星祭りのプレゼントは
この世界に来てもうずいぶんと時間が経ったようだ。
小さかった背も、少しずつ成長している。
去年の星祭りにはアレクがそばにいて、一緒にプレゼントを探してくれた。
でも今年は帰れないという手紙が届いた。美しい刺繍のリボンと共に。
「今年のプレゼントは、なににしようかしら」
ふとそんなことを呟くと、近くでもぞもぞと護衛たちが動く気配がした。
珍しいことも有るものだ。
「お嬢さん、ちなみにそのプレゼントは、坊ちゃんたちにも差し上げるのですか?」
本当に珍しい、普段は無駄口を好まないネッドがわざわざ問いかけてきた。
でも確かに、いつもいろんなものをくれる見守り隊のメンバーにもお返しは必要よね。
「・・・そうね、そうしようかしら。買いものに行きます」
「おともいたします」
なぜかホッとした様子で彼は頷いた。
いつも護衛してくれている彼らにも何か用意しようと心に決めた。
とはいえ、ギルドの年会費で結構散財したから今の手持ちはあまりない。でもたくさんのプレゼントが必要だからと考えて、じゃあ久々にお菓子でも作ろうと思った。
「ネッド、あのね、アレクに、プレゼントを送りたいの。生ものってやっぱりダメかしら?」
「おすすめしません。日数がかかりすぎるので」
「・・・そうよね」
森を抜けるだけでも大変なのだ。やっぱり焼き菓子とかは無理だよね。
綺麗なリボンを貰ったからなにか返さないと失礼だろうし・・・
と、考えてハタと気づく。
私も刺繍で返すとかダメかな?
「本日はどちらまで」
「お菓子の材料と、ししゅう糸を」
「刺繍ですか・・・よろしいと思います。奥様が刺繍を好まれますので、ご教示頂いては?」
「ありがとうネッド! そうするわ!」
これでなんとかなるかな。あ、でも刺繍は急がないと!
これから大変だ!
私はふふっと笑って歩き出した。
その後奥様が、アレクにプレゼントするのなら黄色い薔薇の刺繍になさい。きっと喜ぶわと言われて、頑張ってちくちく縫った。
一つ分かったことは、私はこういう作業に向いていないということだけだった。
かなり不恰好になったけれど、私はなんとか刺繍したハンカチを用意できて、お手紙と一緒に飛脚便で送った。
これなら二週間前後で相手まで確実に届くんだって。
かなりの出費になったけど、アレクにはいつも綺麗なものを貰っているからこのくらいはしないとね!
「リーナ、アレクになにか送ったのか?」
「うん。奥さまにね、ししゅうを習ったの」
「ほう、何を縫ったんだ?」
「黄色のバラ! 奥さまがそうしなさいって」
ぶっふぉっ!! と父がいきなりすごい勢いで噴出した。
びっくりしたー。いったい何事?
「そ、そう・・・げほ。そうか、うん・・ああ・・・・・そうか・・・ああ、うん」
どうしたのかしら?
「だいじょうぶ?」
「・・・ああ、だい・・・じょうぶ・・・だ・・・ちょっと、トトリに行ってくる・・・今日は、先に寝ていなさい」
あら珍しい。お酒が飲みたい気分だったのかしら?
「うん、わかった。いってらっしゃい」
よろよろと今にも倒れそうな様子で出て行ってしまった。
本当に大丈夫かしら?




