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これは優しいお話です  作者: aー
7歳 家族になりましょう
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自称パパ現る

「おい、ギルドマスターさんよ。あんた俺の娘捕まえといて何ふざけてんだ? ああ?」

 私は突然現れた男に抱き上げられて「娘にする」発言に驚いたのだけど、少し離れた場所からラティーフの低い声が届いた。

 あれ。今度はこっちに怒ってる?

「ゆっとくがな、リーナはすでに俺の娘として申請して通ってんだよ。正真正銘俺の娘だ。てめえにくれてやるわけがねえだろうが、ああ?」

 ラティーフ、なんだか今日は口が悪いような・・・いやいつもぶっきらぼうだけど。

 って、ちょっとまって。今なんか大事なこと言わなかった?

 それってつまり、養子縁組が成立してるってこと?

「ラティーフさん・・・リーナの、おとうさんなの?」

 ラティーフがわずかに照れたように目元を赤くして、ぶっきらぼうに「おう」と答えた。

 なんか、知らん間に家族になっていたようだ。

 いや言おうよ、それ結構大事な話じゃないか!?

「ラ・・・・・・おとう、さん?」

 こてんと首をかしげると、ラティーフが両手で顔を覆って震えだした。いやどうしたのよ!?

「うわあ・・・お前そういう奴だっけ。気色悪いな」

 なんか近くでアーシェって人が呟いたけど聞かなかったことにしよう。

「どうしたの、おとうさん。ないているの? リーナが、いけないの?」

 いままでラティーフがこんな反応をしたことはなかった。どうしたというのだろうか。

「どこかいたいの? おいしゃさまに、みてもらう?」

「いやまあ、痛いっちゃあ痛いわな」

 アーシェがそう言うので、思わず髪の毛をがしっとつかんだ。

「いたっ」

「アーシェおじちゃまが、おとうさんをいじめているの?」

「いやいやいや!? そんなことしない! 俺は誇り高いギルドマスターだぞ!?」

「じゃあ、どうして泣いているの?」

「あー・・・感動してるんだろう。はじめて君に父親として見て貰えて」

 なんだって?

 感動して顔を隠して震えながら泣いていると?

 なにそれちょっと面白・・・じゃなかった。結局私が原因じゃないか。

 アーシェに下してもらい、とことことラティーフの所まで歩いていく。

「おとうさんって、呼んでいいの?」

「・・・・ああ、俺はもう、お前の親父なんだからな」

 この世界で初めての家族が、本当に家族になっちゃった。

 年甲斐もなく(今は子どもだけど)本当にうれしくて、思わずぎゅうっと抱き着いた。

「うん、ありがとう」

 ぱちぱちと、どこからか手をうつ音がして顔をあげるとアーシェが手を叩いていた。

「おめでとう、リーナ」

 とても暖かな瞳で私を見つめるアーシェは本当にいい人なんだろう。

「おめでとう、ラティーフ」

「・・・おう、ありがとうよ、ギルドマスター」

 ラティーフも嬉しそうだ。

「そしておめでとう、俺!」

 ・・・・・・・は?

「こんなに愛らしい娘ができるなんて、なんて幸運なんだ、俺! さあリーナ。遠慮せずに俺のことはパパと呼びなさい!」

 ・・・・へ?

 茫然としていたらラティーフや、いつのまにか来ていたらしいラティーフの友人であるフェリコスとアレグリが思い切りアーシェを殴りつけていた。

「俺らの可愛いリーナに変態発言かましてんじゃねえぞ!」

「てめえ、俺らの可愛いリーナの耳が汚れるだろうが!」

 えーと・・・まああれだ、見なかったことにしよう、うん。

「ら・・・あの、お、おとうさん。おなかすいた」

 言外に早く帰ろうと伝えると、ラティーフはああ、と頷いて私を抱きかかえた。

「グリノラ。次、俺の娘をけなしたらてめぇは敵だ。覚えとけ。俺の大事な家族を侮辱すんじゃねえぞ」

 まるで視線だけで人を殺せそうな怖い顔をして、最初の男にそう言ったラティーフは、もう二度とその人を振り返らずに歩き出した。

 グリノラと呼ばれた男は茫然としていたけれど、寂しそうに瞳が揺れていて、いつまでもラティーフを見つめていた。

 そうか、きっとこの人は寂しかったんだろう。だからあんな言い方をしたのかもしれない。根は悪い人じゃなかったのかも。

 私はそんな印象を受けたのだった。



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