王都到着!
「まずは現状を確認します」
開口一番そういうと、店内にいた冒険者が微妙な顔をした。
本日ベルノーラ商会は臨時休業だが、高ランク冒険者が二名ついていてくれた。
人がいないと堂々と強盗の被害に遭うらしい。まったく、迷惑な話だ。
冒険者の日当はかなり高額で、決して笑えない額に膨れ上がっているというに。
ちなみに三日に一度支払っているので、冒険者にとってはまあまあ悪くない収入らしい。
王都到着後、早々にベルノーラ商会に裏口から潜入したわたしたちを見て、雇われ冒険者が襲ってきたのが数分前。どうも強盗と間違われたらしい。きちんと仕事をしているのは良い事だね。
「お前が本当にここの人間だって証明できるのか」
「ここの店長はわたしの知り合いです。先ほど挨拶をしました」
「どうみてもスラムのガキがようやく冒険者になれたような見た目と、くせぇ臭いでか」
はんっ、と鼻で嗤うのはBランク冒険者のヨウォルだ。年は三十過ぎで、鋭い茶褐色の瞳をこちらに向けている。筋肉ダルマで上腕二頭筋が凄すぎる。あと恰好が何故かへそだし。もしかして筋肉が邪魔で着られる服がないのかしら。可哀想に。
「おい、なんだその人を憐れむ目は。てめぇの方がひでぇって気付けよ」
「この格好の方が安全に旅ができたので。でもそうですね。少し汗を流したいので湯を用意してください」
店長はにこにこと相変わらず人の良さそうな顔で頷き、すぐに人数分の湯と柔らかいタオルを用意してくれた。
店舗は休業中だからカーテンを下ろしており、外からはのぞけないようになっている。素早く服を脱いでタオルで拭いていくと、唖然とした冒険者たち。
「まて、お前、女か?」
こんな美少女相手に何を言うのか。黒服たちはもともと、わたしの体は見慣れているから人前で脱ぐことにためらいはなかったが、そういえば部外者がいたなと思い出した。
「人の着替えを覗くなんて最低ですね、大の大人が恥ずかしくないんですか?」
「てめぇには言われたくねえよ!? 勝手に脱いだのはそっちだろうが!」
「時間が惜しいんですよ。こっちは勝手に聞きますから、これまでの経緯を説明してください。ああ、他の店舗の状況も一覧にまとめて提出してください。それから、わたしの護衛に食事を。簡単なもので結構よ」
かしこまりました。と丁寧に頭を下げて数人の店員が下がっていく。店長はわたしの傍に立つと、落ち着いた声で被害状況の説明を始めた。
淡々とした説明は無駄がなく、呆然と突っ立っている冒険者の存在を忘れるほど真剣に聞いた。もちろん着替えもした。
髪の臭いだけはどうしても取れないからと、香水をつける。多少は気持ちが落ち着いた。
「今夜の宿は必要ありません。しばらくここの地下に逗留します」
「かしこまりました。すでに手配は済んでおります。どなたかにお手紙を出されますか?」
「ええ、三通出してくださる?」
「お任せください」
さすが店長。最高だ。
「ネッドたちは今夜から情報収集を徹底して。予算は多めにとってあるわ。時間が惜しいから効率的にお願い出来るかしら」
「任せてください、お嬢さん。交代で行ってきます」
ネッドがドヤ顔で頷くが、ドヤ顔の意味がわからない。なぜそんなに楽しそうなの。
大旦那さま、アレクセイ、そして久々にオウジサマに手紙を書いた。オウジサマには特別便で運ばれることになっている。
「それにしても、予想通りの酷い被害額。これはちょっときついですね」
「私どもは、覚悟はできておりますれば」
「下を切っていく方向は最終手段です。覚悟はあとで決めてください」
リストラなんてしたら、余計に治安が悪くなるだろう。覚悟を決めたらしい店長の顔を見て言い切る。
「金なら俺たちが森でいくらでも稼いであげるよ」
黒服3がさらりと言う。森の魔物は危険だが金になるのだ。
「それもあとで。魔物なんかより、人間の方が厄介ですからね」
「お嬢さんが言うと一味違うよね」
どういう意味だ。




