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これは優しいお話です  作者: aー
7歳 家族になりましょう
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おとーさんが大変です

 ここのところ毎日のように見守り隊なる人たちからの贈り物を頂いています。

 正直言ってありがたいのだけど、どれもこれも子どものための玩具やお洋服ばかり。

 もうね、ママゴトセットとかどうすればいいのって感じなんだけど、子ども用の使い古された絵本は助かった。この世界にも希少だが本はあるようで、絵本といえどとても高くて手が出せなかったのだ。下手をすると一冊の絵本が二か月分の食費に相当することも珍しくないからだ。

 絵本を使って少しずつこの世界の文字を覚えているのだけど、流石に毎日色々貰うのは困るので、もうやめてくださいとお願いに行った。

 大家さんの家で超ヘルシークッキーを焼いてハンカチに包んだ。この世界では砂糖がとても貴重で高くて、しかもバターも一部の商店で高額商品として売っている程度。牛乳だって中々手に入らないし卵も高価だ。本当に、なんて日本は便利だったのだろう。

 お菓子も高価なものになるので、今日はお砂糖を使わないお菓子を考えた。

 昨日、ラティーフの仕事帰りに市場で完熟になった一本のバナナを発見したのだ。大家さんにお願いして薄力粉っぽい何か(多分薄力粉だと思う)と、バナナと、オリーブオイルと少しの塩だけで作った赤ちゃんでも食べられるクッキーだ。

 オーブンの使い方がまだ難しくて、少し焦がしてしまったけどなんとか食べられる味になった。貰ったハンカチに刺繍をして包んでギルドに持って行く。

「あの。ギルドマスターはいますか?」

 いつも通りフードで顔を隠していたが、受付の人は私の名前を聞くとギルドマスターを呼んでくれた。

「おお、どうした俺の可愛い子」

 あんたの子どもじゃないと言いたかったが、ここはぐっと我慢だ。

「こんにちは、アーシェおじちゃま」

「こんにちは、リーナ」

 アーシェは私に視線を合わせようと、すっと腰を落としてくれた。こういうところは紳士だ。

「いつも、いろいろくださってありがとうございます。これ、つまらないものですが、お礼です」

「なんと!」

 これでもかと目を見開いて感動に打ち震えるアーシェ。ちょっと怖い。

「あの、あのね、アーシェおじちゃま。いつも、いろいろくれるのは、本当に嬉しいの。でも、もういいから、あの、これ以上はもういいので」

「うん?」

「わたし、十分すぎるほどもらいました。だから、もう大丈夫です。おじちゃまたちのキモチは、十分伝わって来たの。だから、もうこれ以上わたしを甘やかさなくていいの」

 その時のアーシェは言葉で表現できない程いろいろ凄い顔をしていた。


 夕方、ギルドからラティーフが出てきて微妙な顔をしていた。

「お帰りなさい!」

「・・・おう、ただいま」

「あれ? お父さん、もしかして、ケガしているの?」

「あー・・・・いや、大丈夫だ」

 また無理をしたのだろうか。この人はなんだかんだと無理をするきらいがある。

「そうだリーナ。お前変な奴に近づいたりしていないだろうな?」

「変なやつ? あ、今日ギルドマスターに会いに行ったよ。いっぱい服とか貰ったから、お礼をしなくちゃと思って。でももうプレゼントはいらないって伝えたよ」

「そう・・・そうか。うん、いい子だな」

 うん? 今なんか変な間があったような気がしたけど。ま、いっか。

「リーナ」

 その時ラティーフの足が止まった。私も足を止めて彼を見上げる。

 顎の下に痣が出来ていて痛々しかった。

「どうしたの? やっぱり、痛い?」

「いや、これは仕方のない事だから・・・・リーナ、すまん。俺が勝手に手続する時にお前とちゃんと話をしていなかった。勝手に家族になって、お前は後悔するかもしれないのに」

 おっとどうした。なぜいきなりそんな深刻なお話し?

 よくわからないのでとりあえず首を傾げておく。

「どうして、そんなこというの?」

「俺は、お前の誕生日が分からず、とりあえず拾った日を誕生日にして七歳で届け出た」

 ・・・・・うん? 七歳? え、七歳?

「そうしたら今日、ギルドマスターに誕生日も聞いていないなんてと怒られてな」

 そういえばちゃんと話したことなかったな。

 そうか、私は今、七歳なんだ。

「ぶはっ」

「ん? どうした、リーナ」

 私、今、七歳! そうか、だから皆子ども扱いするんだ。ひーっ、おなかいたい!

 そうか、私はまだ子どもなんだ。それなら、子どもでいていいんだ!

「ううん。うれしい。お父さん、ありがとう!」

「お、おう?」

 けらけら笑い続ける私に困惑したようだったけど、ラティーフは少しはにかんで笑った。

「お父さん、今日のごはんなに?」

「おう・・・・たまには食堂でもいくか」

「えっ」

 そんな、ご飯くらいつくるのに。外食なんて高くついちゃうのに。

「お前がもっと、外に出られるようにしねえといけないからな」

 くしゃっと頭を撫でてくれた大きな手が暖かくて、心がほっこりした。


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