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2/5

#2ゲームスタート

7/25


エアコンは良い。夏休みは良い。

今日から夏休みだ。

いつもなら学校にいる時間に目を覚まし、そのままベッドの上で本を開く。

そうこうしていると、いつの間にか13時を回っている。

怠惰だ。非常に怠惰。怠惰を謳歌していると腹が減る。

雫とゲームする前にご飯を済ませてしまおう。

今日は14時からゲームをしようと約束していた。

私としては朝からやりたかったのだが、雫が午前中は部活だと言っていたので仕方がない。

そう思いながら、チャーハンを作る。私は料理は好きだ。食べるのも作るのも。

特に中華が好きで、チャーハンをよく作る。別に手抜きというわけではない。

具材は玉子とハムだ。中華感が無いが手抜きではない。

5分で作って15分で食べる、約束の時間まであと30分近くもあるのでもうちょっとさっきの本の続きを読もう。

自室にもどって本を手に取るがゲームが楽しみでソワソワする。

この本は一回読んだことがあり、一言一句覚えているからと1行も読まずに閉じてしまった。

時間はまだあるが、雫より先に初めてしまおう。キャラメイク。キャラメイクだけ。

そう思い、私はヘルメット型の機械をかぶり、マウスピースのような機械をくわえた。

この2つで一つのゲーム機だ。名前をmagic。

magicのマウスピースをぐっと強くかむと機械が起動し、現実の体は眠りに入りゲームの世界へと飛ぶ。

この感覚は不思議なもので、例えるならクロロホルムを吸わされたかんじだろう。やられたことはないが。

小さな白い部屋にまず飛ばされる。

壁にはゲームアイコンがあり、そこから遊ぶゲームを選ぶ。

私は迷わずHOLEを選ぶ。


いきなりゲームの世界の説明が始まった。

内容は実に簡単なもので、




大きな大陸に太古の時代に大穴が開きドーナツ状になったこと。

人間族、エルフ族、獣人族、魔人族の4種族が存在し、それぞれに領地があること

仲の悪い種族はあるが大穴の「恵み」により、戦争はしていないということ、

そして世界には大穴を探求するプレイヤーがいるということ




ざっとまとめるとこんな感じだった。


そしてお待ちかねの

キャラメイク画面である。


--------------------------------------------------------------



【人間族】 

 太古に栄えた「街」にすむ種族。

  ステータスは平均的だが人間族にしか扱うことができない武器(銃火器など)がある。

  生産スキルすべてにバフがかかる


【エルフ族】

 森と妖精とともに生きる種族。

  魔人族ほどではないが魔力値が高く、獣人族ほどではないが素早値が高い

  生産スキルのうちポーション生成にバフがかかる


【獣人族】

 体の各部位に獣の姿を宿し山に住む種族

  素早値と攻撃値が非常に高い

  魔力値が低い


【魔人族】

 荒野に住み、世界の大穴を神聖視する種族。

  魔力値がずば抜けて高く、素早さも高い。

  攻撃値が低い。



--------------------------------------------------------------


この4つから選べる。

事前に仕入れた情報では、人間か獣人を選ぶプレイヤーが多いらしい。

この画面のあとに職業を選ぶことになるのだが、このゲーム魔法職は使い勝手が悪いと評判だ。

そのために、エルフを選ぶなら獣人族か人間族になる。魔人族は論外らしい。

しかし使い勝手が悪い理由を聞くに、私にとってはむしろ使い勝手がいい職業の様だった。

それは、魔法の発動呪文が長いというもの。

HOLEというゲームにおける魔法の発動は、呪文の詠唱であり、その詠唱が長ければ長いほど強いものが多いらしい。そして呪文も大量にあり、まだ確認されてない呪文も多いらしい。

そのため暗記ゲーの魔法職の絶対数は少ないらしい。

事前に情報はあつめたが、やってないから「らしい」という他ない。

だが、暗記が特技の私にはもはや天職と言っていいだろう。

迷わず魔人族をタップした。


そしてアバターだが、ベースは現実世界の顔や体で

髪の色や肌の色などを選択できる。

その他に種族に合ったキャラメイクができる。

魔人族を選択すると牙の長さや耳の長さ、角の有無とそのデザイン、尻尾の有無とそのデザインを選択できるようだ。

とりあえず、髪は白にした。白髪かっこいい。

目の色は赤。角は羊の角みたいなデザインがあったが無を選んだ。

尻尾は先がハートになっている悪魔の尻尾みたいのを選んだ。可愛い。

これで私のキャラメイクはこんなところだろうか。

髪の色はゲーム内で変えられるし、尻尾とかは課金すればまた選択できるのでとりあえずこれで満足している。

強いて言うなら、胸部を膨らませることができるようにしてほしかった。

キャラメイク終了の文字をタップした。


すると、「魔人族領」に飛ぶか、「共闘の港」に飛ぶかという選択肢が出た。

これは、初期位置だけではなく、「所属」にも関係あることだ。

4種族の領の他に「共闘の港」という全種族が混在している所属がある。

自国領に所属すると全ステータスに5%のバフがかかり

逆に共闘の砦に所属すると、全ステータスに5パーセントのデバフがかかるらしく、いくつかのクエストを終わらせるまでは、デバフが消えない。


普通なら迷わず自国領(魔人族領)を選ぶところだが、雫が人間族を選ぶという理由で「共闘の港」にした。

多分自分と同じ理由の人の為にこの共闘の港という所属があるのだろう。


そして最後にハンドルネームだ

私はゲームでの名前は必ず「林檎」にする。

本名の「宮木りんご」という名前は気に入っている。だから名前の部分を漢字にして使っている。


決定をタップするとまた視界が暗転した。


サーっと聞こえる波の音、赤い壁の建物、照り付ける太陽。

照り付ける太陽・・・・・・。

リアルでも熱い。こっちでも熱いのか・・・・。

すこしがっかりしていると


「林檎はやいね!!」


声の方に視線をやると、灰色の髪に青色の目の雫がいた。


「早いって雫もだろ」

「イヤー楽しみでね、部活終わってシャワー浴びて、ご飯食べずにすぐ入っちゃった。」

「まぁわかる」

「あ、そうそうゲーム内だと私、dropって名前だからよろしくね。」

「ドロップってまた安直な」

「林檎に言われたくないな。まぁでも2人の時は雫でもいいよ」

「了解、雫」


さて、雫と合流できたしどうしようか、まずは町の観光にでも行きたい。攻略サイトで見たマップだと初期スポーン地が今いる場所で、この通りをまっすぐ行ったところに広場があったと記憶している。

とりあえず広場に行ってから考えることにしよう。


「雫、とりあえず広場にいってみよう」

「いいかも、さっき広場に行ってみたら何かのイベント予告があるらしくて、人がいっぱい集まってたから。」

「へー、イベントか。まぁまだレベル1だから、まずレベリングしないと何もできないけどね。あと装備もそろえてないし」

「よし、じゃぁ広場を無視して、フィールド単作に行こう」


雫は、ゲームになると多少活発になる気がする。普段から、明るい娘ではあるがゲームとなると3割増しではじける。

とはいえ、それは私もで、早くフィールドに出たい気持ちは同じだ。


「そしたら2人だけどパーティーを組むか。」


私はそういった。

パーティーを組むとステータスにバフがかかる。

このシステム故、初期からパーティーをつくるプレイヤーが多い共闘の砦所属のプレイヤーにはバランス調整のため、初期のデバフがかかっているのだろう。

プレイヤーの所属の人口を均等にする意味もあるのだろうが。


パーティーは最大5人。

バフは5人パーティなら全ステータスに5パーセント。

私たちのパーティーみたいに2人なら2パーセントだ。

渋い。最初からデバフが5パーセントかかっていて、5人パーティーを組んでやっと打ち消せるレベルだ。

だけど、あるかないかで結構変わってくるだろう。


「申請したよ。」


その雫の声と同時に私の目の前に「このパーティ申請を受理しますか?」という文が出た。

「OK]を押すと。視界左上にある自分のHPバーの下に雫のハンドルネームであるdrop、種族:人間と出て、さらにその下に雫のHPバーが出た。


「やっぱり種族は人間にしたんだ」


雫は裁縫だとか料理だとかハンドメイドだとかを趣味にしてるから、物作りが有利になる人間族を選ぶと思っていた。


「そういう林檎は、やっぱり魔人族だね」


このゲームの魔法システムは雫もしっていたし、私の性質上この種族を選ぶのは想像に容易いだろう。

そうこうしているうちに、人が密集していた広場を突っ切って、草木が混じる荒野に出ていた。

そこであわてて私たちが武器を装備していないことに気づく。

メニューの武器覧から《新平の鉄剣》を取り出す。

ずっしりとした重みが手にかかる。

雫も《新平の鉄剣》を取り出したようだ。

無数に武器があり、武器種も豊富なこのゲームだが、初期に配布される武器はかならずこれだ。

所持品の説明欄で《新平の鉄剣》の説明を見ると


《新平の鉄剣》

この世界で一番素朴な武器。

何の変哲もない新しい鉄剣。

STA+5


とある。

私も雫も剣を使う気はないので、今回かぎりだろう。


ついでに私のステータスも見る


--------------------------------------------------------------



【プレイヤーネーム:林檎】

種族:魔人族

Lv:1/100

武器:《新平の鉄剣》

HP:9

MP:31

攻撃力/STR:8(+5)

魔法力/INT:21

防御力/VIT:15

俊敏性/AGI:18

器 用/DEX:15

 運 /LUK:15


称号

【魔術師Lv-1-】【共闘の砦】


--------------------------------------------------------------


そして次は雫


--------------------------------------------------------------



【プレイヤーネーム:drop】

種族:人間族

Lv:1/100

武器:《新平の鉄剣》

HP:10

MP:15

攻撃力/STR:15(+5)

魔法力/INT:15

防御力/VIT:15

俊敏性/AGI:15

器 用/DEX:21

 運 /LUK:15


称号

【技術者Lv-1-】【共闘の砦】


--------------------------------------------------------------


まぁレベル1なんてこんなもんだろう。


「そろそろ狩りにいこうよ、あの兎なんていいんじゃない?」

「どれどれ」


雫が指さす方を見るとベージュの毛並みの普通よりちょっと大きいくらいの兎がいた。

確かにあの兎はちょうどいい、目に力を入れて兎を見るとHPバーと種族名、レベルが出る。


【ウィルダネスラビット:Lv3】


直訳すると荒野の兎。

ここあたりで最弱のモンスターだ。


「私が魔法詠唱するからそれと同時に走り出して。」

「わかった」


魔人族が初期で使える魔法は3つ。


火球を打ち出す【ファイア】

氷柱を飛ばす【アイシクルランス】

回復呪文の【キュア】


かっこいいのはやっぱり氷柱だろう。

剣を杖に見立てて兎に切っ先を向け、詠唱を始める。

両目がぐっと熱くなる。


《凍てつく氷柱は汝を襲う 穿て アイシクルランス》


初期の呪文なので詠唱文が短い。

そして、この中二心をくすぐる感じは癖になる。

生み出された氷柱は兎の方に向かって一直線だ。

そこそこ離れていたので当たらないと思ったがこの魔法、結構飛距離がある。

氷柱が当たり兎のHPバーは半分になる。

そして呪文詠唱と同時に走りだした雫のつたない剣が兎の体に振り下ろされる。

兎のHPバーが0になり兎の体が消し飛んだ。

画面左下に

【経験値5】

【10ゴールド】

【兎の皮×1】

と表示された。

経験値と金とドロップアイテムだ。

最弱モンスターだし、この程度が妥当だろう。ステータスのLUKを上げれば多少は変わるだろうが。


「次の兎はやく狩ろう」


雫がそういうままにしばらく、港周辺の荒野で兎を探しては狩った。


ごめんなさい、まだ囚われません。

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