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これは優しいお話です  作者: aー
14歳 王都
296/320

アレクが別の意味でも強くなってる

 アレクは、わたしが求めたローブを見事ゲットしてくれた。

 さすがアレクだと心から褒めたら、彼は周りの人が固まってしまうほど綺麗な笑みを浮かべ、わたしの前に跪いて左手にキスを送ってくれた。

 やはり彼は生粋の騎士なのだ。騎士に戻らないなんてもったいない。

 昼間、新しい王太子(まだ立太子してないから予定だけど)と話をしたはずだけど、その結果は聞いていない。

「アレクはやっぱり、わたしの騎士さまね」

「ありがとう。ついでにこれにサインしてくれると嬉しいかな」

 どこから取り出したのか、この世界で言う婚姻届け。

・・・あれ、こんな性格だったっけ?

「すごいわ、どこから出したの?」

「手品、覚えたんだよ。君の妹分が何度もねだってくるからね」

 すごい? と聞いてくるので、遠慮なくほめたたえる。

 先ほどまでの綺麗な笑みと違って、照れたような笑みを浮かべるアレク。

 周りをみて、ちょっと奥のオジサンが開いてはいけない扉を開けて鼻血を出しているわ。ああ、あっちのお姉さんは心臓のあたりを抑えて・・・近くの給仕は顔を真っ赤にして彼を見ている。

「アレクは罪づくりね」

「今そんな話だったっけ?」

 もちろん、雪国の可愛い妹分であるホノのことは今でもよく覚えている。

 やっぱりそろそろ会いに行かなくちゃ。

 アレクは、ジェスとも友人になったそうだ。

 当初は存在そのものを無視していたが、ジェスの置かれた状況や、わたしが許したことをまわりの女性たちに教えられて、少しずつ声をかけるようになったのだとか。

 今では友人として、時々お茶を飲む仲。

 アレクにお友だちができて本当に良かった。

「そうだわ、そろそろ時間なの。憲兵隊のほうへ行ってもいいかしら」

「いいよ、これは渡しておくね。私の方はもうサイン済みだから、あとは提出するだけだよ」

 なぜか渡された一枚の婚姻届け。いや、物理的には軽いのにめっちゃ重いな、この紙。というかアレク。冗談が重くて笑えないんだけど・・・

 そっと物陰の黒服2に渡そうとして全力で拒否られた。

 解せぬ。

「ねえ、アレクは結局もどってくるの?」

「君のもとに? そうだね、この前ゲリュオンを討伐したんだけど、まだ一人では倒せなかったんだ。もう少し、いつでも君の隣に戻るよ」

 ゲリュオン? まって、強さがわからない。

え、これって冒険者ジョーク?

「わたし、魔物って見たことないからわからないの。そのなんとかっていうのは、どういう魔物なの?」

「そうだね、少し大きい牛みたいな生き物だよ。人間のような頭を三つ持っていて、腕も六本あって、尻尾には毒があるんだ。雪がたくさん降る時期には現れないんだけど、今年は暖かかったからかな、他所から移ってきたみたいでね」

 顔が三つもあったら、なんか逆に不便そうだなと思いながら聞く。

 そっか、この世界ってファンタジーだった。

 最近まで城で大変だったせいか、人間以外の生き物がイメージしにくくなってる。

「翼を落とさないと飛んで逃げてしまうから、ちょっと手こずったな。素材は高値で売れたけど、おいしくはなかったよ」

 いつの間にかアレクが立派な冒険者になっていて驚く。

 昔はあんなにお坊ちゃんだったのに、今じゃ魔物も食べるようになったのか・・・

「手品もできて、怖い魔物も倒せて、アレクってなんでもできるのね」

「うん、君をお嫁さんにすることだけが、今のところできなかったことかな。稼ぎには自信があるから、いつでもお嫁さんになってくれていいんだよ」

 いっぱい魔物を狩ってくるねと爽やかに言われても、なんて返せばいいのか・・・

 今だかつて、こんなにも返答に困ったことはなかった。

「アレクって、ネッドとどっちが強いの?」

「殺し合いならネッドさんには勝てないよ。でも、君を想う気持ちは誰にも負けないよ」

 どこか獲物を狙うような目で見られたことが、一番新鮮だった。


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