たちが並んでるのを見て畏れがピークに達した。


その場から動けず震えながら泣く私を貴族服を着た男の人が抱き上げる。


「どうして怖がってるんだい?」


優しい声で聞かれても何が怖いのかちゃんと説明出来ない。


「わかんない。でも神様にずっと見られてる。

わ、私の醜いところまで見られてるの!」


いつものように暴れて泣き叫ぶなんてとてもできずに、身体中に荒れ狂う恐怖を内に押し込めながら小さな声で伝えた。


「大きく深呼吸して。

大丈夫、神ノーダムは寛大な神だ。

己を知る者には慈悲を持って受け入れて下さる。」


抱き上げてくれた男の人の言ってる意味がよくわからないけど、優しい眼差しと声音に少し落ち着いてきた。


大きく深呼吸するともっと落ち着く。


「ケリン枢機卿、このまま中に入っても宜しいですか?」


ケリン様は頷かれたけど、それに私が慌てた。


恥ずかしいし男の人にそんなみっともない真似はさせられないと思ったから。


「大丈夫です。自分で歩けます!」


男の人は私の言葉に豪快に笑った。


「そんなに震えてたらいつまでたっても中に入れないぞ。

それに子供なんだから抱いて入っても変じゃない。」


変だよ。

貴族はそんな風に抱いたりしないもん。


声に出てないのに男の人が悲しい顔をした。

私の背中を軽くポンポンと叩く。


「このまま行こう。」


本当にいいのかわからなくてマーサを見ると頷いたので、抱き上げられたまま中に入った。




ノーダム大聖堂の中は死に戻り前に見た神前裁判をした大聖堂より大きく厳かだった。


私は男の人から下ろされて神への最上級礼ー跪いて両指を組み合わせて握りしめ額に当てて頭を下げた。


死ぬ前の自分の愚かな所業が蘇る。


死に戻ってからずっと両親やアゲート、私を笑い者にした奴らを責めていたけどそんな風に扱われたのは私の行いのせいだ。


マーサに自分が悪かったと言った時は心のどこかで、だけどあっちも悪いなんて責任転嫁をしてた。


自分の愚かさに目を背けていたけど、神様は全部知ってる。


もしかしたら私が反省せずに死んだから過去に戻して罰を与えようとしてるのかもしれない。


星華広場で罰を受けたアゲート達のようになるの?


手足を縛られ猿轡をして皆の前で爪を剥がれるの?


怖い。でも神様がそうする為に過去に戻したなら罰からは逃れられない。


蹲り震えているとマーサが背中を撫でてきた。


「マーサ、私が死に戻ったのは罰を受けるためだよ。

死ぬ前に罰を受けなかったから神様が過去に戻して罰を受けなさいって言ってるんだよ。」


蹲ったまま独り言のように呟いた。


「神の御心は人知を超えたところにあります。

お嬢様が神の奇跡を勝手に判断してはなりません。」


私の迂闊な発言を叱る。

でもサクセリアに入ってから耐えてきた物が溢れて止まらなかった。


自分の馬鹿な過去をどんなに反省しても無かったことにはならない。


まだ起きていないけど神様は知ってるんだから。


私だけじゃなくマーサまで罰を受けたらどうしたらいいの。


「マーサごめんね。わたしのせいでマーサまで罰を受けるかもしれない。

ごめんね、ごめん·····

神様、お許しください·····」


私はマーサに何度も謝り神様に許しを乞い続けた。


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