学園へ行こう
翌朝メイドに起こされて、まずは目覚めのシャワーを……。
はい、ここで問題です。
目の前の鏡に、白くて柔らかそうな歩くと揺れる二つの物体が映っています、あなたが男性ならどうしますか?
答えは揉むしかないでしょう!
手に余るたわわな柔肉、両手で鷲掴みモミモミモミモミ……、うん、何にも感じないな。
生前彼女の胸を揉んだ時の感動も感覚も全然ない、ただほんのり温かな肉でした。
それよりも感動したのが、どこもかしこもすべすべな肌質。
不摂生な生活で荒れてた上に、バイトに入っていない日は髭もそのままだった俺のパサパサ肌とは大違い。
ほっぺもすべすべ、無駄毛のない腕もすべすべ、すね毛なんかもないし……あ、脇の下もつるんつるん。
胸なんてその一部でしかないってのが、元男として残念に感じるよ。
そうそう、朝起きてシャワーの前にトイレに行ったんだけど、そこで思い出した一つ、この世界では有るんですよ、お約束な生活魔法。
いや、ほら、元おっさ……お兄さんとしては、若い女性のトイレの後始末なんて躊躇したんだけど、クリーンの魔法で無問題。
残念なんて思ってないんだからね!
シャワーが済むと、メイドがすかさずやって来て、体を拭いてバスローブを着せ、鏡台…ミラースタンドとか言うんだっけ?
とにかく鏡の前に座らされ、ドライの魔法で髪を乾かし、色々されましたよ。
薄っすら化粧されて、髪をセットされたんだけど、化粧って【顔の毛穴が塞がる感】が有るんだね。
髪の毛もギューギュー引っ張られ、あっちを留めてこっちを結んで。
口には出せなかったけど、心の中で『痛い痛い痛い痛い』と叫んでしまったよ。
いやー、本当世の中の女性の努力に脱帽。
てかこれからは俺も毎日これ?
はー、憂鬱だ。
顔と頭が整ったら次は服。
そして出てくるコルセット!
でも今日は学校だから緩めの引き締めで済んだのが幸いだ。
ストッキングも何だか違和感ありまくりだし、制服はミニスカで恥ずかしいし、朝からライフゲージヤバイデス。
準備が整ったら家族揃って朝食。
美中年の父と、美魔女な母、美少女な兄に、平凡フェイスな俺。
両親は朝からイチャイチャしてるし、兄は妹を構いまくりな仲良し家族です。
食事の後は、兄と一緒に馬車で学園へ。
学園に到着すると校舎の入り口で に佇む長身の男性、リズヴァーンが居た。
「おはよう、アル」
兄に気づいて手を上げる。
「おはようリズヴァーン、昨日は僕の可愛い妹が世話になったね」
ニッコリ微笑んで見えるけど、目が笑っていない。
きっと本心は「ウチの妹任せたのに、失神させるとは何事だ」って感じかな。
「すまん、お前の期待に添えなかったな」
「別に期待なんてしてないけど、謝るなら僕にじゃなくてキャシーに謝ってくれ」
兄に言われて渋々ながらこちらを見るリズヴァーン。
「キャスティーヌ嬢、昨日はすまなかった」
いやいやいや、お兄さん、謝らせるのは間違ってないかい?
「そんな、リズヴァーン様、気分が優れず気を失ってしまった私を家まで送り届けて下さったのでしょう?
私がお礼を言う事があっても、リズヴァーン様が謝る事ではありませんわ」
コルセットの締め付けで倒れたとは言えないけど、お付きの人に頼まず、本人が家まで送ってくれたのに謝させんなんて、お兄さんシスコン過ぎやしませんかい?
そして何「うんうん、僕の妹は心優しいな」みたいな目で見てるの。
そしてそんな理不尽を受け入れるリズヴァーンも大概だと思うのだがね。
確かざっと読んだ設定では、リズヴァーンって女嫌いだったかな。
攻略も一番難易度高かったような。
ヒロインがリズヴァーンルート選ばなければ、キャスティーヌと結ばれて、ヒロインと合同結婚式上げるエンディングも有ったような。
これは是非とも避けたいルートだ。
ぶっきらぼうだけど、うちの兄に頭が上がらない所が、腐の女性の妄想を広げるとかなんとか、姉貴が言ってたな。
なもんで、キャスティーヌと結ばれるのは実はアルバートとの繋がりを深める為、一種の偽造結婚とか何とか言ってたけど、聞き流してたよ。
こうして目の前で二人のやりとり見てると、なるほどねとか思えるけど。
うん、言い争ってる風でイチャイチャしているように見える二人は置いて、教室へ行こう。