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【揺花草子。】(日刊版:2019年)  作者: 篠木雪平
2019年03月
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【揺花草子。】<その2600:Thinking of You。>

 【揺花草子。】<その2600:Thinking of You。>


 Bさん「阿部さん。今日は3月11日。」

 Aさん「・・・うん。」

 Cさん「あれから8年よ。」

 Aさん「そんなになりますか・・・。」

 Bさん「毎年言ってるけれども、

     ぼくらはあの日の出来事は今でも昨日の事のように思い出せる。

     そしてそれは恐らくこの先何年経っても変わらない気がする。」

 Aさん「確かに、そうかも知れない。」

 Cさん「我々みたいにあの出来事を直接体験した人たちは

     多かれ少なかれみんなそうだと思うけれども、

     そうでない人々、あの出来事がテレビやネットの

     向こう側の出来事としてしか触れていない人にとっては

     既に過ぎ去った過去の記憶となっている事でしょうね。」

 Aさん「まあ・・・確かに。」

 Bさん「けどまあ、それはそれで仕方ないと思うんだ。

     ぼくらの街はあの出来事で酷く傷つき酷く悲しみをもたらされたけれども、

     それからこっちの8年間の間でも毎年どこかで痛ましい災害が発生している。

     そして悲しいかな実際問題それらの出来事はぼくらにとっては

     自分事ととらえるのは少し難しかったりもするよ。

     そう考えれば、あの未曽有の大災害も遠く離れた地に住まう人にとっては

     記憶の向こうに揺らめく陽炎になるのも致し方なしだよ。」

 Aさん「まあ・・・。」

 Cさん「けれども、別に不安を煽ったりするわけではないけれども、

     関東東海から四国中国地方にかけてそう遠からず

     大規模な地震が発生する確率は非常に高くなっているわ。

     私たちの街は、こう言っちゃなんだけれどもたかだか地方の中枢都市だけれども、

     件の地震が起こったら首都機能が壊滅する可能性が取りざたされているわね。」

 Aさん「そうですね・・・。」

 Bさん「こう言う言い方は少しあれかもだけれども、

     ぼくらの街は、ぼくらの国は、8年前に、あんなに酷い出来事を経験して、

     でもどうにかこうにか立ち直った。

     その前も、そのあとにも、酷い事はいっぱいあった。

     そう言う意味では、ぼくらは、

     いつか来るかも知れない大きな悲しみに対して、ある意味経験を積んでいる。

     ぼくらの悲しみの経験を活かして、次はもっと──うまくやって欲しい。」

 Aさん「うまく・・・。

     そうだね。

     これ以上悲しみが降り積もらないように・・・とは、

     ちょっと望みすぎかも知れないけれども、

     悲しみを減らすための準備は、きっとできるはずだよね。」

 Bさん「うん。

     そう言う事を、今日は、みんなに、想いを巡らせて貰えたら良いなと思う。」

 Aさん「そうだね。」


 悲しみを減らすために、悲しみを想う。

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