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これは優しいお話です  作者: aー
   スタンピード
119/320

限界は越えた sideアレクセイ

 とっくの昔に限界は越えている。もう何日もろくに眠っていない。交代で数分休む程度で動き続ける。動くと言っても派手な動きは命に係わる。常に緊張し続けている。

 それでもこの先にはリーナがいる。絶対に負けるわけにはいかない。

 少しでも森の中で魔物を減らさなければ、街の被害が拡大してしまう。

 頭が良くて行動力があって、可愛くて綺麗な私の大好きな人。

 彼女から貰ったリボンを握りしめる。もう癖になっているせいかリボンに皺がついてしまった。帰ったらアイロンをかけよう。

 彼女はこのリボンの意味を本当に理解していたのだろうか。今では、どちらとも言えないような気がしている。

「夜が明けたら街に向かって走れ。敵はもちろん殺せ」

 簡単な指示だ。でも難しい内容だ。

 街まではあと少し。普段ならこの場所から街の明かりがほんのちょっと見えるはずの宵闇。虫も、動物も、魔物でさえも息を殺したような静寂。

 本当ならばあと数時間もかからず森を抜けられる。

 だが、昼間に見た大型の魔物を四人がかりでなんとか倒しここまで来た。これから先はこんな敵ばかりが残っているはずだ。後ろからもそういう敵が迫っている。

 だが夜に出現する魔物はもっと手ごわい。代わりに数が少ないのが救いだが。

 誰かが緊張したように喉を嚥下させた。もしかしたら私だったかもしれない。

「落ち着けアレクセイ。君の婚約者は無事だ。我々がここで多くを足止めしているのだから」

「わかっています」

 年かさの騎士に言われても、焦るものは焦る。

 会いたい。でも会うのが怖い。

 どうして何も言ってくれなかった?

 私の気持ちは迷惑だったのか?

 それなら、このリボンは?

 それでも今の私にできることは、戦うことだけだ。

 その時、

「魔物・・・いや、人か?」

 新しい気配が近づいてきた。暗闇の中目を凝らす。人のような形をしている。その数三・・・だが。

「違う、これは」

 ああ、なんてことだ!

「散会しろ! 振り返らず走り切れ!」

 誰の声だっただろう。その声に押されるまま私たちはそれぞれ走り出した。すぐに互いの姿が見えなくなる。

「くっそ! なんだあれ! 気持ち悪いっ」

「人型の魔物だ! 獣姿と違って知恵が回るから危険だ。体制を整えなければ絶対に勝てない。今は私たちに注意をそらして街に行かせないようにしなければ!」

 しかも夜に出る魔物。狂暴で凶悪なのは昼間の倍だ。

 ガサ、ガサと草木をかき分けて私たちの後をついてくる。よりにもよって一番弱いこの兵士と一緒なんて最悪だ。

 こいつを守りながら戦えるだけの技量が私にはないからだ!

「私がひきつける。お前は逃げろ!」

「ふっざけんな! さっさと逃げるぞクソガキ!」

 だれがクソガキだって!?

「お前が死んだら里奈が悲しむだろうが!」

「それよりも今はあれの相手だろうが!」

 むしろ悲しんでくれるなら嬉しい。

 そんなことを考えたせいだろうか、黒一色の化け物はもう目の前に迫っていた。

 草木の音はするが、この化け物の足音や呼吸音は聞こえない。そもそも呼吸だってしているか怪しいのだ。

「くそっ、はやく逃げろ!」

「こいつ火はいけるのか!?」

 はあ!? さっさと逃げてくれ、頼むから!

「とりあえず試そう!」

 え、と声が落ちた瞬間。

 あたりは火の海に包まれた。



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