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これは優しいお話です  作者: aー
   ナーオス
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お別れの時間

「ぐすっ」

 急遽街を出ることになったことを一家に伝えに行くと、妹分として可愛がっていたホノが泣き止まなくて大変だった。

「また、来てくれる?」

「冬は寒いことを自覚したから、今度は暖かい時期にくるわ」

「ホノのこと、忘れないで」

「もちろんよ、あなたはわたしの可愛い妹のような存在だもの」

「ホノも、お姉ちゃんって思ってるよ」

「ええ、ありがとう」

 こんな会話をもう一時間は続けている。夫婦の反応はそれぞれだ。ユネは呆れたようにこっちを見ており、グガはなぜか笑顔だ。

「やはりもう一人作るか」

「あんた、何言ってんだい・・・」

 ネッドは壁の花として存在を消し、笑みを浮かべたまま渡すはずの手土産を持ったまま。

 そうだよ、手土産すら渡してない!

 夫婦にはお酒を。ホノには可愛い人形を。

「ホノ。この子、可愛がってくれる?」

「うん。ホノはお姉さん・・・ううん、お姉ちゃんのことを想って毎日この子をぎゅってするね」

 可愛いが爆発するんじゃないのってくらい、可愛い発言だな。

 プレゼントした雪狐のぬいぐるみをぎゅっと必死に抱きしめるホノに鼻血が出るかと思った。

「また、ぜったい会いに来てね?」

「ええ、絶対よ。約束するわ。お手紙も書くわ」

「うん!」

 最後には何とか笑顔になってくれて、わたしたちはお別れをした。

 可愛い女の子の涙を浮かべた笑顔はしばらく頭から離れていかないだろう。


「ホノ可愛かったー。わたしも妹ほしいー」

「・・・子どもなら作れますけど、どうします?」

「淫行条例に引っ掛かりそうな変態発言しないでー」

 せっかく可愛いの余韻にひたっているのに。

「妹、会いに行きますか」

「・・・知らない」

 だって、まだあの二人からは何も聞いていないのだ。なら知っていることは秘密だ。

「いいんですか」

「現状では何も言えないわ」

「では、あの方に会ったときにでも教えていただけるかもしれませんね」

 まだアーシェに会うなんて言ってないのに。

「会われるのでしょう?」

「・・・何かを決める材料が欲しいのよ」

 覚悟とやらはまだないけれど。

「王都で星祭りを過ごすかもしれませんね。王都の星祭りはすごいですよ。三日にわたってお祭り騒ぎなので、迷子にならないようにしましょう」

 迷子か・・・王都で出会った少年少女たちは今頃どうしているだろうか。と考えて、気付いた。

「ネッド、それよ!」

「は?」

「バイトしましょう。たまには体を使って稼がなくちゃ! きっと雑用を欲しているはずよ!」

 どうせ王都では変装するのだ。それならばついでにお金を稼ごう。

「まあ、いいですけど。またあそこに世話になるので?」

「そうよ」

 むふふっと笑えば、冒険者サルサラさんが変な顔する。

「あんた、昨日は猫をかぶってたのね」

「うちの猫は特大サイズですよ」

「褒めてないわよ」

 早朝に宿を出発して早数時間。寒さと雪の対策のためにコートとマントを身に着けているせいで全身汗だくだ。でも体力があるうちに行けるとこまでいかないと危ないし、一度でも足を止めれば凍死しかねないから食事も歩きながらだ。

 宿を引き払うとき、いつも無言だった宿のご主人が、はじめてわたしの頭を撫でた。

 気を付けて行けと小さな声で伝えてきたので、本当に嫌われていたわけではなかったのかと感動した。

 あとで聞いた話だけれど、実はこの街でもわたしの姿絵が人気で、ジェスと一緒に暮らしている少年たちも持っているんだって。

 どこが清貧を貴んでいるのか真剣に問いただしたい。

 ジェスは結局ついてこなかった。もう少しこの街にいると決めたそうだ。それでも何も変わらなかったときは、自力で逃げだすと笑った。

 わずかな笑みだったが、彼の中で大きく何かが変わったのだろう。

 ヒルマイナ様も見守ると約束してくれた。まあ、あんまり期待してないけど。

 しかしまさか宿屋の女将さんまで姿絵を持っていたとは・・・今まであまり話してこなかったけれど、今度も絶対にあの宿に泊まろう。そしていっぱいサービスされたい。

「サルサラさん、美容は何を使っているんです? お肌のハリいいですよね」

「あんたにはまだ早い。・・・西部にあるとろみのある植物からとれるんですって。冒険者ギルドだけで販売されてるのよ。値段も安いし、あたしも時間あったら狩にいってる。材料持ち込むと割引きくから」

 サルサラさんはぶっきらぼうだけど面倒見が良いみたいだ。だいたいのことは教えてくれる。

「絶対冒険者ギルドいきます。あ、そうか、冒険者登録すればいいんだ。ネッド、外国に行くなら登録したほうが楽かな?」

「・・・国外逃亡を図るつもりなら、俺は絶対ご案内しませんよ」

 そこまでは考えていないけれど、今後どう転んでもいいように逃げ道はたくさん残さないと。

「お嬢さんは商業ギルドに登録しているでしょう。そちらの身分で十分ですよ」

「商業ギルドだと、外国に行く際は商品も提示しないといけないんだって」

「お嬢さん、冒険者も武器を持って行かないと不審がられますよ。あと、その植物は人を噛みます」

 か弱いわたしの体力じゃあ、重たい武器は無理かしら。

 うーんと真剣に悩んでいると、なぜか二人から残念な子を見るような視線をいただいてしまった。

 しかし、噛むってなんだ。口でもあるの?

 二人に確認したら、葉の裏に小さくてギザギザした歯があり、普段土の中に隠されている足もあるそうだ。人間を見たら逃げるか噛むかのどちらかだという。まじか。

ちょっとだけ逃げる姿を見たいと言ったら全力で拒否られた。


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