お手紙を書きました
「ネッド、これでいいの?」
「はい。じゃあ封をしますね」
ネッドは昨夜、帰ってこなかった。
理由を聞いたら、元海賊と話し込んでしまい朝まで一緒に呑んだのだそうだ。
なんて羨ましい!
そして彼の話を聞いていると、どうやら私のように別の世界を知っている人の知り合いがいるんだって。よかったら手紙を書いてみないかと言われて、でも何を書けばいいのかわからないから素直にそう言った。
本当に相手に届くかわからないし、届いても別人に読まれる可能性がある。だから、もとの世界の文字で自己紹介だけでもどうかと言ってくれた。
そして私は簡単な季節の挨拶から自己紹介、今はどんな場所にいるか、家族の話などを書いた。もちろん、ネッドにも読めない文字で。
それをなんとあの元海賊のダンディな紳士が届けてくれるなんて!
「ねえ、私もフェルディさんと会える?」
「もちろんです。一緒に手紙を託しに行きましょう」
「やった! あの人なんの香水使ってるんだろう。すっごく良い香りよね! しかも格好いいし」
ネッドが何故か絶対零度の眼差しで私を見つめ、にやりと笑たった。
「・・・親子には見えるので多少近づいてもいいですよ」
「いちいち気になる言い方ね? なによ、ロリータだっていいたいの?」
「ろりーたって、なんですか?」
「幼い女の子のことよ。そういう子が好きな人のことをロリコンっていうのよ」
「へえ、じゃあ俺はロリコンですね。お嬢さんが好きなんで」
「それは知っていたわ」
無言で頭を鷲掴みにされた。めっちゃ痛い!
「遠慮がなくなったようで嬉しいわ」
「あんたに遠慮していたら色々疲れることが分かりました。万が一にもトイレで死なないようにしっかり見張ることにします」
「意地悪だわ!」
そんなふうに二人で騒いで、宿を出た瞬間。
「フェルディさん! おはよう!」
「おはようございます、リーナさん」
今日も今日とていい男。海の男とは思えないほど肌が白いし、品のある笑みがたまらない。王都にもこんな素敵なイケメンはいなかった。
「フェルディさん、ネッドに聞いたのだけど、あの・・・お手紙を書いたの。フェルディさんのお友達に渡してくれる?」
「もちろんですよ、小さなレディ。よろしければ、写真を撮りませんか? その写真とともに彼女に渡しましょう」
写真? 姿絵ではなくて?
「最近外国で開発されたのです。いかがですか?」
「うん!」
なるほど、海外の製品なのね。きっととても高額なんだろうけど、この人なら持っていても違和感がないから不思議。
「写真ってなんですか?」
「目の前の風景をそのまま絵にできるものよ」
「へえ。俺も興味あります」
「では二枚取りましょうね」
そんなさらっと!
「お金はお支払するので、その製品について詳しく教えてください。おそらく商会でも使用したいと思う方がいるはずなんです!」
「・・・これの作り方はまだわからないので、次回来る時までにもう少し調べておきますね」
にこりと笑った紳士にうっとりする。
「裏表のない顔って素敵」
「声に出てますよ、お嬢さん」
その後わたしたちはマーレ号のすぐそばまで行って、縦に長い、まるで昔の写真機みたいに大きなカメラで写真を撮ってもらった。
思いのほか一瞬で終わった。
「もう帰ってしまうの?」
「次の国に行かなければなりませんので」
別れはあっという間にやってくる。残念だわと思いながら、ちらと彼の瞳を覗き込むと、深い海の底のような瞳とかちあった。
ふっと目を細めて、知的に微笑む姿に見とれる。
「奥さんはいらっしゃるの?」
「いいえ、僕は愛しい人ただ一人のために生きておりますので」
「その人は手紙の人?」
「ええ、そうですよ。今は夫となった男とともに幸せに暮らしています」
長年の片想い。だから海に出るのだろうか?
「その人と結婚したくないの?」
その質問はネッドの手によってふさがれた。




