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後編・子爵令嬢視点

ラストです。

種明かし編となりますが、とにかく長いです。

ご都合主義注意!

 ──怖い。一体何がどうなってるの? この人たちは誰? どうして私たちにナイフなんか──


 とりとめのない疑問が頭の中をぐるぐる回っている。

 動くなと言われるまでもなく、私はソファに座ったまま、恐ろしさにただただ震えることしかできない。


 一方のリアンナ様は、状況にはあまりにそぐわない、けれど場所柄にはこの上なく相応しい優雅な微笑みを浮かべて口を開いた。


「旧帝国派残党の方々とお見受けしますわ。お久しぶりですこと。以前のご来訪より三ヶ月ほどになりますけれど、ご健勝のようで何よりです。ジェイリッド殿下共々、皆様がどうなさっているか心配しておりましたのよ」

「この状況でその口振りか。話に聞いてはいたが恐ろしく肝が据わっているな。流石はあの御方が伴侶と決めた令嬢。我らが尊き帝国皇妃に相応しい」

「お褒めのお言葉痛み入りますが、わたくしはアルヴェシオン公爵家次期当主。最早この世に存在しない帝国の皇妃になど、なる予定も意思もございませんわ。──ご用件がそれだけなのでしたら、早急にお引き取り願えませんこと?」


 すっ、と。

 リアンナ様の笑顔が、美しくも不敵、かつ不穏なものに変わった。

 ──綺麗だけど! とっても綺麗だけど! 目が、目が全然笑ってなくて怖い! 今日はたくさんリアンナ様を怒らせたけど、今が一番怖い!!

 首筋に当てられたナイフより笑顔のリアンナ様が恐ろしくて、私はもう既に泣きそうだった。

 気のせいか、私の後ろにいるナイフの持ち主からも、リアンナ様の迫力に圧倒されているような雰囲気が伝わってくる。


 もう一人、リアンナ様を拘束している方の侵入者は、笑顔が見えないせいなのか、変わらぬ様子で女王様──ではなくて、彼いわくの『帝国皇妃様』と話を続けている。


「生憎とそうもいかぬのだよ。迂闊に御身を傷つけて、ジェイリッド新皇帝陛下のご機嫌を損ねるのもいただけない。なので是非とも大人しく、我らとご同行願いたいのだ」

「ジェイリッド殿下に勝手極まりない肩書きをつける無礼はひとまず置いておきましょう。以前は殿下の身柄()()の確保を目的とした襲撃でしたのに、今回はわたくしが標的とは、随分と方針が変わりましたのね。殿下への人質のつもりなのでしょうが、わたくしは例え一人でも、あなた方の本拠地を数分で壊滅させる程度の力はあると自負しておりましてよ」

「おやおや、恐ろしくも頼もしい。確かに仰る通り、貴女お一人ならば好きなように立ち回ることも可能ではあろうが、他にも人質がいれば違うのではないかな?」


 と、黒ずくめでこちらからはよく見えない目は、けれど間違いようもなく私に向けられていた。


「……え。わ、私!?」

「……不本意ですが。目の付け所は確かなようですわね」


 リアンナ様の笑みが消えた。……それでも彼女は、どこか余裕そうな雰囲気ではあるけれど。


「皇妃殿下よりの御言葉、恐悦至極。──ご承知の通り、そこの『魅了使い』の少女は、身の程知らずにもその力で陛下をたぶらかしている。本来ならば極刑にも値するが、その能力は極めて貴重。彼女を使えば、陛下に新皇帝として即位宣言をしていただくことも、憎き簒奪者どもを骨抜きにすることも可能となるのですからな。賢明なる皇妃殿下ならば、『魅了使い』の能力を悪用される危険を冒してまで強引な手段に出ることなどなさらぬでしょう?」


 侵入者の言っている意味は、私には殆ど理解できなかった。

 ──『魅了使い』って何? 私のこと? ジェイ様が皇帝って、そんなの知らない。私なら即位させられるって、そんなわけないのに。魔法も使えない私に、そんなおかしな力なんてあるはずない。

 混乱する私の耳に、リアンナ様の冷静な声が届く。


「確かに彼女のような『魅了使い』は、男性を虜にした上で、その男性に望み通りの言葉を言わせることが可能なようですわ。実際にジェイリッド殿下も、正気であれば有り得ない台詞を彼女の前で口になさったようですから。……ですが恐らく、口にさせられる内容は、あくまでも彼女が本心から望むものでなければならないはず。あなた方と彼女の願いが完全に一致しないのなら、殿下の発言を思い通りに操ることなど不可能と考えるべきではなくて?」

「……ふむ。確かに『魅了使い』の能力については、まだ完璧に解明されてはおりませんからな。その可能性もありましょう。ですがそれならそれで、いくらでもやりようはあるのですよ。彼女に薬を使って洗脳してしまえば、最も手っ取り早く済む」


 ──想像することさえ耐え難い話を聞かされ、私の頭は真っ白になった。

 恐怖と、それを遥かに凌駕する強烈な嫌悪、そして目まいがするほどの怒りが、体を酷く震わせる。


「洗脳……? 洗脳、って……」


 つぶやいた私に、背後の侵入者が反応したけれど、そんなものはどうでもよかった。

 ──カッ、と目を見開き、正面の黒ずくめをにらみつける。


「──そんなの、絶対に嫌ですっ!! やめてくださいっ!!」


 ただ心のまま、突き付けられたナイフの存在さえ忘れて、渾身の力で叫んだ。

 ──声こそ大きかっただろうけど、ただ叫んだだけ。それだけだった、はずなのに。


「ぐぁっ……!!」


 リアンナ様を捕らえていた男は、まるで鈍器で殴られたように頭を抱え、がくん、とその場に崩れ落ちた。

 ──次の瞬間。


「──よくやってくださいましたわ、フィアルカ様」


 それはそれは優しく麗しく、自由になったリアンナ様が微笑んだ。

 そして。


 キィンッ……!!


 凄絶極まる冷気が、私のすぐ後ろに局地的に渦巻いて。

 そこに存在していた侵入者の片割れは、見事な細工の氷像と化したのだった。




 こうして、アルヴェシオン公爵邸襲撃事件は終わりを告げたのだけれど。

 私の試練は、これからが本番だった。


「……リアンナ様……」

「何でしょう?」


 手際の良すぎる公爵家の使用人たちの手で、応接室から侵入者たちが運び出された後。

 後のリアンナ様の診断によれば、『魅了使い』特有の強力な精神干渉能力を一度に使いすぎたために、疲れきった体をぐったりとソファに預けた私は、何事もなかったように優雅にお茶を楽しむ美女に疑いの目を向ける。


「もしかして、ですけど……私があの人を気絶させなくても、リアンナ様ならもっと早く、二人とも一網打尽にできたんじゃありませんか……?」

「あら、気づきましたのね」

「リアンナ様! 酷すぎます、私はあんなに怖かったのに!」


 全然悪びれずに認められてしまい、私は疲れも忘れて猛抗議したけれど。

 ──ゆっくりと音を立てずにカップを置いたリアンナ様に、気圧されるほど強いまなざしを返され、それこそ凍りついたように固まってしまった。


「そうでしょうね、怖かったと思いますわ。──でもわたくしは、ジェイリッド殿下と婚約してからの十年間、ずっと殿下の隣で彼らと戦ってきたのです」

「え……っ」


 絶句した。そんなこと、想像したことすらない。

 お二人が婚約したのは十年前、つまり八歳の時だ。八歳の頃の私は、退屈に思えるほど平和なルンド子爵領で、家族やお友達に囲まれ、ただただ無邪気に笑っていた。

 そんな幼い頃からお二人はずっと、今日みたいな危険に晒されてきたって言うの……!?


「彼らだけではありませんでしたわ。今でこそ完全に粛正されましたけれど、現在の公家(こうけ)の熱狂的な支持者たちの中でも特に過激な、旧王朝の血は根絶やしにすべきだと主張する一派が、かつては毎日のように殿下に暗殺者を送り込んで来ていました。──殿下の身柄の確保のためには、毒や魔獣や致命傷未満の怪我等々、何でもありの旧帝国派よりは、ある意味で相手にはしやすかったですわね」

「な──」


 ──嘘ですよね? 冗談でしょう?

 そう聞きたくてたまらないのに、リアンナ様の雰囲気はそれを許してくれない。

 聞けたところで、私を安心させてくれる答えなんて貰える訳がないのだけれど。


 それでも顔には出てしまったようで、リアンナ様はくすっと苦笑した。


「信じたくないというお顔ですわね。──ですがこれは、殿下のお側を望む貴女なら当然知っておくべきことですのよ。殿下に流れる旧帝国皇族の血に何が伴うのか、ひいては殿下の立太子及び即位がどこにどのような影響を及ぼすのか」

「どこに、って……ええと。やっぱりまずは、公国……ですよね?」

「最も影響が大きいのはそこですわね。では『どのような』の方はいかが?」

「……上手く、言えません。旧帝国派の人たちが活気づいて、それは公国にとって良くないことで……」

「そうですね。それに関連して何が考えられます?」

「か、関連ですか。ううん……」

「──公国内の反帝国感情も同時に盛り上がって政情不安になった結果、帝国皇族の血を濃く引く俺を未来の王とする我が国への、不信感や猜疑心が急激に高まり、二国間の友好関係が深刻なレベルで危うくなる──というくらいの解答はしてほしいものだな。まあ、期待するだけ間違いなんだろうが」


 聞き慣れているはずなのに、聞いたことがないほど厳しい響きのせいで、一体誰の声なのかすぐには気づけなかった。


 リアンナ様はおもむろに席を立ち、柔らかな笑顔で新たな来訪者に手を委ねて歓迎する。


「お帰りなさいませ、ジェイリッド殿下。ご無事でしたのね」

「ただいま。心配させたか?」

「いいえ。以前に比べると、このところの刺客の腕は格段に落ちてきているようですから。それなりの実力者はまだいるのでしょうが、殿下に傷を負わせるほどの者はほぼ皆無でしょう」

「確かに、二十人がかりでかすりもしなかったな。旧帝国派も組織としては限界に来ているんだろう。リアの方は怪我は?」

「ご覧の通りですわ」

「……治癒魔法も自在なリアの『ご覧の通り』は当てにならないんだよ。服に傷はないから嘘ではないんだろうが、後で治癒の痕跡がないか、隅々まで確認させてもらうからな」

「殿下!! 人前でそういうことを仰るのはやめてくださいませ!!」

「別にいいだろう? 彼女には絶対に意味がわかってないだろうし」

「そういう問題ではありませんわ! 全くもう……」


 私がジェイ様に近づく前と同じく、ごく近い距離でお二人は仲良く話している。

 ──リアンナ様のポジションは、つい昨日まで私がいた場所なのに。


「あの、ジェイ様……?」

「うん?……ああ、すまないがフィアルカ嬢、その呼び方は是非ともやめてほしい。もう君の力は俺には効かないようにしてあるから、何をどんなに願おうが叶える気は全くないと宣言しておくよ」


 道端に転がる石を見るような、酷く無関心な目でこちらを見るジェイ様の、リアンナ様とは違う癖のある短めの黒髪が揺れ、左耳で見覚えのないピアスが光るのが分かった。

 何の変哲もないデザインなのに、何故か目について離れない。


「そのピアスは……」

「第四代アルヴェシオン公爵考案、対『魅了使い』用抗精神干渉(レジスト)アイテムですわ。それを解禁なさったということは、学園内での実験と貴族全体への周知は終了という認識でよろしいのですね?」

「側妃宣言までさせられたわけだから、流石に潮時だ。これ以上の厄介な発言を引き出された上にそれが他国に漏洩でもしたら、手に負えない甚大な影響が生じかねないしな。何より父上や弟たちにも、もういい加減にしろと三重奏で叱られたことだし」

「そのお叱りは甘んじて受けるべきですわね。いくら我が家で根本的な異常が生じていないか毎日チェックしていたとは言え、愛する息子や兄が得体の知れない力で頻繁に精神を引っ掻き回される事態を、気にせず静観していろという方が無理というものです。ひと月前のジャロッド殿下など、『渾身の力で殴れば、学園での兄上を正気に戻せるだろうか』なんて真剣に悩んでいらっしゃいましたもの」

「……あいつの全力でまともに殴られたら、正気に戻る以前に間違いなく死ぬんだが」

「わたくしもそう思いましたので、殴りかかるのは事態の収拾がついてからにしていただくようお願いいたしました」

「おい、リア! 分かってはいたが、実はまだかなり怒ってるだろう!?」

「酷いですリアンナ様!」

「それはまあ色々な意味で怒っておりますけれど、半分冗談ですわよ。大体、弟君にせよ誰にせよ、殿下に攻撃を直撃させることがまず至難の技でしょう。……それはそれとして、フィアルカ様も少し元気になったようですから、質問を受け付けることにいたしましょうか。まず何を知りたいですか?」


 ──そして私は、お二人から色んな事実を聞かされた。

 私が『魅了使い』と呼ばれる能力者であること。『魅了使い』の特徴は平民か子爵以下の貴族の女の子で、必ずピンクブロンドの髪をしており、現れる頻度は五十年に一人くらいであること。

 ……ジェイ様……ジェイリッド殿下があえて対策を取らず私と接していたのは、あらかじめ国王の名で各所に根回しをした上で、国の上層部しか知らない『魅了使い』の存在を明らかにし、その力が周囲に与える影響がどんなものであるかを、主に貴族全体に周知させるためだったこと。

 先入観のない見方も必要なので、元から知っている高位貴族出身の生徒以外には一切事情を知らせておらず、結果として主に子爵家以下の家柄の男子生徒たちが、いずれ殿下に振られるであろう私(殿下がリアンナ様を捨てるはずがないという共通認識による)の争奪戦もどきを繰り広げている──と聞かされた時には目が点になった。

 お友達として接していただけなのに、なぜそんなことになったのかわからなかったけれど、判明している『魅了使い』の能力について詳しく明かされた時に疑問が解けた。


「要は対象が男限定の、強力な精神干渉能力と言うか、有り体に言えば洗脳だな」


 そう締めくくった殿下の言葉が、鋭く耳に刺さり胸を貫く。

 ──さっきはあんなに恐怖と嫌悪を抱いた『洗脳』という行為を、実は私が(おこな)っていたなんて。それも昔から、日常的に。


「……もしかしてお父様のことも、私は洗脳していたんでしょうか……?」

「否定はできませんが、他のご家族と極端な差をつけて優遇されていたのでなければ、そうだとしてもさほど問題はないと思いますわよ。……ただ……」

「どうした?」

「いいえ。少し気になっただけで、確証のないことですから」

「リア」


 言いよどむリアンナ様と、殿下は話が始まってからずっと恋人つなぎをしていたのだけれど、その手をそっと握り直して甲を撫でながら、軽く咎めるように、でもこれ以上ないほど優しく告げた。


「リアは優しいから、フィアルカ嬢を気遣うのは分かる。だがようやく、彼女は自分の行いについて振り返って考えようとしているんだ。今まではそんなことをしなくとも幸せでいられただろうが、これからはそうはいかない。それがどんなにつらいことでも、判断材料になるものは全部渡してしまった方が、結果としては彼女のためになるんじゃないか。──現実や真実なんてものは、大方厳しいものだってことを理解させるいい機会だ。彼女の幸せの裏に何が存在したのか、誰よりも知るべきは彼女自身だからな」

「……確かに、そうですわね。ですがそれはあくまでも、理解できるだけの下地があることが条件でもありますけれど」

「そこは今の彼女を信じてやるべきだろう」

「あら、そう仰るなんて、殿下も十二分にお優しいですわよ。ご自分から飛び込んだこととは言え、今回のことで最もつらい日々を送られたのは殿下ですのに」

「つらいと言っても、肉体的にはたまに軽く目まいがするだけで大したことはなかったぞ。むしろ少女趣味な台詞を大量に言わされた精神的ダメージと、何より学園の中でリアに滅多に(さわ)れなくなったのがきつかった」

「……お陰でわたくしの睡眠時間と体力にも悪影響が出ましたわね。そのことも少し怒っておりますのよ、わたくし。まあそれはともかく」


 こほん、と仕切り直してから聞かされたリアンナ様の話は、確かに私にはつらすぎるものだった。


「フィアルカ様のお姉様方とは、マイヤー先生のご縁もあって、わたくしの入学からお二人の卒業までそこそこ親しくさせていただきました。フィアルカ様が『魅了使い』だと五年前から分かっておりましたので、お二人から少しは何か探れないかという打算から、ご家族についてのお話を時折振ってみたのですけれど……言いにくいのですが、お二人同士のエピソードやお母様についてはこちらから尋ねなくとも話題に上るのに、フィアルカ様のお話はさほど聞けなかったのです。お父様に至ってはほぼ皆無でしたわ」

「ぇ……」


 衝撃の事実に、ささやくような声しか出ない。


「それは……気の毒だが、家族の間に相当に深い亀裂が入っているんだろう。ただその程度、と言うと悪いが、『魅了使い』も何も関係なく、どこの家でもきっかけがあって修復を怠ればいくらでも有り得る。ルンド家の場合、精神干渉能力が拍車をかけた可能性はあるが……フィアルカ嬢、何か心当たりは?」

「……え、と。きっかけと言うか──」


 お母様が厳しくなり始めた十歳の頃の話をすると、殿下は空いている手を額に当ててうつむき何度も首を振った。リアンナ様も眉根を寄せている。


「……フィアルカ嬢、それは駄目だ。駄目すぎる。いくら動揺していたとは言え、断片的な情報だけを伝えて事実をねじ曲げ、姉の方が悪いと誤認させるなんて最悪だろう。しかも君、その件で姉上に謝っていないよな? 俺の場合だと、ジョルダンなら確信犯で俺を悪者にして、リアに泣きついたりするかもしれないが、謝罪がないなら今後一切おねだりは聞いてやらないぞ」

「ですがルンド子爵も短絡的すぎますわね。理由もなくフィオーラ様が妹を貶めるはずがないのですから、きちんと前後の会話を確認さえしていれば済む話ですのに。わたくしだってジョルダン殿下に泣きつかれても、話の裏くらいは取りますわよ」


 ……ジョルダン殿下について聞いてはいけないことを聞いてしまった気がしたのは、後で落ち着く時間が取れてからのことだった。


「少なくとも領地経営に関しては子爵は無能ではないから、人の話を鵜呑みにするタイプでもないと思うんだが。よほど末娘を溺愛していたか、それこそ洗脳された結果なのか」

「そんな……私の能力のせいで……?」


 どうしたらいいのか、欲しくもなかった力のせいで私は──と、悲劇のヒロイン思考に陥りかけるのを、目の前のお二人は許してなどくれなかった。


「決めつけはいけませんわ、フィアルカ様。『魅了使い』の方々がさほどのトラブルを起こさず、本人も周囲も幸せになったケースだって数多くありますのよ」

「えっ!?」

「その件も含めて、資料付きで爵位を持つ全ての家に広めてある。例えば五代前の王妃が『魅了使い』だったが、その手腕と厳しくも優しい人柄で、国王には勿論、老若男女問わず全ての国民に愛された女性だったそうだ」

「史上屈指の名君と名高いジョサイア三世陛下をお支えした、賢妃と名高いお方でもありますわね。ちなみにご出身は男爵家でしたけれど、当時のアルヴェシオン女公爵の養女として嫁がれたと記録にありますわ」

「え、え」

「その三代前のアルヴェシオン公爵夫人も『魅了使い』で、なかなか面白いエピソードがあったな。魔法研究に没頭しすぎて倒れた未来の夫を保健室で介抱して、目覚めた後に思いっきり叱り飛ばしたのが馴れ初めだとか」

「確かに我が家の血筋は魔法馬鹿の傾向にありますけれど、倒れるまで打ち込むせいで婚約者もできなかったと記録に残されたのは、流石にその方くらいですわ。夫人は弟妹の多い商家の生まれで、元々面倒見の良い性格でしたが、その後も何度か未来の夫が倒れる場面に遭遇して、『駄目だこの人、私が目を光らせてないと死ぬ!』と目が離せなくなり、最終的に結婚に至ったのだそうで……」

「ふはっ!!」


 爆笑しだした殿下の隣で、リアンナ様は恥ずかしそうに頬を染め、扇で顔を隠している。ご先祖様のさまになりようもない話を披露したのだから、気持ちはわからなくもない。……私だって驚きに呆然としていなかったら、間違いなく笑い転げていただろうけれど。


「ちょ、何だそれ、おかしすぎる……!! 駄目だ、腹が痛い、死ぬ……!!」

「……もうお好きなだけ笑っていてくださいませ。ともあれ、フィアルカ様」

「は、はいっ!」


 つないだ手を振りほどこうとしばらく試みていたリアンナ様だけど、腹を抱えながらも絶対に離そうとしない殿下の様子に早々に観念したようで、溜め息をつくと私の方に向き直った。


「今ご説明した以外にも、高位貴族ではない昔からの婚約者と結婚して穏やかに暮らしたり、学園卒業後に実家に戻って稼業を継ぎ、国内有数のレベルにまで発展させたという女性もいます。──お分かりかしら? 『魅了使い』の能力は、確かに容易に危険になり得るものです。けれど結局のところ、どう生きるかを決めるのはあくまでも本人の意思や選択であって、能力の有無のみで左右されるものではないのですわ。魔法適性など、能力によってはいくつか選択肢が増えもするでしょうが、それだけです。……まあ現実には、血筋などの理由で将来が限定されてしまう場合が多いですけれど」


 と、亡国の血を引く王子を婚約者に持つ、公爵家次期当主は苦笑してみせる。


「それでも特定の能力があるだけで、破滅や不幸に直結するなどということはあり得ません。……思うに、『魅了使い』が本人やその周囲に悪影響を及ぼすのは、多くの場合は強力な精神干渉能力に無自覚のまま、その効果だけを疑問も抱かず甘受することで、自らを徹底的に甘やかした結果なのでしょうね」

「言い換えれば、自分の意思で能力を使うのではなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、ってことだな」


 ようやく笑いがおさまったらしい殿下が付け加えた。


 ……つまりは私も、自分で自分を甘やかしたということなのだろう。

 思い返せば、嫌になるくらい身に覚えがあった。お母様やお姉様の忠告を聞かず、甘やかしてくれるお父様にばかり頼って。淑女教育の厳しさからも逃げたばかりか、先生やお母様への謝罪もしていない。

 何よりも殿下のことについて、少しの調査や考えることさえ怠り、見当違いな思い込みだけを根拠に側妃を目指そうなどとしたから、今の状況があるのだ。

 どこかの段階で何か一つでも建設的なことをしていれば、少しは変化も──


 ──いや、それでもやっぱり、動機の違いはあっても、私はお二人に近づかずにはいられなかったと思う。


「王族として、『魅了使い』の血を引く者として。そうやって自滅の道に向かう者たちを減らしたくて、俺は今回のことを計画したんだ。『魅了使い』に関する知識が肝心の本人や家族にないことが、能力に振り回される大きな一因だろうから。──そのために君を利用したことだけは謝る。許してもらおうとは思わないが、すまなかった、フィアルカ嬢」

「わたくしも共犯ですから謝罪しますわ。貴女を晒し者にしてしまったこと、心からお詫び申し上げます」


 そう言って、殿下とリアンナ様は私に頭を下げる。『魅了使い』の力に振り回された私の行動に、一番被害を受けたはずのお二人が。


 ──ああもう。二人とも、とても厳しいことを私に言っておきながら、どうしてこんなにも誠実で優しいんだろう。


 込み上げる涙をこらえながら、私は何とか口を開いた。


「──お二人とも。一言だけ、よろしいでしょうか」

「何だ?」

「何でしょう?」


 最後にこれだけは伝えておきたい。例え信じてもらえないのだとしても。──お二人と会うことは、もう二度とないだろうから。


「ジェイリッド殿下。リアンナ様。私は──」


 ──殿下に憧れた。恋をした。側にいて、不可欠な存在になりたかった。

 ──リアンナ様に憧れた。近づきたかった。仲良くなって、お友達になりたかった。

 だから──


「五年前から、お二人のことが、大好きです。──好きになってしまって、ごめんなさい……!!」

 

 深々と頭を下げたと同時に、涙腺が決壊した。雫がドレスの膝にぽたぽたと落ち、不揃いな染みを作る。……その染みさえ見えないほど、涙は後から後からこぼれ出て止まらない。


 大好きなのに、大好きという気持ちを免罪符にして、大好きな二人に迷惑にしかならないことをしてしまった。そんな私からの好意なんて、それこそ迷惑でしかないだろう。

 分かっているのに、それでも伝えたかったなんて。私はどこまで我が儘なんだろうか。


 みっともなく泣きじゃくる私の座るソファが、微かに軋んだ。

 ──私の頭を大きな手がわしゃわしゃと撫で、同時に背中に触れた華奢な手が、しゃくり上げるのを宥めるように優しく動く。


「こら、泣くな。別のことならともかく、人に好意を伝えるのにどうして謝る必要があるんだ?」

「どうか頭を上げてくださいな。殿下もわたくしも、貴女の御気持ちを迷惑だなんて思っていませんわよ」


 涙で顔は見えないけれど、お二人の声も手もこれ以上ないほどに優しかった。


「だっ、だって私、お二人の間にっ、割り込もうとして……」

「それはまあ、問題しかない行動だったのは確かだが、好意を向けられること自体には別に何も問題はないぞ」

「むしろ付帯条件なくストレートに言っていただけて嬉しいですわ。わたくしの場合、同性の方々からの『好き』には、何故かほぼ必ずおかしな条件が付くのです」

「ああ、『お慕いしていますリアンナ様! 是非お姉様と呼ばせてください!』とかいうやつか。そう言えば三年になってから一気に増えた気がするな。『誰はばかることなくリアンナ様を『姉様』とお呼びできるなんて、ジョルダン殿下が羨ましいですわ!』なんて声もたまに聞こえてくるし」

「それはっ、私も羨ましいです! リアンナ様を、お姉様と呼びたい! 同感です、大賛成です!」

「……フィアルカ様……フィーナ様とフィオーラ様がいらっしゃるのに」

「確かに私には、実のお姉様たちがいます。でも、それとこれとは全然違う話なんです!」

「そ、そういうものですのね」

「……まあ、無事泣き止んだようで何よりだ」


 泣いた反動か、おかしな方向にテンションが上がってしまった私の力説を、軽く引き気味になりながらも、お二人は最後まで聞いてくれたのだった。




 その後の私がどうなったかと言うと、当初の希望通り側妃となることができた。……勿論ジェイリッド殿下のではなくて、国王陛下の、それも名前だけの妃だけれど。


 『魅了使い』の存在は私の学園での振る舞いとともに語られ、国内の全ての貴族に、私の名前は悪い意味で知れ渡った。

 それでなくとも複雑な立ち位置にあるジェイリッド殿下をさらに微妙な立場に追い込みかねないので、『フィアルカ嬢を側妃に』発言は伏せられてはいるけれど、それを抜きにしても、公爵令嬢の婚約者と知った上で殿下に近づいた私の行動は、リアンナ様やアルヴェシオン公爵家を蔑ろにするものでしかなく、令嬢としては最早致命的な傷がついている。

 そんな私の噂を耳にしたお父様は、青ざめるのを通り越して真っ白になり、次には怒り狂って私を勘当すると叫んだという話を聞いたが、どのみち私は魔術師たちによる能力研究への協力依頼を受けたこともあり、もうルンド家には戻れないので、ただ申し訳ないとしか思わなかった。


 とは言え、私を勘当された立場のまま放置しておいては、『魅了使い』の能力目当てで、監視という名目の身柄確保を申し出てくる輩が出てきかねないということで──「それはそれで不届き者をあぶり出すいい餌になるが、流石に貴女にそこまでさせてしまうのは、ジェイリッドの父としても申し訳ない」と怖いことを言われながらも、私の身柄はこの国で最も警備が厳重な後宮で守られることになった。


 いくら保護だと言われても、あくまでも言葉の上でのことで、一生を後宮の片隅で肩身狭く過ごすのだろうと覚悟していたのだけれど、全然そんなことはなかった。


「まさか、こんなに可愛らしい子をこの先一生閉じ込めておくだなんて! ジェイリッド様とリアンナ、当の被害者二人が一切望んでいないのに、何故そんなことをしなければならないの?」


 心外そうに言ったのは、髪や目の色素が薄いのと小柄で垂れ目の点を除けば、リアンナ様とよく似た女性。三十三歳という実年齢より十歳近くも若く見えるこの御方は、この後宮の主である王妃様だった。

 私が後宮に入った翌日の午後、住まいとして宛がわれた離れにいきなり押し掛けてきた彼女は、驚く私を尻目に侍女に命じて簡単なお茶会の準備をさせ、逆らう隙さえ与えず私を同席させてしまったのである。

 部屋の居心地はどうかと聞かれて、「とても快適で、これならこちらで楽しく一生を過ごせそうです」と答えた私への反応がさっきの台詞だった。


「それは、でも、私は罪を犯したわけですから……」

「だからと言って、流石に一生涯を監禁だの幽閉だのなんてことはないわ。仮に貴女にそんな扱いをしようものなら、誰より怒るのが次期アルヴェシオン公爵夫妻よ」

「……思うんですけど、ジェイリッド殿下もリアンナ様も、少し私に甘すぎるんじゃないでしょうか」

「あら、それを甘いと思う貴女こそ甘いのではない?」


 にっこり笑ってみせてから、王妃様は私を試すように見てくる。


「よろしいかしら、フィアルカ様? 貴女に望まれているのは、『学ぶべきことをきちんと学んだ上で、どんな形であれ自分の生き方を決めてほしい』ということなの。長い人生を後宮に閉じ籠って、果たすべき義務もなくぬくぬくと過ごすなんて究極に甘やかす処遇を、あの二人が許すはずはないわ。どんな生き方を貴女が選ぶにせよ、後宮に留まるという選択肢だけは存在しないのだと肝に命じておいてちょうだいね」

「は……はい」

「ちなみに貴女にはこの先、かなりのスパルタ教育が待ち構えているわ。勿論、座学だけでは話にならないから、監視付きだけれど月に何度かは野外学習もしてもらう予定よ」

「うっ……スパルタ教育ですか……」


 たらり、と背中を汗が伝う。はっきり言うと勉強は大嫌いで、この先好きになるとも思えないけれど、それでも逃げられるわけではないし、そもそもその選択肢が私の中にはない。

 ──ここで逃げたりしようものなら、その瞬間に私は、殿下とリアンナ様に見捨てられてしまうだろうから。

 お二人に嫌われたり、見放されてしまうようなことは、もう絶対にしたくない。


「……きちんと身に付くまでどのくらいの時間が必要なのか、自分でも分かりませんけれど。頑張ります」


 決意を込めて宣言した私に、王妃様は満足げにうなずいた。


「よろしい。期待しているわね。早速だけれど、二、三日のうちに勉強を始めてほしいから、明日の十時には貴女に教師陣を紹介することになっているわ。楽しみにしていてね」

「……は、はい」


 スパルタ教育と聞いて真っ先に思い浮かんだのが、昔失礼を働いてしまったマイヤー先生だ。

 ……もしまたマイヤー先生に教わるのだとしたらどうしよう。まずはお会いしてすぐにあの時のことを謝って、それから……先生が教えていた頃のリアンナ様のお話を、ご褒美として聞かせてもらえるようにお願いできれば、授業に取り組む意欲も湧くだろうか。


 そんなことをベッドの中でぐるぐる考えているうちに眠ってしまい、あっと言う間に翌日の十時を迎えた。


 勉強部屋として割り当てられた部屋のドアが、時間通りにノックされる。


「は、はい。どうぞお入りください!」

「……少し脅かしすぎてしまったようね。そこまで固くならなくとも大丈夫よ、フィアルカ様。──先生方、こちらへ」


 朝からすっかり緊張し通しの私の様子に苦笑いを見せた王妃様は、廊下に控えていた人たちを招く。

 しずしずと部屋に入ってきた人たちを見て──私は、絶句した。


「本日より側妃様のご教育を任されました、元ルンド子爵夫人フィオネッタにございます」

「同じく、フィーナと申します。王妃様の宮にお仕えしておりましたが、本日ただ今より、こちらで側妃様のお世話をさせていただくこととなりました」

「同じくフィオーラでございます。……側妃様におかれましては、大変ご無沙汰をいたしておりましたが、お元気そうで安心いたしました」


 ──夢を見ているのかと思った。さもなければ、私の頭が作り出した都合の良すぎる幻覚か。


 ただただ信じられなくて王妃様を見るけれど、リアンナ様そっくりの茶目っ気たっぷりな笑顔が返るだけだった。


「では後はお任せしますわ、フィオネッタ先生。フィーナ、フィオーラ、フィアルカ様をよろしくね」

「かしこまりました」


 ……王妃様が去り、部屋を沈黙が支配した。


 本来なら、曲がりなりにも部屋の主である私が口火を切るべきなのだろう。でも何を言えばいいのか……そもそも、お母様やお姉様と呼んでいいのかさえ分からない。呼びたくてたまらないのに、怖くてできそうにない。

 だって今のお母様は先生なのだ。そんな立場の人に「お母様」と呼び掛けるなんて──


「──フィアルカ」

「!!」


 懐かしい、優しい呼び掛けが耳に届き、俯いてしまっていた顔を上げた。

 お母様は、優しいのに寂しくて悲しそうな、複雑な表情で私を見ている。


「ごめんなさいね、フィアルカ。貴女を際限なく甘やかす夫に疲れ果てて、何も悪くない貴女を一方的に突き放した挙げ句に五年以上も放っておきながら、側妃となった途端に近づいてくるだなんて、酷い母親だと思うでしょう。でも貴女が『魅了使い』だということを知って、同時に酷い噂も聞いて、じっとしていられなくて……」

「そんな、そんなこと……! お母様の厳しさは愛情の表れだって、フィーナお姉様が言っていたのに、ただ怖いからというだけでお父様の甘やかしに逃げた私が一番悪いの! マイヤー先生のことだって、あんな失礼なこと言っちゃいけなかったのに……!」


 ぽろぽろと泣き出してしまった私を、お母様の懐かしい香りがそっと包み込んだ。


「フィアルカ……ありがとう。寂しい思いをさせてごめんなさい」


 お母様の胸の中、私は必死にかぶりを振る。


「私も、お母様やお姉様たちに、ずっと前に謝らなきゃいけなかった。お母様もフィーナお姉様も、フィオーラお姉様にはお父様に言いつけたことをずっと謝らないでいて、本当にごめんなさい……!」

「全くもう、すぐ泣くのは相変わらずなのね、フィアルカ。仮にも側妃になった以上、いつまでも泣き虫だなんて許されないわよ。マイヤー先生を見習ってびしびし鍛え上げてあげるから覚悟なさい」

「う。せ、せめて最初のうちはお手柔らかにお願いします、フィーナお姉様」

「駄ー目! こういうことは最初が肝心なの。その甘えたなところもフィアルカの可愛いところだけど、陛下や王妃様直々に、貴女を甘やかさないようたくさん念を押されてるんだから」

「……お二方直々って。フィオーラお姉様、凄いのね……」

「そうよ、お母様も姉様も私も凄いの。ひとまず教育が一定ラインに達する頃には、貴女の能力制御用アイテムが出来上がる見込みだそうだから、みんなでお出かけする許可もいただけるはずよ。だから、それまでしっかり泣き言を言わずに取り組むこと! いいわね?」

「はいっ!」

「大変いいお返事ですね、フィアルカ()。では今日はまず現状を把握させていただきましょうか。最初はマナーからにいたしましょうね。さ、こちらのスペースでカーテシーをなさってみてください。先にフィーナとフィオーラがお手本をお見せしますから」

「は、はいっ。よろしくお願いします、フィオネッタ先生」


 ……そんな風にして、私は早速お母様とお姉様たちから容赦なくしごかれることとなった。

 宣言通りのスパルタで、夜にはすっかり疲れきってしまったけれど、とても心地よい疲れだった。

 お姉様たちにマッサージをしてもらい、睡魔に陥落する寸前。


「お休みなさい、フィアルカ。ぐっすり眠るのよ」

「お休み、フィアルカ。また明日ね」

 

 ──ああ、本当にお母様やお姉様たちと明日も会えるんだ。


 大好きな家族とまた一緒に過ごせる。その事実に途方もない幸せを感じ、私はほわりと笑みを浮かべて眠りに落ちたのだった。




……何やら大団円みたいになってしまいました。

最初、フィアルカはそれこそ幽閉や実験体エンドの予定だったんですが、中編を書いていて愛着が湧き、救いが欲しくなってこんな結果に。賛否両論あるだろうなと思います。


以下、簡単な登場人物紹介。


☆リアンナ・アルヴェシオン(18)

黒髪ロングストレート、身長167cmの一見スレンダー美女。でも着痩せするので実はきっちり凹凸があるが、侍女と母親と婚約者以外は知らない。

魔法全般が得意で、中でも水系魔法を多用。その気になれば王都全体を氷のドームで覆うこともできる。意味がないからしないけど。


☆フィアルカ・ルンド(16)

腰まであるピンクブロンドが印象的な美少女。身長は153cmと小柄で、体型は起伏に乏しく、こちらも多分母親似。

髪を伸ばしたのは初対面のリアンナに憧れたからという裏設定あり。……やっぱりジェイリッドよりリアンナが好きなんじゃないかな、この娘。


☆第一王子ジェイリッド(18)

黒髪の癖毛に翡翠の瞳、浅黒い肌をしたワイルド系の美形。身長183cmの細マッチョ。ビジュアルイメージは、某格闘テニス漫画の主人公の兄が近いかな。

スペックとしては文武両道だが、本人の好む分野は明らかに武寄り。将来的には義父の跡を継いで魔法騎士団長になる予定だが、戦闘スタイルは暗殺者に近い。普通の剣技も一流ではあるので十分格好はつくレベル。得意魔法は身体強化と風系で、大軍に囲まれても巨大竜巻や超広範囲のかまいたち攻撃で一掃可能。細かい魔法制御が苦手で味方も巻き込みかねないので、大抵は魔力で作った武器を駆使して個別撃破する。つまりは一人で戦場に放り込んでおけば勝利確定と思われる。

??「え、そんな無駄な犠牲を出さなくても、ジェイリッド兄上なら本陣に潜入して、速攻で指揮官の首を取って戦闘終了させられるよ」

??「そうだな。戦場での囮は俺の方が適任だと思う」

……左様でございますか。物騒な兄弟め。


*ジェイリッドとリアンナのなれそめ

夜襲が多くて熟睡できず、王族専用の中庭でお昼寝していたジェイリッドくん(6)にある日うっかり近づいて、まんまと抱き枕にされてしまったリアンナちゃん(6)。熟睡してるのに離してもらえなくて、結局二人でお昼寝状態になったところを発見されましたとさ。

なおその一年後、国王と長男の会話。

「ジェイリッド。そろそろお前の婚約者を決めようと思うのだが」

「リアがいいです」

「いや、アルヴェシオン家以外にも一応候補がな」

「リアがいいです。リア以外ならいらない」

「……そうか」

先にベタ惚れしたのはジェイリッドでした。

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