反省会という名の尋問 sideネッド
「ではお嬢さん。本日の反省会を始めます」
宿の部屋は相変わらずこの女と同室だった。
何故かノアがその方がいいと言って聞かないからだ。
本来だったら日帰りもできたのだが、少々聞きたいことがあったため俺たちだけ宿をとった。
「まず、いくら取引相手とは言え、あのような距離で話をすると誤解を招きます。今後はみだりに近づかないように」
「わたしから近づいたのではないわ。あくまでも彼が来たのよ? それに、彼、とても面白い人だったわ! 今夜はこの街に泊まるのですって。ネッドもお友達になったら?」
なんで俺が元海賊なんぞと友好を深めなきゃならんのだ。
こいつは気付いていなかったが、あの場所には多くの軍人が潜んでいた。
フェルディ・イグナーツと名乗った男はよほどの手練れなのだろう。リーナに近づきつつ俺を牽制した。
胸元に入っていたのは恐らく、この国ではほとんど見かけることがない銃と呼ばれるもの。さしもの俺もアレの速さには勝てない。
まあ、負けるつもりもないが。
「お嬢さんはああいった男がお好みですか」
「見ているだけで楽しい人って素敵じゃない。目が癒されるわ」
「・・・少々年齢が離れすぎです」
「いやねえ、ネッド。何を言っているの? ああいうのは鑑賞用よ。別に仲良くなる必要はないの」
何気に酷くないか?
「とにかく、いいですね。初対面の相手には特に、気を付けてください。あなたがそんなんじゃ、俺は護衛だってしきれませんよ」
「ネッドのことだもの。そう言いつつ守ってくれるでしょ?」
用意しておいた茶と甘い菓子を旨そうに頬張り、んー。と幸せそうな顔で足をばたつかせた。半時前に夕食を食べたばかりだというのに、よくクリームたっぷりのタルトなんぞ食べられるものだ。
「・・・まあ守りますけど」
「ええ、ネッドのことは信じてるわ」
さらっと言われて、俺が固まったことにも気づかないでこいつはまた一口頬張る。
信じていると言いながら、俺には大事なことを話していないじゃないか。
「・・・では、もう一つの件ですが」
「なあに?」
二つ目の菓子は赤い木の実ごと焼いたクッキー。少しだけ塩辛いのが逆にいいらしい。保存食にもなるので俺もたまに買うが、こいつはこんなものでも喜ぶのか。今度買ってこよう。
いや、今はそんな場合ではない。
「ノアが言っていました。あなたの故郷の話です。ここと同じように海に囲まれてキカイというものがたくさんある国だと」
リーナが不自然に一瞬、動きを止めた。




