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これは優しいお話です  作者: aー
14歳 王都
273/320

ネッドを止めるのに黒服2と黒服3が吹っ飛びました

 少々荒れた夕食時。わたしの髪を見た瞬間切れたネッドを止めるのに、黒服2と黒服3が吹っ飛ぶ事態はあったものの、出されたコーンスープはなんとか美味しくいただいた。

「ネッド。パンを追加してちょうだい」

「・・・お嬢さん、はやくここから帰りましょう? そのご様子を見れば旦那様もお許しくださいますって。ちょっと国王たちが死ぬだけで済みますから、ね? 帰りませんか」

 ちょっとってなんだ、どこがちょっとなんだ。

「だめよネッド、わかるかしら? わたし、今日一日で二年分の稼ぎを叩き出したのよ! これで終わらないわ。もっと搾り取ってやる! 誰も解雇なんてさせないからね!」

 あら、どうしたのかしら。ネッドが顔を覆ってしまったわ。

「まあネッド、お腹がいたいの? 拾い食いはだめよ?」

「じゃあ代わりにあんたを喰っていいですか」

 ダメに決まってるでしょ、この変態が。

「旦那様に報告していいの?」

「俺、死んじゃう」

 めそめそし始めたネッドを横目に、追加で届けてもらったパンを食べる。今の王都では焼きたてのパンはなかなか手に入らないから固いパンだが、これがどうして、コーンスープにとてもあう。

「はやく柔らかいパンも食べたいわ」

「パン屋も閉店しているところが多いですから」

 パッとネッドが顔をあげる。

 あなた、まだまだ余裕がありそうね。

「特急料金の人件費、非常時だから更に割増にしましょうね。ああ、お針子たちは用意できるかしら? 時間がないから、お嬢さんのサイズは女官に聞いたんだけど、ちょっと彼女、最近太ったみたい。完成まで時間がないって言うのに、面倒だわ」

 王太子妃が選んだドレスは、まるで花が咲き誇るような派手で裾の広がったものだった。王妃よりもずっと派手なので、これを着た彼女がどんな目で見られるのか楽しみではある。

「それ、着れますかね?」

「たとえ着られないドレスだったとしても、きっちり仕上げるのがプロですよ。お針子たちの無事は確保できたの?」

「はい、第三拠点にご案内済です。もう張り切ってますよ。ただ時間的に刺繍が間に合うかどうかって言ってます」

「ご褒美たっぷり用意するから、頑張ってもらってちょうだいね」

 ネッドがすごくイヤそうに頷く。なによ、文句あるの?

「俺にはご褒美がないのに、みんなズルくないですか」

「ネッド、終わったら海に行きましょう! 美味しい海鮮をお腹いっぱい食べるのよ!」

「・・・それ、お嬢さんが欲しいご褒美ですよね?」

 あら、バレてしまったわ。

「じゃあ、終わったら頭を撫でてあげるわ」

「ベッドの中で?」

 それ、誰かに見られたら本当に命がないやつね。主にあなたが。

「ネッド、ともかく、今後の安定のためにこの王都をなんとかしなくちゃいけないわ。そのためにはあの次期王を破産させて別の王を仕立てるしかないでしょ」

「それはお嬢さんの役目ですか?」

 うーん、どうだろう?

「いつもなら嫌がりそうなことなのに、どうして今回はそんなにやる気なんです?」

「あらだって、王族には今まで散々迷惑をかけられてきたのよ? どうせなら全力で相手を破産させて高笑いしたいじゃない!」

 ベルノーラ商会は必ず商品代を回収する。どんな相手だろうが、どんなケチをつけられようが、決して相手に屈することはない。

 そう。相手が次の国王だろうが。

 本来ならば品物を前に仮契約を行い、正式な採寸の時に本契約となることが多いベルノーラが、この件では今日の時点で本契約を交わしたのだ。あとは商品を下ろし、代わりに代金をいただくだけ。

 一つ一つの商品代はそう大きいものではないが、なにせ数が数だ。

 一日で決済するには冷や汗をかきそうな金額にも関わらず、あの王太子は内容をとくに確認することなく王たちの前で署名した。

 その時の王や王妃の目ときたら。思い出しても笑える。

「ドレス、宝石、小物、まさか髪飾り一つがこんな値段なんて思わなかったでしょうね。最初に一番安い小物の書類を見せておいて正解だわ」

 王妃の分も合わせると、ベルノーラ商会の二年分の稼ぎを叩き出したのだ。

「大旦那さま、わたしにご褒美くれるかしら?」

「お嬢さんの望むご褒美ってなんですか?」

「異国にいるというグリフォン! これで旅をするとき空から移動できるわ!」

「条約違反になるから無理ですよ。グリフォンの生息する国は、彼らの輸出を許可しないばかりか、育成も許していませんから」

 ちっ。

 盛大に舌打ちしたら呆れたようなため息が帰ってきた。

 なによ、ファンタジーのお約束だと思ったのに!


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