招待
子どもの成長ははやい。自分でもそう思うのだからまわりから見ればさらにそうだろう。
「どうした、リーナ」
「お父さん・・・」
私はあと一月ぐらいで、書類上十歳になる。
その誕生日の月に、どうか会えないだろうかとアレクから手紙を貰ったのだ。
プレゼントとして今の私に丁度良いサイズの旅装束と路銀を送って来た。毎回思うけど彼はどうやってサイズを把握しているのか・・・・
「行くのか?」
「・・・わからない」
ギルドを通して護衛を借り受けて時間をかければ、彼がいる王都まで向かうことは出来る。でもそのためにはあの森を通らないといけない。
「アレクセイがリーナに会いたいと言ったのには理由があると思う」
はて、この父はアレクの味方だったのか?
「でも、もうずっと会っていないわ」
「だからだろう。たまにはリーナから歩み寄ってもいいんじゃないか?」
うーん。それはそうなんだけど、よわい十歳にして将来の嫁が会いに行くって結構意味深というか、もう逃げられない状況作られているような気がしてならない。
「滞在先はどうするんだ?」
「アレクが用意してくれているって」
「そこまでしてもらったなら、行ってくればいい」
「でも・・・」
あなたの、その間の食事とかどうするの? と真剣に考えてハタと気付く。そうか、そのあたりはシシリーに頼んで、二人の仲が進展するようにすればいいのか!
シシリーが誰を想っているのかなんて街中の人が知っていることだし。気付いていないの想われている本人だけだし。
ここらでそろそろ進展があっても良い頃かもしれない。
「うん、わかった。わたし、王都に行ってみる。ついでに王都で今流行っているものとか、必要とされているものを確認して次のお仕事につなげるね!」
「え、あ・・・ああ・そうだな・・・・いや、普通に会いに行ってやればいいのでは・・・」
「しないよ!」
「そうか・・・」
なんだか呆れられたような気もするけど、まあいいわ。そうと決まれば冒険者ギルドに行かなくちゃ!
そして一時間ほどして冒険者ギルドにたどり着いた私は、しばらく旅に出ること、冒険者を護衛として雇うこと、なによりも行儀見習いをお休みすることを伝えた。
「・・・そうか、わかった。冒険者は信用のおける者を用意するから安心しなさい。行くだろうことはわかっていたからな。見習いの件は任せなさい。ただ、気を付けていくんだぞ。あの森は危険だからな」
「はい、アージェおじ様」
奥様たちは最後まで心配していたけれど、勉強も兼ねて行きますと言ったら何やら微妙な顔をされた。
「奥様、賭けはわたくしの勝ちでございますね」
「いいえ、まだわからなくてよ」
なんの話なんだろう?
そして四日ほどで私は王都へ向かう準備を終えたのだった。
正直、こんなに簡単に決めていいのかわからない。でも、彼が今どういう気持ちなのか、今後どうするのかはずっと気になっていたから。
もし幼い時分のことを未だに気にしているのなら、私はもうその必要はないのだとちゃんと伝えたい。
彼に、彼の人生をちゃんと歩んでもらいたい。
贖罪ではなく、純粋に生きてほしい。
それを伝える必要があるのか、私は見極めたいと思った。




