矛盾
「あなたは……誰なの」
「……」
君はふわっとした髪を靡かせながら言う。
君はその答えを知っているだろう。
「あなたは……何処にいるの?」
「……」
君は仄かに微笑んだように見えた。
君はその答えも知っているはずだ。
「どうして…泣いているの?」
「……」
僕は泣いてないよ。
君が泣いているんだ。その大きな瞳から溢れている綺麗な結晶を僕の頬に落としているんだよ。
「どうして黙っているの?」
「……」
僕はもう話せないんだよ。
「どうし、てよっ…」
「……」
もう君を抱きしめてあげることも出来ない。
「いつも、傍にっ……いてくれるって……ぇ」
「……」
居るよ。傍に居る。これからもずっと居るから。
どうか、泣かないで。君の涙も拭えやしない。
「あなたじゃなきゃ……いやよ……っ」
「……」
僕もだよ。でも、その内きっと。
寂しいだろうけど僕を超える人が現れるよ。
だから、今だけ僕の為に、
僕だけを想って、僕の傍に居てくれ。
笑って、隣に居てくれ。
泣かないで。
僕を裏切り者と、嘘吐きと、
罵ってくれ。
そうやって憎しみで君の心に残れたら。
泣くくらいなら、
僕を忘れてくれ。何もかも全て。
出会う前に戻ることが出来たのなら、
二度と君に近づくことは無い。
こうやって悲しませるぐらいなら、
君と出会わなければ良かった。
でも、きっと。あの日に戻ったらまた僕は君に恋をしてしまう。
記憶があったとしても無かったとしても、
僕は。
君に恋をする。君を追いかける。
そしてまた僕は、
君を傷付ける。
最低な僕。
そんな僕に愛をくれた君。
どうか、笑ってくれ。
・
・
・
もう、いいよね。
僕はもう行くよ。
ありがとう。
僕を愛してくれた君。
その君を愛してくれた優しい人。
どうか、どうか大事にしてくれ。
僕の大切な人を。
僕の代わりに。
僕が君を幸せにするのだと信じていた。けれど、違った。僕は悲しませることしか出来なかった。
彼が、君を幸せにしてくれたんだね。
僕でない彼の隣で、
笑顔の絶えない君を見るのは、
もう辛いよ。
ずっとそばに居るって言ったけど、
もう彼が居るから大丈夫だよね。
「ありがとう。……またね。」
君が、僕を見てそう言った気がした。
最後に視界に映る君は、
出会った時のような、
花が綻ぶような、
僕の大好きな彼女の笑顔だった。
僕に向けた笑みなのかは分からない。
それでも。本当に愛していた。
きっとこれからも愛し続ける。
生まれ変わるとしても、また君に恋する。
君を愛してしまう。
それをわかっていたのだろうか。
また傷付けてしまうかも知れないのに。
ああ、本当に愛している。
君以外は要らない。
次こそは幸せにする。だから、
また会おうね。




