ノア・アルロという男 sideネッド
普段ならばしゃくに障るだろうその態度も、何故か許せる自分が居た。
他の誰がそうしても、そう、あのソウ先輩とやらの時だって気に入らなかったのに、なぜかノア・アルロがすると許せた。
「リーナ、行儀見習いしていたわりには行儀が悪いよ。食事中はモノを読みながら食べちゃダメだ」
「えー。時間がもったいないわ」
「それは君の手際が悪いからだ。限界ってものがあるのは知っているだろう? 多少の無理をすればできるっていうのは、もともと出来ないことと一緒なんだよ」
「むー。わかったー」
まるで普通の子どものように、見たこともない不貞腐れた顔で頷く女に驚く。お前、そんな顔もできるんだな。
「もう、ネッドも甘やかせすぎ。ちゃんと、ダメなことはダメって言ってあげないと」
「お嬢さんにそんなこと言えませんよ」
「何言ってるわけ? 大事ならちゃんと言うべきでしょ」
正論過ぎて心臓に刺さるものがあるが、俺は別に教育係ではない。そう、俺は護衛なんだ。
「あ、また! リーナ、見えてるよ。ページをフォークでめくるの止めな!」
おそらくこいつは、兄のようなつもりで接しているのだろう。彼女もどこか楽しんでいる気配があるので悪くはないのだろうが・・・
「もう、ママンは口うるさいわね」
「せめてパパって言ってよ!?」
「ははは、お二人とも仲がいいですね」
乾いた笑いを洩らせば、にやりと笑った女が俺を見てウインクをきめた。
「羨ましいでしょ!」
こいつ、なんか性格変わったな・・・
「ええ、俺もまぜてくださいよ」
「んふー!」
まあ、可愛いからいいか。たまにはこんな風に甘やかせてやろう。俺には守ることしかできないのだから。
「ネッド。ちょっと教育のことで話し合おう」
「それは嫌です」
ちっ。と舌打ちしたノアは、また食事の介助にもどった。
「ネッド、今夜は君が食べたいものにするから遠慮なく言ってくれ」
「じゃあ、お嬢さんのたべ」
「あ、それはなし。教育的指導だから、しばらくリーナの好物は用意しません」
「なにゆえ!?」
ノア・アルロ。この男の前でならリーナはおそらく普通の女の子に戻れる。
願わくば、彼女の未来にたくさんの幸せをくれる男であってほしい。ノアがいれば、少しはそれが叶う気がする。
数年後更に美しくなったリーナが、嬉しそうに俺に笑いかける姿を想像した。
「じゃあ今夜の夕食は」
まだノアが知らない彼女の好物を告げれば、嬉しそうに満面の笑みを浮かべたリーナが居た。




