表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
これは優しいお話です  作者: aー
   二度目の王都
156/320

捕まった!

「ちょっと。憲兵っていうのは悪い人を捕まえるんじゃないの」

「だから家出少女を捕獲してやったんじゃねえかよ。お前が来たら捕まえてくれって前金で頼まれてんだよこっちは」

 いやいや意味が分からない。というか憲兵が金をもらうな。

「というか、君女の子だったのか・・・」

「ほお、見事な黒い髪だな。しかしソウ、いくらなんでもこれはちょっとやりすぎじゃないか?」

「何を言ってるんです。こいつの行動力舐めないでください。ふいをつかなきゃ逃げられますよ」

 人を何だと思ってるんだ・・・

 かつらを剝ぎ取られたわたしは黒い髪をさらされた挙句、お腹に縄をかけられている。手足は自由だけど、縄の先は総一郎が持っていて逃げられそうにない。

 こんなことになるなら、ネッドに縄抜けの方法を学んでおくべきだったわ。

 わたしと総一郎のまわりには心配そうな顔の憲兵たち。全員がわたしを取り逃がさないように見張っているのだ。

 一部、本当に何も知らなかったんだろうなって思うような人がいるけれど、今は静かに見守っているようだ。

「・・・ネッドは」

「さあ、あっちはあっちで大変じゃね? 殺す気で落とすって言ってたぞ」

 そんなことしたらお宿が壊れちゃうわ!

「あんな馬鹿みたいに高いお宿の弁償代を払えるのかしら」

「お前はもうちょい心配してやれよ」

 アーシェの実力は知らないけれど、ネッドならある程度予測がつく。何せアレクセイを鍛え上げた精鋭だ。簡単にやられることはないだろう。

「アーシェってやつは、あの若さでギルマスに選ばれる程度には強いらしいぞ」

 そう聞くとちょっと不安が・・・でも。

「そんなことより、ここまでしなくてもいいじゃない」

「いや、こんな盛大な逃亡かましてるヤツが何言ってんだよ。厳重になるに決まってんだろ」

「・・・わたし、ただ働きってきらい」

「あとで菓子でも買ってもらえよ」

「星祭り限定のお菓子を食べたかったのに!」

「星祭りまでひと月あんだぞ。お前、それまでここにいられると思ってたのかよ?」

 思ってたよ!

「だってまだ美味しいもの食べてないもん!」

「いやだから、あとで買ってもらえよ。だいたいお前俺より高給取りだろうが」

「そういう問題じゃないよ。美味しいは正義なんだよ!」

「俺はお前が港町で旨いもんを堪能したのを知ってるぞ。どうせ北の街でも旨いもん食ってきたんだろうが」

「カエルばっかりだったよ! 飲み物はおいしかったけど」

 カエルの姿焼きはもう見たくありません・・・切実に・・・

「まじかよ。お前ゲテモノまで! ・・・どんだけ食い意地はってんだよ」

 まって。まるでわたしが自分で選り好みしたみたいに思わないで!

「貴重な栄養源だったんだよ!」

「なんでそんなとこ行くんだよ。もっと別の場所があるだろうが」

「くじ引きでそうなった」

 なぜか頭を叩かれた。痛い。

「盛大な家出先をくじで決めるヤツがあるか!」

「常にドキドキわくわく感が欲しいんだよ!」

「引くわ!」

 酷い!

 ギャアギャア言い合っていたら、ふいにわざとらしい咳が聞こえた。

「・・・久しぶりだな、リーナ」

 それは実に数か月ぶりのアーシェだった。隣には真新しい痣を口元に作ったネッドが静かに立っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ