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これは優しいお話です  作者: aー
14歳 王都
295/320

アレクセイが大人になってしまった

 優しい空気はそのまま、まさかここまで背が伸びるなんて。

見上げると首が痛い。

 男の子の成長って早いのねと感心してしまう。

「リーナ」

 優しくエスコートする彼の手は、昔と違ってひび割れているが大きく、少し冷たくざらざらしている掌が、丁寧にわたしの手を包んだ。

「会えて嬉しいわ、アレク」

 夜を照らす明かりが眩しいくらいだった。

「ああ、私もうれしい」

 にこにこと笑うアレクの顔をみて、なぜか近くにいる人たちが顔をしかめた。

「お知り合いなの?」

「・・・向こうで、冒険者仲間をしている。ときどきパーティーを組むんだ。雪の中では一人は危険だからね」

 王都へも一緒に来たらしい。アレクが冒険者だなんて。

 いや、わたしも冒険者の資格は持ってるけど。

「わたしも冒険者になったのよ! 今度一緒にお仕事しましょう」

「いいよ」

 やった!

 ネッドはダメっていうけど、アレクなら良いって言ってくれると信じてた。

 ネッドは過保護だから、ナイフを持つことも良しとしてくれないのよね。ちょっと違う方向に飛んじゃうだけなのに。

「おいアレク、俺たちはあっちを見て回るわ」

「ああ、お疲れ。あとで合流しよう」

 アレクはわずか数年で、わたしの頭二つ分以上大きくなってしまったのに、なぜわたしの背は伸び悩んでいるのだろうか。もっと牛乳を飲むべきか。

「アレク、よかったの?」

「もちろん」

 甘やかな表情は相変わらずだけど、どこか余裕が感じられた。

「リーナは前よりもっと綺麗になったね。ほんとうに会いたかった。少しは強くなれたんだ、君に会うために」

「アレクはもともと立派な人よ」

「・・・立派なふりをしていただけだ。私は君の騎士になりたかった」

 その言葉は聞こえないふりをして、わたしは彼の手を引いて歩きだした。

「おなかがすいたわ。何か食べましょ」

 彼は静かに微笑んで足を進めた。

 パンに肉を挟んだもの、焼いた肉、野菜のチーズがけ。なんだか味の濃いものが多いけれど、どれもとても美味しかった。

「アレク、あれは何かしら?」

 冒険者ギルドの近くに、何やら人混みができている。ギルドの出入り口でニタニタ笑う酔っ払いもいる。

「ギルドの出し物のようだね。行ってみるかい?」

 うん、と頷くわたしの手を引いて、彼は歩き出した。目的地では憲兵と騎士が一人ずつ立っていて参加者を見張っているようだ。

「強さを競っているようだね。興味あるかい?」

 冒険者ランクに関係なく参加可能らしい。よっぽど力量に差がある場合は参加を断られる場合もあるそうだけど、基本的にお祭りの見世物として全力で戦うことはない。

 トーナメントの参加者は先に参加料を払って順番待ちをするんだそうだ。勝つごとに賞金が手に入るので、大いに盛り上がっている。途中参加だと取り分は多くないけれど、楽しむために参加する人が後を絶たないのだそうだ。

「今日の二回戦がもう少しで始まるらしいよ。どうする?」

「アレク、勝ったらあれがもらえるの?」

「・・・ああ、もしかして、あのローブが欲しいの?」

 賞金以外にも、武器や冒険者道具がもらえるらしい。わたしが目を付けたのは白地に金糸のお洒落なローブだ。

「次の旅の時に着ていきたいわ」

 でも悲しいかな、わたしに戦いの才能は欠如している。

「・・・次は、どこにいくの?」

「今度はわたしがアレクに会いに行くわ!」

 暖かい時期にと言えば、彼は嬉しそうに笑って頷いた。

「いいよ。任せて」

 彼はそっと手を挙げると、会場の中を進んで参加を表明した。

 冒険者にしては育ちが良さそうな彼に驚く人も多かったけれど、カモにできると踏んだのかいやらしい笑みを浮かべた男たちが何名かいて、わたしはその全員の顔を真剣に覚えていく。

「あいつら全員、吠えずらかけば良いのよ」

「お嬢さん、口悪すぎっす」

 こっそりついて来ていた黒服2があきれたように呟いたが聞こえないふりをした。

「ネッドは?」

「旦那様の護衛っす。今夜はちょっとやっかいな相手との会談があるんで。俺らで我慢してくださいっす」

「もちろんよ、お願いね」

 ネッドはなんだかんだと重宝するからね、仕方ない。

 アレクが無理なく勝ち進むごとに声援の声が増える。

「あのローブはわたしのものね」

「いや普通に作ればいいじゃん。なんであんなのが欲しいの」

「決まってるでしょ、なんか冒険者っぽいもの! ベルノーラのお針子は可愛かったり綺麗なものはいっぱい作ってくれるけど、なんでか冒険者っぽいのは作ってくれないのよね」

 欲しいのに、とこぼすと、小さな返答があった。

「あんたが盛大な家でかます問題児だからじゃね?」

 もちろん、聞こえないふりをしてあげた。

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