託されたもの sideフェルディ
目の前にいる、愛らしい姿の少女は、しかし見た目よりは年を重ねているらしい。
ネッドと呼ばれる男に口をふさがれても騒がず、目線で謝ってきた。聞きすぎたことを咎められたと思ったのだろう。
別に気にしていないよと首を横に振る。
ネッドはそっと彼女から一歩離れた。しかし番犬よろしく僕を見る視線には呆れと苛立ちが見える。
困った形の関係性を築いているようだと苦笑して、彼に笑みを向けた。
「君も大変だね」
「ソウデスネ」
一晩彼と話していて思ったのは、この青年はおそらく、この幼くも見える少女に恋情を抱いている。だが立場がそれを許さない。
しかもただの色恋ではない。この男は気持ちに蓋をしたまま過ごすつもりだ。
この男が言った通り、リーナは迷い人だろう。
この世界にはなかった技術は、愛しい人が提供してくれたものだ。それを知り合いに作らせて今に至る。
世界中を探してもまだ二台しか存在しないのだ。現像するのは国に帰ってからになるだろう。
それにしてもこの知識は困ったものだ。この国でかなり大きな力を持つ商会が取り込むのもわかる。そうでなければ危険だろうなと他人事のように思った。
「ごめんなさい、フェルディさん。わたし、聞きすぎてしまったわ」
「いいえ、かわいいお嬢さん。僕のことを気にかけてくれてありがとうございます。でも、僕は今の関係に満足しています。僕の幸せは彼女が心から笑っていることだから」
航海に出るたび、次の場所ではどんなものが手に入るだろうか。彼女が気に入りそうなものはあるだろうかと考える。それはとても幸せな時間だ。
「そうなの、そういう形もあるのね」
普通の、このくらいの夢見がちな少女ならば、そんなふうに納得できるわけがない。
はたして気付いているのだろうかと苦笑した。
ネッドも僕を見て頷いたのできっと同じ気持ちだろう。
「ええ、そうですよ。いつか彼女のもとへあなたをお連れしましょう。きっと仲良くなれますよ」
「楽しみだわ!」
「ええ。きっと」
彼女にも友と呼べる相手が増えるのは良いことだろう。
まあ、彼女の夫は、目の前の彼よりも警戒心の強い化け物のような男なので、僕ですらなかなか近寄れないことは伝えないけれど。
毎回隙をつくのも、結構楽しかったりする。
思い出し笑いを浮かべるとリーナは不思議そうに首を傾げ、それから優しく微笑んだ。
そういう仕草も似ていて、ああ、今すぐ彼女に会いたいなと思ったのだ。
それから僕らは長い別れに入った。
これから行く先でも売買がある。簡単には彼女のもとへはいけないだろう。
それでも。
あの少女から預かった大切な手紙を必ず渡そうと思った。
きっと、彼女もそれをとても喜んでくれるだろうから。
晴れ渡る空の下、僕は二人の女性を思い出して笑みを浮かべた。




