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これは優しいお話です  作者: aー
14歳 王都
318/320

ヴィルドラの一日 sideヴィルドラ

色々酷いですが、許せる方だけご覧ください。

リーナの妹テラのひっつきむしヴィルドラさんの日常です。

 朝は日が昇る前に起床。

 不審者がいないか夜警から報告を受け、本日のテラ様のご様子を確認。

 腹と足を出して眠られていたので、そっと布団を直す。

 今日も良いお顔で眠られていて安心した。

 その後日課の鍛錬に励み、後輩たちを全力でのしたら、テラ様の朝食だ。

 本来ならばシェフが作るのだが、時々は私が作る。

 シェフの作るものは美味しいが、テラ様には少々遊び心が足りないと思うのだ。もっとテラ様が喜ぶものをお出ししなければ。

 その後、野菜を煮込む間に簡単に朝食を済ませる。

「あんた、よく朝から肉の塊ばかり食えるな」

「テラ様をお守りするためには、きちんとした食事を心がけなければ」

 厚切りのホーンラビットのステーキを二枚と、丸パンを十個。野菜たっぷりのサラダにスープを出してもらい、ぺろりと食べきった。

 腹八分目がちょうどいい。

 テラ様のスープも完成したので、朝食会場に運ぶ。

 テラ様は朝が苦手でよくぐずるが、そこがまた元気があって良い。

 あやしながらスープを口に運べば、

「ヴィルくんじゃま」

 と頬をけられた。

 まだまだお小さい足が、なんとも力強くなってきたことだ。良い。

「お口をあけてください、今日はテラ様の好きなトマトのスープでございます」

「とまとや。あきた」

 ぷいっと顔をそむけるテラ様。なんて愛らしいのだろうか。

「テラ、好き嫌いはだめよ。ほら、あーんして」

「あーん」

 義理の姉が差し出したトマトスープをぺろりと平らげたテラ様。良い。

 だがこの義理の姉たるリーナは本当に邪魔だ。

 テラ様にあーんをするのはこの俺だというのに!

 ジェラシーを覚えつつ、本日の朝食は終了した。


 昼。

 庭で思い切り遊んだテラ様は少しだけお休みになり、それから昼食。

 テラ様がお休みの間に俺も食事を頂く。メニューは朝と同じだ。

 しかし美味しいので飽きることはない。

 ただ残念ながら、今日のテラ様の昼食はシェフが作った。

 悔しかったのであーんはゆずらない。

「テラ様、あーんでございます」

「ヴィルくんじゃま」

 邪険にしてくるテラ様、可愛い。

「そうおっしゃらず、ほら、テラ様のお好きなコーンのバター添えでございます」

「・・・ヴィルくん。おんなはひび、せいちょうするのよ。いつまでもコーンがすきなわけじゃないわ」

 なんてことだ!

 まさかこれが反抗期!

 成長しているテラ様、良い。

「まあテラ。お姉さまもコーン好きよ。あなたは嫌いかしら?」

「てら、コーンすき! おねえちゃまはもっとすき!」

 ちっ!

 まあいい、テラ様が食べてくださったので許してやろう。


 夕方。

 テラ様の夜は早い。

 まだお小さいテラ様は、いっぱいお休みならないといけないからだ。

 先に湯あみを済ませたばかりのテラ様は、愛らしいワンピース姿で専用のテーブルについた。

 子供用の椅子にあがるさいは、手伝ってはならない。

 なんでも自分でやりたいお年頃なのだ。

 しかし転倒の危険があるため、後ろで待機した。

 この時ばかりはあまりご家族とは食事をしないテラ様の時間は独占できる。

 一日の中で二番目に好きな時間だ。

「テラ様、本日のご夕食は、ホーンラビットを使ったミルクスープでございます」

「おいしそう!」

 いつにもまして輝くテラ様の笑顔。良い。

「あーん」

 ああっ、自分からあーんをねだるテラ様!

 幸せな気持ちを噛み締めて、丁寧に食べさせた。

 デザートのフルーツまで食べきったテラ様は、次第にうとうとされ始める。

 いつものことだ。

 寝ぼけているテラ様に手ずから歯磨きをしてやり、汚れが残っていないことを確認してベッドへ運んだ。


 夜。

 一日のあいだで最も好きな時間だ。

 テラ様は、完全に寝入るまで俺に抱っこをのぞむ。

 ゆっくりとやさしく揺らし続けると、幸せそうな顔で眠るのだ。

 願わくば、彼女が優しい夢を見られますよに。

 そう心から祈りながら、小さな淑女の眠りを見守った。


 深夜。

 かるく軽食を頂いた後、もう一度だけテラ様のご様子を確認して就寝。

 今日も良い一日だった。


「なあ、俺よりこいつの方が絶対ヤバいと思うんだけど」

「ネッドはネッドで十分変態だよ。変態の方向性が違うだけだから安心しろ」

「いや、どこを安心すりゃいいんだよ・・・」

 そんな会話が聞こえた気がしたので、ナイフを投げて黙らせた。


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