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これは優しいお話です  作者: aー
   スタンピード
120/320

依頼達成? sideスヴェン


 それは夜中でもよく見えた。

 少し離れた先に火柱が上がり、一瞬だけ熱風に襲われた。

 日は徐々に小さくなったが、それでもまだ燃えているらしい。

「先に行く」

「頼む!」

 パーティーメンバーを残して走った。こういう時は一人のほうが無駄がない。

 長い枝や葉が俺の頬を切る。だがまだまだ。この先には恐らく人間がいる。姿勢を低くしてとにかく足を進めた。

 しばらくして、視線の先には見慣れない若い男たちの姿。

「無事か!」

「冒険者か!」

 年上のほうがホッとしたような顔で叫んだ。あれ、リーナに似ている。もしかして

兄妹か?

「助かった。もう武器も体力も食料もなかったんだ!」

 彼らの前には人型の魔物。俺だって祖国で二度ほどしか出会わなかった強力なヤツ。

「あんた、リーナの知り合いか?」

「ああ、そうだが・・・え。なんでここであいつの名前?」

「そうか! リーナに指名されたんだ。家族を助けてくれって! よし、これで依頼完了だな!」

 じゃあさっさと倒そう!

 幸い火の効果か、魔物は足止めされているようだ。いったいどういう方法なのかはわからないが便乗させてもらおう。

 片手剣を構えて、もう一度体制を整える。一発でヤらないとこちらが危ない。

 一瞬だけ呼吸を止める。静かにそれを吐き出して不安定な足場をこれでもかと蹴った。



「え。ちがう? え?」

「いや、なんで兄妹だと思ったんだよ。ちげーよ。むしろあんな妹いたらイヤだわ」

 そんな!

 せっかく助けた男は関係のない人だった。なんてことだ。

「リーナとどこで知り合ったのですか?」

 まだ少年の域を超えない彼に問われて素直に話せば、何故か頭を抱えてしまった。

「どうしてあの街にいないんだ!」

「ほら言っただろう。あいつのことだ。全力で逃げるに決まってる」

「私はリーナの婚約者なのに!」

「いや、それお前が言ってるだけなんじゃねえの。もういい加減認めろよ」

 どういう関係だろうか。婚約者。なるほど? え、違うって?

「それはいいが、先ほどの火の手は? あれはどうやったんだ?」

「ああ、火炎瓶を作ったんだ。この森の中じゃできることが少ないからな。少しでも攻撃手段を確保していたくて」

「ちょっと待て、いつの間に」

 火炎瓶。俺にも作れるだろうか。

「レシピを売ってくれ」

「危ないからなあ・・・まあ、助けてもらったからいいよ」

 おお! いい人だ。

「で、リーナは無事だったのか?」

「ああ。大丈夫だ」

 二人は安心したように息を吐き出した。本当に知り合いらしい。

「俺は明日あの街に入るつもりだが、どうする?」

「俺たちも連れてってくれ。一度補給が必要だ。後はまあ、戦うしかない」

「私も補給したい。できれば街に入らずここで食い止めたいが」

「わかった。食料は俺のを分けるから、とりあえずこの兄さんを街に連れて行くよ」

 そう言って俺は年の近そうな方の腕をつかんで歩き出した。ついでに携帯食を投げ渡す。

「朝には戻るから、適当に近くにいてくれ」

 え? と首を傾げた男たちを無視して、俺はまた走り出した。

「ちょっ、まっ! 俺もう足がっ」

「さあ、急ぐぞ!」

 俺の依頼達成のために!


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